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10 シャドーマスターって知ってる? 

 次の日の早朝。

 リーザの店にキィナが訪ねて来た。


 それにしても、なんとも言えない光景が広がっている。

 リーザを虐めた3人の聖騎士が、床に頭をこすりつけて鼻水まで垂らして平謝りをしているのだ。


 キィナは、

「まったく誠意が感じられない。魔女姉ちゃんがもういいよって言うまで謝れ!」と毒づいて蹴っ飛ばす。


「魔女姉様、すいませんでした」「魔女姉様、俺たちが間違っていました」「魔女姉様、どうかお許しください」


 リーザは何とも言えない表情で、三人を見つめた。



 ――魔女じゃないし。

 アルケミストだし。

 

 

 キィナはアーガスを蹴り飛ばす。

「ほら、見て。魔女姉ちゃんの顔。まだ怒っているよ! うわべだけで謝ったって、全部分かるんだからね!」


「魔女姉様、本当にごめんなさい」「魔女姉様、もうしません」「魔女姉様、どうか堪忍してください」



 だから魔女じゃないって。


 リーザは長い嘆息を吐くと、

「もういいわ。ネックレスも返ってきたことだし、色々あったけど、いつまでも引きずるって嫌いなの。水に流してあげるから、もう悪いことはしないって誓って」


「魔女姉様、ありがとうございます」「魔女姉様、このご恩は一生忘れません」「魔女姉様、バンザーイ!」


 リーザは頭をポリポリかいた。


 聖騎士たちは村人みんなに財宝を返してしっかりと謝罪する旨を告げて、リーザの店を後にした


 リーザはキィナを店内に案内すると、サンドイッチと紅茶を振舞った。

 キィナはサンドイッチを手に取ると、おいしそうに頬張る。


「それより一番興味があるのは、シャドーマスターについてよ。何者なの? もっと聞かせてくれないかな?」

「もぐもぐ……。えーとね。なんか凄かった」



 分からん。



「どんな風にすごかったの?」


「闇の力を自由に操って、黒い波を起こしたり、手からビームも出したりできるんだ!」

「めちゃくちゃ強いじゃん! どうして助けてくれたの?」


「分かんない。でもなんか暗黒邪神と戦いたいとか言っていたし、悪者と手あたり次第戦っているんじゃない?」


「へぇ~。すごいね。正義のヒーローみたいね」

「でも自分のことを、とんでもない悪って言っていたよ」


「なるほど! 心に傷があるダークヒーローって感じね。渋いところがちょっと素敵かも」

「うん。カッコよかったよ!」



 リーザは天井に向かって声を上げた。


「おーい、シン。降りてきなよ。おやつがあるよ。面白い話も聞けるよ!」


 一向に降りてくる様子はない。


「……ニンジン」


 ドスンと大きな音を立てて、シンが落ちてきた。

 さっきまで寝ていたのだろう。寝ぐせのついたグチャグチャの髪に厚底眼鏡をしている


「あ、シンだ」とキィナ。


 キィナの認識は、天井裏に潜んでいるおっきなねずみ程度。

 先日との違いは眼鏡をしているだけなのだが、あまりのギャップにとても同一人物とは思えないのだろう。


「あはは……。キィナさん。おはようございます」とヘラヘラ笑っている。



 リーザはシンにサンドイッチを差し出すと、

「ところでシン。シャドーマスターって知ってる?」


「うん」


 リーザは椅子から立ち上がると、シンに詰め寄った。


「えっ? えっ? 本当なの、シン!? どこで会ったの? 教えてよ!」


「えーとね。昔、俺が描いた漫画の主人公」


 リーザは聞いた自分が悪かったと思ってか、難しい顔をしたまま頭をポリポリかいた。

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