年中無休。
「ほら、そんなにグダグダしてないの!宿題やりなさい!」
今日から夏季休暇に入ったのだが……
「仕事もないんだ、ぐでらせてよ。」
「ダメよ、ほら勉強しなさい。」
「あー……宿題のチップ部室に置きっぱなしだ。こりゃ出来ないな。」
「取ってきなさい。10秒で戻ってきて。」
ホント、しっかりしてるなラウラは。
どっか喫茶店でも行こっかな。
「寄り道しない事。コーヒー飲みたいなら淹れてあげるから。分かった?」
「……」
「?何で笑ってるのかしら。」
「ラウラのそういう所好きだなって思って。じゃ取ってくるよ!」
シュンッ
「もう……ケーキでも作ろうかしら……」
……
「さてチップチップ……ん?」
部室の外に誰かいる。
この気配は……
ガチャッ
「マクシル?どうした?」
「ハル……」
「みんな里帰りしてる筈だろ?確かマクシルも……」
「……」
マクシルは困った様な、少し心を閉ざした様な雰囲気を出していた。
まるで出会った頃の……
もしかして……
「……あのさ、俺の家に来る?」
「……」
何も言わずにマクシルは頷いた。
……
……
シュンッ
「遅い!何やってたの……あら貴女は……部屋でゆっくりしてなさい。後でお茶とお菓子持ってくから。」
何だろう、マクシルに対して妙に優しい。
「ほら、ここが俺の部屋。あんまり広くないんだけどな。」
「……ハルの匂いがいっぱい。」
「自分じゃよく分かんないけどな。」
少しだけマクシルが元気になった。
でもどこかいつもと違う。
「あのさ──」
いや、これはフェアじゃないな。
「──行きたい所があるんだけど一緒にどう?」
「……行く。」
コンコン
「入るわよ?……はい、これ。」
「何これ?水筒?」
「その中にコーヒー入ってるから。どこか出かけるんでしょ?お昼までには帰ってきなさい。いいわね?」
「……」
「?どうしたの?」
「……いや、何でもないよ。ありがとう、ちょっと行ってくるよ。おいで、マクシル。」
シュンッ
「さて、ケーキ作らないと。」
……
……
「サクラ、地図出してくれ。」
『はーい、現在地は第3地域です。目的地はもっと東の方ですね。』
「えっ?なんで分かるの!?」
『私を誰だとお思いですか?心のオアシス、ピュアハートサクラ!』
「答えになってないぞ、それ。」
『さっ、コチラですよ!GOGO!』
……
……
「この辺か……全然分からんな。」
そこはとある住宅地だった。
「ハル、ここはどこ?」
「……俺はこの世界とは少しだけ違った世界から来たんだ。同じ地球なんだけど、文明人なんかいないし、その代わりこんなに文明は発達していない世界。俺はそこでどこにでもいる普通の男だった。ここは……俺がいた世界で俺が住んでいた場所。」
「違った世界……」
小さな公園があったのでそこのベンチに座った。
「俺は小さな頃親を亡くして、爺ちゃん婆ちゃんに育てられたんだ。勉強はそこそこで……運動は得意だったな。音楽も好きだし、花も鳥も……自然が好きだったな。サクラに選ばれて、ある日こっちの世界にやってきたんだ。その時、この体に生まれ変わった。俺の体は作られた物、アンドロイドなんだ。」
言い終わるとマクシルが抱きついてきた。
鼻を啜っている音が聞こえる、泣いているのかな。
マクシルの背中を優しく擦る。
そのままどれくらい時間が経っただろう。
マクシルから話し始めてきた。
「ハルは優しい……私の事を聞く前に自分の大切な秘密を私に話してくれた。ハルの事が知れて嬉しかった。」
「うん……」
「私は……初めから目が見えないように遺伝子操作されたの。目が見えない事によってイクスがどうなるか、ただそれだけの為に作られた実験体。名前も負の力が強い名前だから、私が好かれる理由なんてなかった。ずっと一人。テレパシー能力が高すぎて相手の思考が嫌でも分かるから、一人でもいいやって思ってた。ずっと生きる理由が無かった……ハルに会うまで。」
「マクシル……」
「ハルが学校に来た時、感じたことのない気を感じた。とてつもなく大きくて優しくて澄み切っていた……私は期待した。諦めてた人生だけど、この人ならもしかして。そう思った。ハルは私の全てを肯定してくれた。目が見えない事も、名前も、力も……ハル、ハルが私にとって全て。ハルといれる空間だけが私の居場所。夏季休暇で管理研究所から帰宅命令が来たけど行きたくない。またあそこに戻りたくない。ハルといたい……もしかしたらハルが来てくれるかもしれないって思って部室の前にいた。そしたら来てくれた。ハル……」
小さな体が震えていた。
何か言葉を、そう思ったけど……
言葉より先に体が動いた。
「ハル……苦しい……」
「ごめん……でももうちょっとだけ……」
「うん……ハル……」
「……もう俺の所にずっといてくれ。俺が研究所に話つけるから。一緒に帰って一緒にご飯食べて。小さいけどあのベッドで一緒に寝よう。ははっ、考えただけで楽しいな!」
「……ふふ、うん。ハルとずっと一緒にいたい。」
マクシルが頬を寄せてくる。
その全てが愛おしい。
「よしよし……一緒にコーヒー飲むか?」
「飲む。ハルの口から欲しい。」
「口?……あぁそういう事か……口!?」
「お願い。」
「……じゃあ一回だけな。」
口にコーヒーを含みマクシルにキスをする。
そのまま口を少し開けマクシルに移す。
が、マクシルが舌を出してくる。
「マクシル?ちょっと……」
「恋人ってこういうキスをするんでしょ?なんだか……幸せな気持ち。」
「俺も幸せだよ。ちょっと苦いけどな。」
「ふふ、今度はジュースでやる。」
「よし、じゃ帰るか!」
「……ハルのいた所はどの辺り?」
「うーん、丁度正面の方だな。」
「……ハルのお家、バイバイ。」
そう言ってマクシルはその方角に手を振った。
……
……
シュンッ
「ただいまー。」
なんだかいい匂いがする。
「あらお帰りなさい。その子はもう大丈夫そうね。」
「あぁ、今日から俺の部屋に住むから。宜しくな。」
「キミね、家主である僕に聞くとかしないの?」
「いいでしょ?ダメ?」
「いいけどね。」
「宜しくお願いします。」
マクシルが頭を下げる。
「あなたが拾ってきたんだからちゃんと面倒見なさいよ?」
「捨て犬みたいな言い方だな。」
「ワン。」
「よしよし。」
「……」
「ほら、ラウラもこっち来なよ。」
「ケーキがあるニャン……」
「よしよし、一緒に食べような。」
『犬に猫。捻りがありませんね。私はリスでいってみましょうか!』
「リスってどんな鳴き声だ?」
『ホロ……ホロ……』
「それ発情時のリスじゃない。」
『煩いですね、この発情猫!アナタはその辺の柱で腰でも振ってればいいんです!』
「なっ……貴女だって発情してるじゃない!」
『当たり前です。四六時中!年中無休!発情中!食べちゃいたい!入れたい!出したい!中に!ふっふー♪』
「ドン引きね……」
「でもこれくらい素直なの大事。私達には無い。」
「いや、自重も大切だぞ?」
『さぁ!ハル様の裸体にケーキを乗せてペロペロしましょう!』
「いいわね。」
「やる。」
「あのなぁ……」




