24時間正座生活
冷凍庫にアイス発見!
ちょっと高いやつだ!
扇風機の前で風を浴びながらしゃくしゃくと食べる。
冷たさが体に染みる…。
「あれ、俺のアイス食べたん誰?」
急いで口に放り込んだ。
「芽衣、俺のアイス食べたか?」
「食べてない」
「ほなつむぎか」
さっき食べたアイスが今頃私の体を固める。
これ、元気くんのだったんだ…。
バレたらどうなるんだろう。
正座で24時間とか!?
歩けなくなっちゃうよ!
「つむぎー、俺のアイス食べたか?」
「食べてないよ!」
間髪入れずに無罪を主張する。
「ほー、その片手に持っとる木の棒はなんや」
ハッとし右手に持っていた木の棒をばきりと折った。
「なんでや!それで証拠なくなるん思ったんか!」
「木の棒だったものだよ!」
怒ってる…。
背中から鬼が見えるよ。
木の棒だったものは元気くんに没収された。
「今正直に言うたら許したる」
許すってどういうことだろう。
元気くんの中の許すってもしかして、許さないってこと?
なら正直に言っても意味ないよ。
「…食べてない」
「そうか」
テレビの音だけの時間が流れる。
「げ、元気くん怒ってる?」
「怒ってへん」
怒ってるよ!
背中の鬼が金棒持ち始めちゃったよ!
急いで冷蔵庫へと走る。
とっておきのプリンが私にはあるんだ。
プリンを片手に元気くんの横に座る。
「あげる」
「なんでや」
そう言った元気くんの目は酷く冷たかった。
思わず目を逸らしてしまったが、ここで逃げては行けないと思いもう一度目を合わせる。
「ぷ、プリン4分の3あげる」
これなら全部あげたことにならないし、納得してくれるはず…。
「…ほないただくわ」
自分の分をお皿に移し、元気くんに渡す。
「スプーンないんやけど」
「あ、手でも食べれるプリンだって」
「手で食べるん推奨しとるプリンなんてあるん!?」
自分の分だけスプーン持ってきちゃった!
咄嗟にスプーンを背中に隠す。
「今何隠したん」
「手!」
「それはわかんねん!」
お皿を斜めに傾け口に流し込む。
飲むプリンとか今はあるし、珍しいことでもないか。
隣を見るとプリンが容器に張り付いているらしく、必死に上下に振っている。
はじめの頃はぶよんぶよんと弾力のあるものだったが、だんだんとバッシャバッシャと音を鳴らした。
「………」
飲み物?
「元気くんそれはシェイク?」
「…結果的にはそうかもしれん」
容器をかぱっと空け、口にゆっくりと流し込む。
軽く咀嚼し、ごくと飲み込む。
「ご馳走さん。思ったんと違ったけど美味しかったわ」
容器をゴミ箱に捨て、テレビを見始めた。
…あれ?どうして元気くんはプリンをシェイクしてたの?
まあいいか。
「元気くーん、芽衣、お散歩行こ!」
「ほな行くか」
「私は本読みたいからパス」
「やだやだやだやだ!芽衣も一緒に言ってくれなきゃやだ!」
芽衣の持つ本を手からひっぺがそうとすると、横から伸びた腕に静止された。
「今日は二人で行くで」
「3人の方が楽しいよ?」
「ちょお話したいことあんねん」
話したいことってなんだろう。
怪訝そうな顔をしながら承諾し、靴を履く。
今日はまだ時間が早いからまだ日が出ていた。
日傘をさし、元気くんを、中にいれた。
私より体の大きな元気くんに合わせようと腕を少しだけ伸ばす。
それを見ていたのか、ひょいと日傘をとりあげ元気くんが持ってくれた。
「話したいことってなに?」
やっぱりプリンにはスプーンという話だろうか。
「覚えてへんの?」
呆れたように見下ろす。
「あ、お皿でプリン食べたこと?あれは画期的だと思う…」
そう言い終わる前に私の目の前に、アイスを食べている人間の子供が通った。
あ。
元気くんから日傘を奪い取り、傘で防御を作る。
「プリンしか食べてない!」
「朝も昼もぎょうさん食べとったやん!」
傘をクルクルと回しながら、歩き続ける。
「話ってなにかなぁ!」
「アイスの話や!俺のアイス食べたやろ!」
「食べてない!」
24時間正座生活なんてしたくない!
「げ、元気くん昨日の夜寝ながら食べてたよ!」
「ベッドで寝たわ!ぐっすりや!」
………どう誤魔化せばいいんだろう。
「…芽衣が食べてた」
「芽衣はそんなくだらん嘘つかん」
くだらない?
「私の嘘そんなにくだらない!?」
「あ!今嘘言うた!」
「ひい!」
口が滑るとはこのことか!
「正直に言えば許したる!」
「元気くんの許すは許さないかもしれないから言わない!」
「何言うとんねん」
傘のせいで表情は見えないが、きっと背中の鬼が金棒回してるよ!
傘を回していないのが仇となった。
傘の先端を掴まれずるずると引きずられる。
「待って!私まだお散歩する!」
「家に帰って説教や!」
心臓がひゅんとした。
24時間正座生活がはじまっちゃう…!!
「は?正座?」
正座とあぐら。
今の私と元気くん。
「違うの?」
「なんの拷問やねん。そんなことやれなんて言わへんわ」
呆気にとられた。
私は何に怯えていたのだろう。
「食べたの、つむぎやんな」
「うん」
「ごめんなさいは」
「食べちゃってごめんなさい」
はぁと深いため息をつく。
「それが聞けたらええねん」
え?いいの?
「怒ってたよね。背中に鬼いたよね?」
「謝ってくれへんから怒っとったんよ」
じゃあつまり最初っから謝ってれば…。
「最初から言ってよ元気くんのばか!」
「なんで逆ギレすんねん!」
「芽衣も1口食べたもん!」
元気くんが目を丸く芽衣の方へ視線を移す。
「謝ればいいんだろ。悪い」
「もっとちゃんと謝れぇ!」
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