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481 業務日誌 北宮香恋編 五

 

「合コンって、どうすればいいのかナ?」

「え?」


 合コン?今アミーは合コンと言ったか?

 合コンと聞いて私は一瞬焦った。


 何を焦るかと言えば、私はこの年になっても合コンに行ったことがない。

 仮にも大学生である私が行ったことがないという事実を、年下のそれも仲のいい後輩にあっさりと言えるかと聞かれれば、私は言いづらいと答える。


 何せ私は、この会社に入る前までは隣に透がいた。

 幼馴染の私が言うのもなんだけど、容姿が整い、人付き合いも良かった透が彼氏だという事実は単純な男避けとしてかなり効果的な役割を果たしていた。


 常識的な友人なら透が彼氏という事実を知っているだけで合コンには誘ってこない。

 たまに人数合わせで参加してくれと頼まれることはあったけど、それでも透がいたから私は断り続けた。


 普通にサークルの飲み会で男女混同で席を一緒にして、盛り上がったこともあったけど、それはどちらかと言えば友人同士で飲んでいるという感覚に近い。


 透と別れたあとは、七瀬と透が大学で一緒にいる姿がちょくちょく見られなんとなく理由を察した友人たちが、新しい恋を応援してくれるということで合コンに誘ってくれていたものの、すぐに切り替えることはできず、バイトを理由に断っていたら最近はもう誘われなくなった。


 さてここまで長々と語って私が何を言いたいか。

 つまり私は合コンというものに対して完全に初心者と言って良い。


 言えることと言えば、精々が常識的に知っている知識程度で実戦経験は皆無。


「どうかした?カレンちゃん」

「いえ、何でもないわ。合コン、合コンね。どういった経由でそんな話になったのかしら?」


 私自身、性格が素直でないことは百も承知。

 仲のいいアミーに対してもこうやって見栄を張ってしまうのが少し嫌になってしまうけど、頼ってきたアミーを経験がないという理由だけで断る方が嫌だ。


 本当だったら経験はないけど、一緒に考えようって素直に言えたらよかったのに。


 気づけばダンジョンで培ったポーカーフェイスが炸裂し、自然な顔でアミーの隣の席に腰かけている自分がいる。


 年上としてのプライドと、少しでも役立ちたいという親切心。

 その折衷案の結果がこれだ。


「うん、召喚事件の後くらいから学校の子と色々と遊びに行くことが多くなってネ」

「あら、良いことじゃない」


 とりあえず話を聞かなければと、合コンという話になった流れを把握しようとしたのは良い話の持ち出し方だったのではないか。


 次郎さんに、アミーは学校でクラスメイトとうまくいっていなかった時期があったから同性として少し気にかけてやってくれと言われていたことを思い出す。


 アメリカ人とのハーフ、そして日本ではない国での生活をしていて日本語が苦手。

 その条件は日本人として少し線引きして、距離を取ってしまうには想像に難しくない。


 おかげで友人ができなかったと聞いていた身としてはこうやって一緒に遊ぶことが多くなったという報告は素直に嬉しくなる。


 少し不安だったのは、アミーも私と同様、結構な額を稼ぎ出している。


 そのお金目当てで近寄ってくるような人間ではないかと心配になるが、次郎さん曰く、アミーのお母さんがお金の管理をしているから問題はないということ。


 彼女が使えるお金は高校生にしては多いお小遣いだけど、バイトしている学生からしたら常識的な範囲で収まっている。


 アミーのお母さんも、娘が稼いできたお金を大切に貯金してくれる常識人だと次郎さんが言っていた。


 少し金銭感覚がずれているかもしれないけど、今は良いわよね。


「うん、それでね。今度その仲良くなった友達と一緒に遊ぼうって話になったんだけど、どうせならカラオケに行こうって話になって」


 今はアミーの合コンの話よ。

 聞いている限り、変な話はどこにもない。


 いたって普通に遊びの計画を立てているだけに過ぎない。


「そこから、女の子だけで遊びに行くのは寂しいって話になって」

「うん、それで?」


 だけど、すぐに話が逸れた。

 けれど、アミーの言っている会話の流れも良く聞くからわからないものではない。


 私も高校生の頃に経験した話の流れだ。

 あの時には隣に透がいたから、そこまで気にするようなことはなかったし、透のスペックは他の男子よりも高かったから共感はしづらかったけど理解はできた。


 恋に恋するお年頃っていう言葉もあるくらいだし、コイバナに話が流れるのも自然と言えば自然だ。


 ここまで聞いて、アミーが悩むようなことではない。

 単純なコイバナだ。


「それで……その高校も来年卒業だし彼氏が欲しいって話になっテ」

「それで合コンってわけ?」

「それだけじゃなくて、クラスの男子は前に召喚事件があってから疎遠になっちゃててそれなら、学校以外の男の人と知り合えないかって話になったノ」

「ああ、そう言う流れね」


 私も次郎さんやエヴィアさんから又聞きしただけだから詳細は知らないけど、アミーは過去に勇者として異世界に召喚されて、異世界で生活していたことがある。

 その際に色々と問題が起きて、クラスの仲が悪くなったと次郎さんがお酒を飲みながら話していた。


 この会社が手を回して色々と後始末をしたと聞いたけど、それでも深層心理に当たるような個人的嫌悪感までは対処できなかったとか。


 あの異世界の日々に関しては覚えている人はアミーだけだと聞いてたし、そういった流れになるのも仕方ない。


「それで私がバイトしているってこと話してて、バイト先の男の人を紹介してって話になったノ」

「ああ、そう言うことね」


 そしてアミーが困っている理由が理解できた。

 うちの会社はかなり特殊だ。


 これ以上特殊な職場なんてないんじゃないかって言うくらいに特殊だ。


「紹介って言っても、下手に紹介できないわよ?」


 それが合コンなんてプライベートに関するような関りになると途端に厳しくなるような会社となればオンリーワンと言ってもいいのではないか。


「とりあえず会社の人は除外するとして」


 例え異世界に関わり合いがあったとしても、容姿が整っていて受け入れやすいとしても、人以外の種族ダークエルフや悪魔と言った種族の人たちはもちろん、他の人外の社員も合コンに誘うのは適さないし、社外に出るのも手間だ。


 となるとダンジョンテスターに絞られるけど。

 基本的にここで働いている人って一番若いのが勝君で、その次になると大学生がほとんど、それでアミーと仲のいい人ってなると同じ課の人たちになるが。


「まず勝君は無しね」

「OK、それはわかってるヨ」


 もっともアミーと年が近くて身長を気にしている片思いの相手を真っ先に除外する。

 それは彼が嫌いだからというわけではなくて、むしろ好きだから取られたくないという意味で除外する。

 それに、勝君をさそって南にへそを曲げられるのも面倒なのも理由の一つ。

 勝君を合コンに参加させたという事実で、今の協定関係が崩れるのは何としても避けないといけない。

 それを理解してくれているアミーも頷く。


「次郎さんも除外ね、正直、普通の女子高生に興味がわくとは思えないけど」

「後も怖いしネ」


 そして婚約者がいて事実婚状態の次郎さんも無理だ。

 そもそも年が離れていて、女子高生に興味を抱けばアウトな年齢の次郎さんが興味を抱いてほしくないという願望もある。


 さすがにスエラさんを筆頭にメモリアさんにヒミクさん、さらにはエヴィアさんと女性を四人も囲っている状態のあの人がそうなるとは思わないけど。


 アミーの言う通り、何かあった時に怖いという理由もある。

 温厚に見えて、あの四人の戦闘能力はかなり高い。

 もし万が一、浮気をして修羅場になったらと想像するだけでゾッとする。


 人柄的にもあり得ないと思うが、私たちの方から誘うという行為自体がダメな人種だ。

 数合わせでも呼んではいけない人というわけだ。


「まぁ、海堂さんもダメよね」

「そうだネ。こっちの方が心配ダヨ」


 そして対照的に海堂さんの方は、誘ったら本気になりそうだという不安があるから余計にダメだ。


 あの人も人柄的には信頼できるけど、女性関係となると少し不安になる。


「アミリさんにシィクさん、ミィクさん。怒らせたらマズイわよね」

「ダメだと思う」


 人との線引きは上手だけど、どうしても軽薄という印象がぬぐえない。

 合コンと聞けば普通に参加してきそうな印象がある。

 そうなってあとあと問題になるのは流石にダメだ。

 話しすら聞かせない方がいい。


「となると、同じ課の別のパーティーの人ってことになるけど……」


 一番仲のいい男たちがダメということになると、次に繋がりがあるのは同じ課で時々一緒に訓練する同じダンジョンテスターたちということになる。


「ベニーさんはどう?彼なら陽気だし、人当たりもいい。年は少し離れているけど悪くはないんじゃないかしら?」


 まず最初に思い浮かべるのは仲のいいパーティーメンバーということになる。

 イタリア人で容姿も整っている上に、話し方もイタリア人特有の明るさがある。


 アミーとの交友はあったはずだし、日本語も堪能で、場の空気を盛り上げるのには申し分ない人だと思う。

 しかし。


「ダメだった」


 アミーも心当たりで頼んでみたけど結果は空振り。


「剣の道を究めるために色恋にうつつを抜かしている暇はないって時代劇に出てくる侍みたいなこと言われた」


 イタリア人らしい女性に優しい心は、日本の文化に侵されてしまったのか。

 前衛の才能はないって次郎さんが言っていたけど、それでもあきらめないのか。

 いや、挫折させるつもりなら次郎さんが外部からの指導で剣術道場の師範を呼び寄せたりはしないか。


 ちょっと頭を抱えそうになったけど、まだ知り合いはいる。


「加藤さんたちは?確か、あの人たちは付き合っていなかったはずだけど」


 次に特撮ヒーローが好きな集団で有名で、海堂さんの特殊スーツを作るための貯金をしている人たち。

 佐藤さんと伊藤さんの二人の女性テスターを抱えているけど、あくまで仲間ということで恋人関係ではなかったはず。


 加藤さん、後藤さん、遠藤さんだったら問題はないはず。


「NO、ダメッだった」


 しかし無情に両手でバツ印を作るアメリア。


「一日も早く、海堂さんのスーツが欲しいから素材収拾が忙しいって」

「まぁ、人の趣味はそれぞれよね」


 なんだろう、人のことを言ったらダメなような気がするけど、この会社に入ったらかなり個性が濃くなりそうな気がする。


 侍っぽくなり始めているイタリア人のベニーさん。

 本気で戦隊ヒーローを目指している加藤さんたち。


「他には……」


 そして残ったダンジョンテスターたちの中で合コンに誘ってもいいと言える程度に仲のいい男性テスターをあげてみるけど。


「全員、彼女持ちってどういうことよ」


 その誰もが彼女がいた。

 中には次郎さんに触発されて、会社の女性社員にアプローチして付き合った人。

 この会社で働いて金銭的面で余裕ができて外で彼女を作った人。


 総じて売却済み。

 そんな人たちを合コンに誘えるわけもなく。


 結果的に全滅。


「うん、だから困ってるの」


 ここまで来ると素直に同じ学校の人たちと遊びなさいと言いたい気持ちがあるけど、それだとアミーが私に相談してきた意味はない。


「うーん、そうなるとだけどあまり使いたくはないけど」

「何か方法はあるの!?」


 直接的なつながりが無理なら間接的な手段に頼るほかない。


「まぁ、南がOKを出せばの話ね」


 光明があるという話で私個人としてもあまりとりたくはない手段だ。

 しかし、困っているアミーを放置するのも気分が悪い。


「勝君に頼んで勝君の学校の男子を紹介してもらえばいいんじゃないかしら?」

「あ」


 アミーも知り合いを紹介するということで頭がいっぱいになっていて、その方法を忘れていた。


 この手段だったら当人はダメにしても、その当人の紹介で場は整えられる。

 ありふれた手だけど、効果はある。


「まぁ、一番の難所は勝君の側にいる南の説得かしらね。それがダメだったら私が男友達紹介するわよ」

「OK!それで行こう!!」


 それに最悪、私が幹事をやって大学の知り合いを紹介すればいいかと思いなおす。


 合コンの幹事なんてやったことがないけど、アミーのためならどうにかなるわよね。



 今日の一言

 見栄を張るための努力は必要。



毎度のご感想、誤字の指摘ありがとうございます。

面白いと思って頂ければ、感想、評価、ブックマーク等よろしくお願いいたします。


現在、もう1作品

パンドラ・パンデミック・パニック パンドラの箱は再び開かれたけど秘密基地とかでいろいろやって対抗してます!!

を連載中です!!そちらの方も是非ともよろしくお願いいたします!!

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― 新着の感想 ―
[一言] アメリア(アミ―)は過去に色々不幸なことがあったけど、高校生活を楽しんでいるようですね。 頼りになるお姉さんやお兄さんたちもいるし。 しっかし、北宮さんや。いくら気が強いとはいえ、アミ―にま…
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