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◇2

「はぁーい、はじめまして。あなたがテナちゃんね。あたしはヴィルヘルミーナ。気軽にヴィーナさんって呼んでね」

 事情聴取の直後、バァーン、と医務室の扉を開けて入ってきたのは、とんでもなく綺麗なお姉さんでした。

「こらヴィーナ、入るならノックぐらいせんか!!」

 セスナさんがクワッとした顔で然るも、その、ヴィーナさんという女性はどこ吹く風といった様子だ。

「いいじゃないのセスナ先生。今日からあたしの同室になる子だもの。気軽に挨拶ぐらいさせてよ」

「問題なのは挨拶をする前のところなんじゃが……」

 まぁいいか、とセスナさんは諦めたように項垂れた。

 ヴィーナさんというとんでもない美人さんは、窓際に座っている私のところに来ると、まじまじと全身を見つめて来た。それにしても、おっぱいの谷間ががっつり見えているし、ローブの上からでも分かるナイスバディだ。羨ましい。

「改めて、よろしくね。あたしはヴィルヘルミーナ。騎士団所属で、まぁ召喚士っていう仕事をしている者よ」

「テレンツィエナといいます。私も、テナと呼んで頂けたら嬉しいです。しばらくお世話になります」

 ぺこりと頭を下げる。ヴィーナさんはよしよし、と笑いながら私の手を取った。

「さて、と。色々話したいことも聞きたいこともお互いあるでしょうけど、まずは出かけるわよ」

「えっ?」

「だってあなた、服も下着も化粧品もないでしょ。さすがに着の身着のままってわけにもいかないじゃない」

「そ、そうですけど……」

 私が戸惑っていると、ヴィーナさんがにやりと笑った。

「大丈夫、外出許可ならあたしが取ったし、軍資金もあるのよ~。キッドったら、日用品買うのに使ってくれって、太っ腹なんだから」

「えっ、えっ……?」

 キッドさんが、なんで私のためにお金を?

 申し訳ないと思った気持ちが顔に出たのだろうか、すかさずヴィーナさんが私の眉間に触れてきた。

「今申し訳ないとか思ったわね? いいのよあんたが気にすることなんてないんだから。これはキッドが勝手にしたこと。男からの善意は下心もあるけど、まぁ、あいつの場合は大丈夫だから安心しなさい。さぁさぁ、さっさと行くわよ。買い物して、部屋の準備まで今日のうちにやらないといけないんだから」

 もう何がなんだか分からないままヴィーナさんに腕を引かれて歩き出す。セスナさんも止める気配はない。一体どうなってしまうのか、と思っているうちにいつの間にか城下町にいた。

「さて、あんたはどんな服が好み? って言っても、食堂で動けるような服じゃないとダメよねぇ」

 私より楽しそうなヴィーナさんに連れられて、大通りを歩く。街は活気で溢れていて、客を呼び込む店主の声が響いている。遠くに見える広場の噴水では、大道芸を披露しているようだ。

「すごい……」

 思わず呟くと、ヴィーナさんが嬉しそうに「でしょー。ナルダンは騎士の国なんて呼ばれてるけど、ちゃんと商業だって発展してるのよ」と道行く人々の顔を見回した。

 ヴィーナさんはとびきりの美人だけど、会話しているうちにとても気さくな人だということが分かって、私はすごく安心した。たとえ少しの間でも、優しい人に囲まれるのが嫌な人なんていないだろう。

「そういえば、テナは普段はどんな格好をよくしてたの?」

「そうですね、"つなぎ"とかよく着てました」

「……は?」

 服を選びながら、何の気なしに聞かれた質問に、私も深く考えずに答えた。

「え? ……あ」

 答えてから、ヴィーナさんの反応でしまったと反省する。

「つなぎって、作業着の!?」

 ぐっと美しい顔を近づけられ、私はたじろぐ。

「は、はい。そのつなぎです。私、技術師になりたくて、よく機械とか木材とか工具とか触っていたので……」

「えぇ!? あ、あんた重い物とか持てなさそうな見た目じゃない!! 驚いたわ」

「よ、よく言われます……」

 学生時代にも、初めて知り合う人には驚かれたのを思い出す。

「ふーん、ほんと、人は見かけによらないってやつね。じゃあ、つなぎとまでは行かなくても、そういう感じの服も買いましょうか」

「……え?」

「だってテナ、そういうの好きなんでしょ。なら息抜きにいいんじゃない? あたしらの部屋でどこまで出来るか分からないけど、騒音出さなきゃ大丈夫でしょ」

「ヴィーナさん……」

「ほら、さっさと選ぶわよ。まだ日用品で買うものは色々あるんだから」

「はいっ!」

 こうしてヴィーナさんとの買い物はあっという間に終わり、私は召喚士の女子寮に案内された。騎士団の宿舎から歩いて五分ほどのところにあり、同じくお城の敷地内だ。石造りの三階建てで、女性の数はあまり多くないらしい。隣にある倍以上の大きさの建物が男子寮らしいのだが、色々と規模が違う。

「あたしたちの部屋は三階の一番のここよ」

 ドアを開くと、十五メートルほどの正方形のような部屋で、正面には窓がある。左手には二段ベッドがあり、下の段は薔薇模様のカーテンが取り付けられて見えないようにしてあった。

「ベッドは上がテナね。あたしは仕事柄、夜勤もあって変な時間に帰ってくるから、起こしたらごめんなさいね」

「い、いえ! 本当に部屋を貸してくださるだけでも十分なのに……」

 ヴィーナさんは部屋の真ん中にあるテーブルとソファに荷物を広げながら、てきぱきと整理していく。

「お風呂とトイレは一階に共用のがあるから、そこを使って。あ、お風呂は夜の六時から十二時までだから気を付けてね」

「は、はい……ッ!」

 次から次へと色々な情報が飛び込んできて、もう何がなんだか分からなくなってきた。

 とにかく、私は身の潔白が証明されるまではヴィーナさんと一緒にここに住む。朝六時から夕方五時まで食堂で働く。それが私の当分の動きだ。それ以上もそれ以下でもない。

 忙しくしていれば、今みたいにうじうじしている暇なんてなくなるだろう。

 よし、頑張ろう。私は小さくガッツポーズを作り、明日からの仕事に気合を入れた。


ガールズトーク(?)

珍しく日常な感じです。

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