7. 町制三十周年記念式典
書架のあちこちに配置されたパネルには、いくつもの写真が飾られている。一階にあったような肖像写真ではなく、動的な記念写真のようなものが多い。
緑一面の棚田の様子。
メンコをして遊ぶ子供たち。
農民らしき男性の皺だらけの笑顔。
地域の風俗を示す写真の他に、大きな催しの記念写真などもあった。『桜ヶ丘会館落成記念式典』と書かれたパネルでは、階下で見た七堂十藏が、燕尾服に身を包んでリボンに鋏を入れている。ステッキを手にした七堂は恰幅がよく、ちょび髭まで生やしている。『いかにも』な政治家という感じだ。半面、少し傲慢そうに見えなくもない。
「あ、これ、ソーリじゃね?」
「そうね、十藏氏は大変顔が広く、建設大臣──のちの総理大臣ね──に働きかけ、桜ヶ丘会館の建設に成功したの。当時はこのように国の補助金制度を利用して公共施設を建設することが多くあったわ。おかげで、総理に限らず多くの大臣や著名人などが会館を訪れ、イベントなどが催されたの」
打てば響くように解説を返してくる。さすがの知識量だ。
「ハコモノ行政ってやつですよね。今じゃあ寂れて、盆踊りとかやってるけど」
秋山は頷いた。盆踊りは別の意味で面白かったが、今しか知らない秋山には著名人が訪れるような場所には思えない。
「十藏氏は経営者としても非常に優秀で、不採算事業を徹底的に廃して新規事業に投資するやり方で一財を築いたわ。彼が道なかばで斃れなければ、桜ヶ丘会館は今も賑わっていたかもしれないわね」
「道なかばで?」
突然飛び出した不穏な言葉に秋山は眉を上げた。
佐伯はつい、と別のパネルを指差した。卒業写真のように多くの人々が並んで映っている。これも桜ヶ丘会館の中で撮ったらしく、内装に見覚えがある。
添え書きに『町制三十周年記念式典』と書いてある通り、お祝いムードながらも厳かな雰囲気だ。
秋山はその写真に遼を見つけた。まだ少年の面影を感じさせる年若い彼は、重鎮が列席する式典にサングラスで参加しており、緊張した面持ちは明らかに浮いている。
「一九八九年十二月──ちょうどその町制三十周年記念式典の日、七堂十藏氏は自宅で亡くなったの。そこの、二階のテラスから転落してね」




