好み。
「もっと自然に出来ないの?」
「うっ、うるさいわね!仕方ないでしょ……こんな服着たことないんだから……」
「でも───」
────────
────────
ラウラからデートの誘い。
普段ならそういった事をラウラは言わない。
何か理由があるのかな?
「ほら、着いたぞ。」
この地区で一番の繁華街、文明人の巣窟であるセンターにやってきた。
文明人憎しで生きてきたラウラがここを選んだのは意外だった。
「あっ、ハルるん!イクス見たよー!圧倒的だったね!今日も仕事?お連れ様も通っていいよ!」
「ありがと♪」
検問も今では顔パスで通れるようになった。
こんなガバガバなセキュリティでいいのかな?
「うーん、相変わらず賑やかな街だな。ラウラは初めてなんだろ?」
ラウラは辺りをキョロキョロしてどこかよそよそしい。
「なんだよ、ここに来たかったんだろ?」
「……初めて来るのはアナタとが良かったのよ。それにアナタと来ればここも違った目線で見れるかと思って。」
「……ははっ。」
「なっ、何がおかしいのよ?」
「固いなーラウラは。」
「仕方ないでしょ……こういう生き方しか知らないのよ……」
「……じゃあ俺に教えてくれよ。ラウラの生き方をさ。」
「えっ?いいわよ……私はアナタみたいに華が無いし……それに……」
「それに?」
「……せっかくのデートがつまらなくなっちゃうわ……」
「……今俺が手を引っ張ってエスコートするのは簡単だけどさ、それって俺に合わせてるだけだろ?俺もラウラの事知りたいし……彼女だろ?教えてくれよ、ラウラの事。」
「えっ……?その……えっと……」
『策士ですね、ハル様は。』
「本音だよ、本音。」
「じゃあ……お茶でもいいかしら?」
「うん、手繋ぐ?」
「……うん。」
二人で手を繋いで歩く。
帽子と眼鏡でなんとなく変装してみた。
少しは目立たなくなっただろうか。
「おっ、あそこなんかいいんじゃない?」
誰が見てもお洒落な喫茶店。
店裏が大きな庭になっていてそこで飲めるようだ。
しかしラウラはそこを無視した。
「ここにしましょう。」
少し路地裏に入った、景色もへったくれもない店。
「お、おう……」
これやってんのかな?
ドアを覗くとどうやら営業しているみたいだけど……
「何してるの?入るわよ。」
半ばラウラに引っ張られる形で店内に入った。
当たり前だが客はいない。
いや、お店なのに当たり前に客がいないのはどうなの?
「……」
「……」
「静かだな……」
「そうね。」
「……」
「……」
向かいの建物も合わせると四方を囲まれているので光が殆ど入ってこない。
恋を語るでもなく。
熱く議論するわけでもなく。
ただ、コーヒーを飲む。
それだけ。
しかし静かだ。
周りの音が聞こえない程に。
ふとラウラの方を見る。
ラウラもこちらの視線に気が付いた。
言葉は発しない。
ただ彼女は微笑む。
それを見て俺も微笑んだ。
そう、それだけ。
……
……
一時間ほど経った。
緩やかな時の流れ、こういうのも悪くない。
「そろそろ行くか?」
「そうね。」
再び街をブラブラする。
窓に写った俺とラウラの姿を見てふと足を止めてしまう。
「どうしたの?背伸びなんかして。」
「んー、あと20センチくらい大きくならないかなーって思って。」
「ふふっ、アナタにもそんなコンプレックスがあるのね。」
「ちょっとな。見栄えがいいし。ラウラはプロポーション良くていいな。」
背は高く脚は長い。胸は大きいしそれでいて身体は引き締まっている。
「まぁ俺だってあと三年もすれば……」
「大丈夫よ、アナタの魅力は見た目だけじゃないから。」
「そうかな?」
「ほらっ、次行くわよ!」
少しいたずらっぽく微笑みながらラウラが俺の手を引っ張ってきた。
ラウラがあまり好みそうもない、女性向けのショップ。
「どれが似合うのかしら?こういうの詳しくないのよね。アナタ、モデルやってるんでしょ?選んで頂戴。」
「えっ?うーん……」
本当はこういう感じが似合うと思うけど……ラウラに合わせるならもっと地味……いや、落ち着いた感じの方がいいのかな。
「私の事はいいから、アナタが似合うって思った物がいいの。分かった?」
エスパーかよ……エスパーか。
「じゃあこれとか……こっちもいいな。」
「分かったわ。店の人、この2つを買うわ。」
「ちょっと……着なくてもいいのか?」
「アナタが選んでくれたんですから、それで充分よ。」
「……せっかくだから、それ着てくれないかな?」
────────
────────
「でも……凄い良いよ、可愛いし綺麗だし。」
「そ、そうかしら……」
照れながらもラウラは嬉しそうにしてくれる。
「いいなー、やっぱ元が良いからな。」
「ふふっ、アナタ好み?」
ラウラは色っぽい顔で微笑む。
それを見るとつい照れてしまう。
「でも……これは俺の趣味だから──」
「いいのよ、アナタの趣味で。あの地味な喫茶店も私、華やかな服も私。それに少し前までの私はもうこの世界にはいないんですから。」
「どういう事?」
「……文明人を滅ぼす、それが私の全てだった。誰かさんに出会ってからそれが少しずつ崩れていったわ。お人好しで我儘で自分勝手、言ってる事も目茶苦茶。頭の中がお花畑かと思える程の平和主義者。」
「そんなに言わなくても……」
「……アナタと一緒にいるとこっちまでお人好しになってしまう。自分が自分じゃなくなっていったわ。」
「……ごめんな、俺のせいで。」
「ふふっ、いいのよ。私は……アナタの事が好きだから。好きな人の……アナタ色に染まっていく。考え方も感じ方も、世界の見え方も。私には少し眩しすぎる世界だけど……アナタとなら──」
少し震えながらラウラは目を閉じた。
それを見て優しくキスをした。
「見せてやるよ、お花畑が作る世界を。」
「もう……冗談よ。」
「俺、女だぞ?後悔しないか?」
「後悔したわよ。そんなもの、もうとっくに置いてきたから。」
ラウラから俺にキスをする。
「アナタとなら、幾つにもなっても幸せよ。」
「ラウラ……」
『もー!だからヤダったんです!ハル様は私の物!こんな娘にやりませんよ!』
「あら、あなたいたの?」
『キーー白々しい!私とハル様は一心同体!常に一緒です!』
「それにしては存在感無かったんじゃ?」
『ハル様の為!そして貴女に気を使っていたんです!』
「あらそう。」
『あらそう!?荒そう?!争う?!!』
「落ち着けサクラ……」
『私だって我慢してるんです!なのに!』
「ふっ、子供ね。貴女本当にオーベイ?紛い物じゃないかしら。」
『キーーー!ハル様!許可します!ハルちゃんブラストでこの娘を跡形もなく消して下さい!さあ!早く!』
「落ち着けって、な?」
『えーん……私だって……キスしたいもん。抱きしめて、手を繋いで……一緒にアイス食べて……私だって……ハル様に一番近いのに……』
「サクラ……この戦いを終わらせてどうしたいんだっけ?」
『竿付き美少女アンドロイドに転生してハル様の処女を貰うんだもん……』
「……彼女本当にオーベイなの……?」
「それまでは俺の初めてを守っておくから。な?お前にやるから、俺の大切なものを。だからそれまでは我慢させちゃうけど……いいかな?」
『…………良き。』
「ここまで突き抜けてると逆に凄いわね。」
『聞いたかこの猫女!ハル様の処女は私の物!!ふっふー♪』
「あら、そんなの口約束でしょ?私が奪ってもいいのよね?」
『ハル様ー!この女が嫌な事言うー!』
「頼むから仲良くやってくれ……」




