193 時間がないときにこそ重要な決断を迫られる
また遅れて申し訳ありません。
寒くなり、少し体調を崩していました。
遅くなりましたが、投稿します。
組織というのは時にはしがらみが有り面倒だと感じる部分があるだろうが、その力は強大だ。
個人で準備をするとなると多大な時間を要する事柄でも何十分の一の時間に短縮できる。
監督官から、アメリアの動きを記した報告書が逐一俺の手元に送られ、そろそろ動くと監督官が今朝俺へ言ってきた。
そうなれば、俺は決断を迫るしかない。
「それで? 答えは決まったか?」
アメリアを除いた再度のパーティーメンバーの招集。
集められた面々の顔には緊張の色が映っていた。
それも仕方ない。
短い期間、それこそアメリアが向こうの世界に渡ってから、わずか二日しか経っていない。
その間に生死を賭ける戦場に行けるか、なんて覚悟を平和の国、日本在住の若者が早々に決められるわけがないと思っていたが。
「拙者は参加でござるよ?」
「お前は……まぁ、いいか」
「リーダー、最近拙者の扱いが雑でござらんか?」
「お前は考えていなさそうで、その実しっかり考えているからな。自分の心の整理や判断する辺りの能力は信頼してるよ」
「……なんでござろう。こうも素直に評価されると妙に照れくさいというか、リーダーを直視できない拙者がいるでござる」
例外というのは意外と存在するようだ。
まず、その例外の筆頭の南は何を今更と言わんばかりに、緊張しているパーティールームの空気など関係なしにのんびりと気負うことなく答えてきた。
なんとなくではあるがこの解答は予想できていたので、俺は普通に答えるが、その反応は南にとっては予想外であったようで、ふざけた反応を返しつつわずかに頬を染めてふざけようとしているがその仕草にキレがない。
だが、ある意味で南のおかげで場の空気が整ったとも言える。
誰しも一番に語り始めるのは緊張するもの、慣れていればどうということはないかもしれないが、口火を切る存在がいれば話しやすくなるのも事実だ。
そんな空気を作ってくれた南に内心で感謝し、緩みそうになった口元を引き締め。
残った面々の顔を見る。
これでアメリア救出メンバーは俺、ヒミク、南となった。
正直に言えば、最低限のメンバーは揃ったと言える。
だが、万が一を考えれば不安が残るとも言える。
その不安を出さぬよう気を払いながら、そっと俺は黙ってほかの面々を見る。
海堂は南の行動に苦笑し、北宮は真剣な表情のまま、そして勝はまだ迷っているようだ。
「……」
ここで俺はどうするかなどと切り出さない。
こういった質問は意外と強制力を持ってしまう。
最初の回答に自分もと乗ってしまう。
今回は自分で考え抜いた決断、責任を背負い、答えてほしい。
だから俺は黙り、ほかの面子の答えを待った。
「私も、行くわ」
「……」
次に切り出してきたのは北宮だ。
きっと、答え出すのに迷い、何度も自問自答を繰り返したのだろう。
だが、その成果は出ている。
これでいいと、頷き。
行くと言ったあとの彼女の表情はしっかりとした決意と覚悟を宿していた。
それはアメリアのことを聞いた初日の感情任せに行動を起こそうとした彼女ではなく、自分の意志で一歩踏み出した北宮の決断だった。
「わかった。お前の力あてにさせてもらう」
「ええ。そうして頂戴、私はできることをやるだけよ」
その答えを出して満足そうに、頷く北宮は。
「なんか拙者と違って、しっかりシリアスしているのがムカつくでござる」
「うっさいわね。私はあなたと違って真面目なの。あなたのようなギャグみたいな存在と一緒にしないでくれる」
「言ったでござるな!! 真実だけど言ってはいけないことを言ったでござるな!?」
「自覚はあったのね」
南と小競り合いを始めてしまった。
うちのパーティーはなんでシリアスな空気が続かないんだと、思いつつ。
残った二人はどうするのかと思っていると。
「いやぁ、うちの女性陣は強いっすねぇ。正直、年上の男として立つ瀬がないっす」
「俺からすれば今更なような気がするが、な」
右手で後頭部を掻き、話し出した海堂の顔を見てやれば、タハハと苦笑している。
普段の海堂の立場といえば頼りになるようでならないお兄さんという感じだ。
やればできるが、発破をかけないといけないという地味なポジション。
そんな海堂が南と北宮の発言に遅れたことを嘆いていたが、今更そんなことを気にするかと聞いてみれば耳が痛いと苦笑を深くする。
「まぁ、そんな俺っすけど。アメリアちゃんを助けに行くっすよ」
「そうか、頑張れ」
「先輩!! なんかさっきから扱いが丁寧なのと雑なので差が激しくないっすか!? 俺一所懸命考えたんっすよ? もっとこうないっすか? それでいいのか、とか、お前の覚悟見せてもらったとか」
「ないな」
そんな海堂が、悩まないわけがないし、損得勘定ができないほど若くもないし人生経験を積んでいないわけでもない。
自分の人生にかぶさるだろうリスクは、俺を除き、このパーティーの中で誰よりも理解している。
今回の出来事で自分に与えるだろう影響も考えているだろう。
それがわからないほど、俺とこいつの付き合いも短くはない。
だからきっぱりと言ってやるが、海堂は不満を漏らし。
「ようこそでござるよ海堂先輩。ギャグキャラの世界に」
「NO!? 俺ってそっち側の住人じゃなかったはずっすよ!?」
「ククク、何を言っても無駄でござる。先ほどのリーダーとの会話が動かぬ証拠でござる。そしてなにより」
「なにより? なんっすか?」
「先輩ほどシリアスが似合わない男はいないでござる!!」
「な、んだと!?」
「あんたたち、もう少し静かにしなさい」
南にからかわれている。
その二人をみてどっちもどっちよと呆れたように北宮がたしなめる。
そして、最後に回った勝といえば。
「まだ悩んでいるか?」
「はい」
「……助けたい気持ちはある。だが、人を殺してまで助けたいかって言ったところか?」
「……はい」
答えを出せずにいる。
本来であれば、この段階で決断できていないのなら連れていかないほうがいいと俺は思っている。
だが、何もせずについてくるなと言うのは簡単であるが、多感な年頃である勝にそれは強烈な疎外感を与えることになるだろうというのも目に見えている。
なので。
「なんで、みなさんはそんな簡単に決断できるんですか?」
「簡単ではないんだがな」
この質問が出てくるのはなんとなく察していた。
俺もそうだが、南も北宮も海堂も多少の差はあるが、人生経験で自身に判断基準というのが構築されている。
その構築されている度合いが今回の決断の差を出した。
勝からすれば俺たちは短い時間であっさりと決断しているように見えるが、それは違うと訂正する。
「俺は俺で悩みはしたが、今回の件で責任もあれば俺自身納得いかないこともある。それを加味して俺はアメリアを助けに行くと決断し覚悟した。その過程で何が起こるかと理解し、そのリスクを背負うことができるかって判断してな」
わかるか? と問いかければ勝は少し迷いつつも
「わかりません」
そう答える。
俺は苦笑し。
「それでいい」
その答えを肯定した。
え、と疑問符を浮かべながら俺を見る勝に俺は笑みを浮かべる。
「あくまでこれは俺の価値観から来る選択だ。常識的に見れば俺の行動は間違っているという輩もいるだろうさ」
何を俺が言いたいのかと勝に、俺は語りかける。
「だからこそ、人間ってのは悩むんだよ。本当にこの行動が正しいのか? この行動は間違っていないのかってな。そして、その悩みが自分の判断基準を創りだす。失敗や成功が人間っていうのを育てる」
勝はまだ、今回の件に対して決断できるほど判断基準を備えていなかった。それだけだ。
いや、本当だったら戦場に立つか立たないかそんな決断を高校生にさせてはいけないんだろうな。
「俺が生きた人生で築いた基準が、俺の覚悟を後押ししてくれたんだよ。だから決断できた」
「俺には、それがないんですか?」
「ああ、お前が迷うってことはそうなんだろうよ。だがな、勝。それは間違いじゃねぇ。いま決断できないことは恥ではない。これは日本で普通に生きるつもりならしなくていい決断だしな。できないと思っても断れないってことは社会に出ればいくらでもあるが、時にはそれを断らないといけない時もある。何をどう決断するかこそが個人の持つ価値観になり、その価値観と状況が反したときに周りとどう折り合いをつけるかは、生きていくうえで必要な適応本能だ。つまりは、どう生きるかっていう一生ものの難問だな。俺でも悩んで止まっては進んでまた悩んでの繰り返し、そんな難問の分岐点になるかもしれない今回の出来事だ。簡単に決められるわけがない」
今回は、環境が悪かった。
勝の迷いは何も悪いところはない。
人生の価値観という天秤を傾けさせるのはまだ早い。
「だからな、お前が今回のことで答えを出せないのは間違っていないんだよ」
そういい、まだ納得できない勝の顔はこのあとに俺が言う言葉を想像し、置いていくのかと俺に問いかけているようだ。
「勝、お前に悪いが今回はお前を置いていく。仮にお前が今、行くと言っても俺はお前を連れていかない」
「……」
その問に俺はきっぱりと言い切る。
どうしてと勝は聞かない。
勝は賢い。
今回の件は、迷っている自分は足手まといになるというのを理解している。
だが、仲間を、アメリアを助けに行けないという感情は抑えられない。
情けなさか、悔しさか、不満がこぼれそうになる自分を勝は必死に飲み干そうとしている。
「そんな顔すんな」
「イテ」
そんな勝の額を俺は軽くデコピンする。
「言っただろ、お前は間違っていない。今回のことでアメリアを助けに行かなかったからお前は仲間じゃないなんて言うやつもいない。それにな、お前には重要な役割もある」
「役割?」
「おう、お前は帰ってくる場所で待つ留守番役という重要な役割がなって、不満そうな顔するな。留守番役っていうのもバカにできないんだぞ」
勝は俺の言葉を慰めの言葉で適当に言っているように聞こえたのだろう、いつも以上に眉間に皺がよりはじめ、俺は苦笑しつつ説明する。
「誰かが帰りを待っているっているのは、俺たちの心の支えになる。俺の場合はスエラやメモリアだな。だが、そこはお前も立てる場所でもある。そして、俺以外に海堂たちもお前が待っていると知れば、土壇場で諦めるって心を払拭できる支えになる」
気休めっていう言葉は案外バカにできない。
ほんのわずかの心の余裕が僅差を作り出してくれる。
その僅差が命綱になると俺は戦いを通して理解した。
俺の言葉を聞き、海堂や南、そして北宮も同調し頷いてくれる。
「吉報を待つでござるよ」
「先輩ってところ見せてやるっす」
「そうね、次郎さんの言うとおり勝くんが待っててくれるなら安心ね」
その言葉に嘘偽りはない。
一人での行動は軽いが、その後ろに誰かが待っていてくれるとなるとそれが重さになり慎重な行動を促すことになる。
それを理解した勝は一回目を瞑り、深呼吸した後。
「わかりました。待っています」
目を開け、悩みを吹き飛ばすようにそう言った。
「おう、任せておけ。アメリアを連れ帰ったらみんなでパーティーだ」
その決断を裏切らないように俺は笑って期待しておけというのであった。
今日の一言
少ない時間で判断し決断しないといけないことはあるが、こんな決断をする日が来るとは思わなかったよ。
今回は以上となります。
面白いと思って頂ければ、感想、評価、ブックマーク等よろしくお願いいたします。
※第一巻の書籍化がハヤカワ文庫JAより決定いたしました。
2018年10月18日に発売しました。
同年10月31日に電子書籍版も出ています。
また12月19日に二巻が発売となります。
内容として、小説家になろうに投稿している内容を修正加筆し、未公開の間章を追加収録いたしました。
新刊の方も是非ともお願いします!!
また、講談社様の「ヤングマガジンサード」でのコミカライズも決定いたしました。




