475 業務日誌 海堂忠編 四
秋葉原の電気街。
それもメイン通りではなくて裏の方に入って、メイド喫茶とかアニメ関係のショップが点在するこの通りでまさか北宮ちゃんに出会うとは思っていなかった。
「本当に珍しいっすね。会社だとしょっちゅう会うっすけど」
俺から見ても北宮ちゃんとはあまり縁のない場所だっと記憶している。
「そうね、私もここで会うとは思っていなかったわ。偶然ってすごいのね」
両手に大きな紙袋を持った俺と、休日だからかいつも以上におしゃれに気を使った北宮ちゃん。
俺も俺で外行き用で身綺麗にはしてるけど、ファッションに対しての意識の差がしっかりと出ている。
俺のようにマネキン買いしているのではなくて、しっかりと自分でコーディネイトしているのがわかるほど、服を選んでいる北宮ちゃんと、アニメショップと無地の紙袋を両手にぶら下げている俺が道端で会話してる姿は他人から見たらどんな関係だと思われるんだろう。
まぁ、よく見えて少し仲のいい知り合いって言ったところっすか。
「買い物っすか?」
まぁ、俺と北宮ちゃんの関係はあくまで同僚、パーティーメンバー、あるいは異性の友達と言った感じだ。
恋愛感情は互いに全くと言ってない。
何せ俺は今ではアミリちゃんとシィクちゃんにミィクちゃんと三人と付き合っている状況。
これ以上女性に手を出せるほど甲斐性があるわけでもないからな。
何よりも、北宮ちゃんは勝君に片思い中だ。
俺も体が頑丈になったからと言って流石に馬に蹴られたくはないっすよ。
「違うわよ。私は付き合いね」
「付き合いっすか?」
だけど、だからといって出会ったから即サヨナラってわけじゃなくて雑談を交わす。
俺にとってはここは来慣れた場所であるから、珍しいことではなかったけど、北宮ちゃんがここにいるのは本当に珍しい。
だけど、一人で来ているのではなくて、連れがいるということ。
ではその連れがここによく来る人だということだ。
北宮ちゃんと知り合いで、秋葉原に来ると言う人物。
俺の中で心当たりは一人しかいない。
「いやぁー!同じ東京でもここがやっぱり拙者のホームグラウンドでござるなって、海堂先輩でござらぬか。ここには買い物で?」
「やっぱり南ちゃんっすか」
案の定、予想通りの人物が現れて納得。
ケバブを両手に持って片方を北宮ちゃんに差し出す、普段からは想像ができないほどおめかししている南ちゃん。
俺がいたことにあまり驚くことなく、俺の両手に持っている紙袋を見てここで何をしているか察した様子。
黙っていれば清楚系のお嬢様とも取れるようなファッションにああ、何でここにいるのかを察した。
「アウェイの空気にやられたんっすね」
「イグザクトリィ、その通りでござるよ」
そしてなんでこんな場所で北宮ちゃんと一緒に食事をとっているかが納得できた。
「そうね、さっきまで原宿とか新宿の方で服を見てたんだけど、この子がせめて食事はホームグラウンドでって泣きながら言ってきかなくてね。まぁ、服を選んでくれたお礼ってことで奢ってくれるからまぁいっかってついてきたんだけど」
「連れてこられたのが秋葉原ってわけだったっすか」
「まぁ、方角聞いてなんとなく察してたけどね」
それでここに連れてこられたわけって、肩をすくめながらケバブを上品に食べ始める北宮ちゃん。
あ、おいしいとこぼれる言葉に対してドヤ顔を見せる南ちゃん。
いや、美味いのは同意するっすけど、お店の人が料理上手ってだけで南ちゃんが作ったわけじゃないっすよねそれ。
「へぇー、それでケバブっすか。俺はてっきりここならメイド喫茶にでも入ると思ったっすよ。南ちゃん的に」
「ふふふふ、甘いでござるな海堂先輩。流石の拙者もそこら辺は空気読むでござる」
「へー、南ちゃんも考えてるんっすね」
だけど、南ちゃんのことだからそのままメイド喫茶あたりに入って色々とノリと勢いで楽しむと思ってたけど、流石にここら辺に慣れていない北宮ちゃんを連れて入らないかと納得した。
「入るなら執事喫茶でござるよ。まぁ、北宮に止められたでござるが」
常識的な部分もあるのだなと感心してたらこれだ。
「やっぱ南ちゃんだったっすね」
「まさかダンジョンに入る時よりも、入りたくないって思う日が来るとは思わなかったわよ」
けど、やっぱり南ちゃんは南ちゃんで、落ちはしっかりとあった。
「それで、だったらここだってケバブの屋台に連れて来てくれたってわけ。まぁ、美味しいからよかったけど。次変な店に連れていこうとしたら、私も全力でファッション誌とかに載ってるブティックとかに連れ込んでやるからね」
「ひぃー!?リア充が!?リア充のオーラが!?」
「どんな脅し方っすか。普通、女の子だったら喜ぶところだと思うっすけど」
北宮ちゃんと南ちゃんのやり取りはある意味で見慣れた光景ではあるけど、それでもやっぱりどこかずれてるんだよなと笑っていると、ふと周囲から視線が集まっているのに気づく。
「ほら、あの子たち可愛くね?」
「俺は隣の子がいいかな、ちょっときつい性格してそうだけどつくしてくれそうだし」
「俺は隣のオタクっぽい子かな。かわいいし、胸が大きいじゃん」
「あの一緒に話してる奴誰かな。彼氏?」
「いや、それはないだろ。精々友達ってところじゃねぇか?見てたけど、待ち合わせって感じじゃなくて偶然会ったて感じだし」
そして聞こえてくる二人への評価。
まぁ、確かに二人は美人だし、こういう感じで男が寄ってきそうな雰囲気はある。
しかし、二人は聞こえているだろうけど全く反応はしていない。
そっと北宮ちゃんと視線が合うと、ちょっと苦笑しながら。
「反応しないのが一番なの。ああいう奴は、視線があったら声をかけられるし、気があると思われても迷惑だし」
「そうでござるなぁ、初対面に拙者が会話できると思えないでござるし、絶対に無口になる自信があるでござる」
聞こえないふりをしている理由を教えてくれる。
なるほど、美人は美人なりに苦労していると言うわけっすか。
「なるほどっす。ちなみに、二人はこの後予定はあるっすか?」
「海堂先輩のおごりで江戸前寿司を食べに行く予定ならあるでござるよ?」
「あら、それなら銀座の方がいいんじゃない?あっちの方で実は食べたいものがあるのよね」
「さらりと先輩に集るんじゃないっすよ。俺も俺で今日は結構散財したっすから。まぁ、寿司くらいなら問題ないっすけど」
いつも背中を守ってもらっている後輩にご飯を奢ることくらいはいいけど、少しくらいは遠慮してほしい。
俺と同じくらいの給料をもらっているだろうとツッコミを入れる。
「冗談よ、この後は別のブティック連れてって南のファッションセンスを磨いたら帰るところ」
「うー、ダンジョンよりも買い物の方が辛いって思う日が来るとは思わなかったでござる。なんで同じような服を何着も見ないといけないんでござるか」
「これだから、あなたは」
ただ、こんな感じの会話もいつも通り。
流れで言えば、飯を奢ることもなく、そのまま分かれて終わりなんだけど。
「そう言えば、海堂さん。次郎さんの昇進祝いってもう買ったかしら?」
「先輩のっすか?いやぁ、実はまだなんっすよね。こう、なかなかいいのがなくて」
今日はちょっとだけ延長のようだ。
先輩の将軍への昇進の決定。
今先輩は将軍になるために東奔西走して、忙しい真っ盛り。
書類仕事もそうだけど、最近じゃ色々とつながりを持とうとする人たちが多いらしい。
ちらっと愚痴で聞いたときは、どうやら大陸の方の魔族の貴族、日本政府、日本以外の神秘側の組織等の接触が後を絶たないらしい。
その対応に追われて娘が起きている時に帰れないと嘆いていたのを覚えている。
そんな多忙な先輩でも南ちゃんの提案でお祝いしようという俺たちダンジョンテスター第一課のメンバーのパーティーには参加してくれるということで、どうせならお祝いの品を用意しようと言う話になっている。
その中で俺たちは先輩と同じパーティーということで世話になったこともあって、個人でプレゼントを買っていたりもする。
「北宮ちゃんは何にするか決めてるっすか?」
「まぁ、目星はね。そこまで高い物でもないし、こういうのって気持ちって聞くわよね」
「ふふふ、拙者は度肝を抜いてやるでござるよ」
「頼むから、銅像送り付けるとか止めてよね」
「何故それを!?」
「送ろうとしたんっすか、注文してないっすよね?」
如才ない北宮ちゃんのことだから普通に良い物を買ってきそうだ。
ネタ枠の南ちゃんはある意味で安定してとんでもないことをしでかしそうだった。
お金を持った動画投稿者とかがやりそうなネタを仮にも世話になった人に対してやるのはどうかと思う。
まぁ、先輩のことだから笑いながら許してくれそうな気がするけど。
「いやぁ、それが」
「もしかして、注文したんっすか?」
流石にそれはないと思ってツッコミを入れたけど、冷汗を垂らしてそっと視線を逸らす南ちゃん。まさか本当に注文してしまったのか。
「じつは、知り合いのジャイアントの人とネタで話したら思いのほか乗り気になっちゃって」
「乗り気になって?」
「銅像じゃなくて、ミスリル像が完成しそうになっちゃってたりしなかったりするのでござるよこれが」
「今すぐ止めに行くわよ!?銅像ならともかくミスリル!?そんなものいくらになると思ってるのよ!?」
「いやぁ、それが祝い金ってことでリーダーに世話になってる商店街の面々が融資してくれて拙者が出した額はそこまで高くはないんでござるよ。まぁ強いて問題点を言うなら」
だけどさすがは内のパーティーで想定の斜め上を行くことに定評のある南ちゃん並の思考力では追いつけないことをやって見せる。
まさか銅像ではなくて、ミスリルで像を作るなんて発想俺だったら思いつかない。
「その像自体が結界装置の要になってるから、かなり高性能なバリア発生装置になるってことくらいでござるな。ほら、リーダーのところ双子ちゃんがいるでござるし?安全面に金かけた方がいいって話になって」
「だからって、なんで銅像なのよ、もっと普通の形にすればいいじゃない」
北宮ちゃんの言う通り。
そんな破天荒な形にしなくともいいじゃないか。
流石の先輩でも自分の姿かたちをした像を建てることに対して恥ずかしいと思う。
俺だったら、恥ずかしさで布団から出られなくなる可能性がある。
「ちなみに筆頭出資者はメモリアさんでござるよ?」
「メモリアさん」
「うわ、奥さんの一人がやる気出したっすか」
だけどここで現代と異世界の常識格差が出た。
北宮ちゃんは額に手を当てて大きなため息。
俺の口元は引きつっているだろう。
まぁさすがの南ちゃんでも一人でこんなことをするとは思っていなかった。
やるとしたら間違いなく勝君が止めるだろうし。
だけど、商人であるメモリアさんが動いたのなら話は変わる。
「いやぁ、キオ教官に勝ったという偉業を成し遂げたんだから銅像の一つや二つ作っておいた方がいいじゃないでござるかとメモリアさんに提案したのがまさかここまで話が大きくなるとは思ってなかったでござるよ」
「あ・な・たがそんな提案したのが原因でしょう!!」
「痛い!?痛い!?痛いでござるよ北宮!?外では拙者はか弱い女性何でござるからそんな乱暴にしないで欲しいでござるよ!!」
「うるさい!!」
しかも、名目が教官に勝ったことだと言うのだからまずいのでは?
下手したら教官が怒るし、その傘下の鬼族も敵に回すのでは?
「いいじゃないでござるか!?教官も笑いながら賛成してくれたでござるし!!なんなら社長もスポンサーになってくれたでござるよ!!」
「そこまで話がでかくなっているんっすか!?」
さっき高性能なバリア装置って言っていたけど、もしかしたら超弩級の結界発生装置が爆誕するのではないだろうか。
ネタに振り切ると言っても限度があるっすよ南ちゃん。
アイアンクローで顔をワシ掴みにされている南ちゃんの暴露は、会社の上層部を巻き込むほどの規模であった事実を俺たちに教えてくれる。
「そう言えば、前にアミリちゃんがプレゼントだっていってゴーレムの設計をしていたっすね。もしかして」
そこまで来ると最近会ったアミリちゃんが家でプレゼントだと言ってパソコンで設計していた人型ゴーレム。
それも関係してくるのでは?
そう思って南ちゃんに聞いてみれば。
北宮ちゃんにアイアンクローされながらも俺に向かってサムズアップして。
「もちろん結界を突破されたときは、結界に使っていた動力源をもとに迎撃モードで動くようになっている稼働機能付きでござる。これで庭先で子供が遊んでいても安心でござるよ!」
「何が安心よ!!」
うん、南ちゃん。
普段一緒にはしゃいでいるっすけど、これだけは言えるっす。
「やりすぎっす」
今日の一言
街中の出会いはちょっと意外なことも起きる。
毎度のご感想、誤字の指摘ありがとうございます。
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現在、もう1作品
パンドラ・パンデミック・パニック パンドラの箱は再び開かれたけど秘密基地とかでいろいろやって対抗してます!!
を連載中です!!そちらの方も是非ともよろしくお願いいたします!!




