穴。
「ごめん待った?」
「ハルちゃん!ううん、待ってないよ。」
久々にルイとデート。
忙しくてなかなか時間が取れなかった。
「ごめんな、最近忙しくて……」
「CMとかいっぱい出てるもんね。疲れてない?大丈夫?」
「ルイの顔見たら吹っ飛んだよ。」
「もう……ありがと。」
「あっ。」
ふと見た水溜にある物が落ちていた。
「ん?どうしたの?」
「……ふっふっ、よし。」
「花の綿毛?」
「あぁ、あのままじゃ咲けないし。今日はどこに行きたい?」
「……」
「ルイ?」
「……一緒にいれるならどこでもいいかな。」
嬉しい事を言ってくれる。
……俺も同じだ。
「じゃあ──」
言い終わる前に見知らぬ人から声を掛けられる。
「サイン貰ってもいいですか?あと写真も!」
CM効果か、どうなのか。
「いいですよ。」
ニコニコしながら応じる。
我ながら、結構慣れたものだ。
一人がくるとそれに気付き人が群がり始める。
俺とルイはあっという間に大勢の人に囲まれた。
「ハルちゃん……」
こりゃいかんな。
かといって蔑ろにするわけにはいかない。
「はい!じゃあサインするからどんどん渡して。写真撮りたい人はちょっと待っててね。」
高速戦闘モードでガシガシとサインをする。
まさに一瞬の出来事。
「サクラ!サクラが写真撮って、撮った人の端末にその場で送っといてくれ。」
『ガッテン承知!』
離れ業で写真撮影もチャッチャとこなす。
「よし、完了!」
「凄い……」
その後すぐに写真をお願いされた。
第2波が来そうだったので急いで路地裏に入る。
「ハルちゃん?」
「ちょっと避難しよ。」
シュンッ
……
……
シュンッ
「あれ?ここって……私の部屋の入口?」
「ちょっとゆっくり……ダメ?」
「ううん、嬉しい。入って入って!」
久々のルイの部屋。
やっぱり良い匂いがする。
ルイに押し倒された場所を見て少し照れてしまう。
「?ハルちゃんどうしたの?」
「いや、ここでルイに押し倒されてそのままキスされたのを思い出して……」
「もう……恥ずかしいよ……」
『甘々ですね、お二人さん。』
「そ、そうか?」
『まぁ今日はハル様久々の休日ですし、私はお邪魔しないようにハル様の奥の奥に引き篭もってます……しかしこれだけは!ハル様の体全てを知っているのは私だけ!穴という穴!秘部!全部!以上!』
そう言い残しサクラは俺の中に引き篭もった。
「何だったんだ……まったく。」
「ハルちゃんの事が大好きなんだね。」
サクラの計らい?で二人だけの空間になった。
「二人っきりだね。ギュってして欲しい……」
ルイが甘えた声でねだってくる。
答えるように抱きしめる。
「ハルちゃんの匂い……ハルちゃんだ……」
顔を擦り寄せながら嬉しそうな顔をしている。
「よしよし、ハルちゃんだよ。」
「へへっ……ハルちゃん……」
可愛いなぁ……
見てるだけで癒やされる。
「後ろからして欲しい。」
そう言われ後ろから抱きしめる。
「今日はずっとこれでいたいな……」
「この格好で?」
「ダメ?」
「いやルイがいいなら……」
後から抱きついたまま座る。
番組を見るのもこの格好だ。
ルイが見たがっていた恋愛物の映画を見る。
お菓子を食べるにも、手を洗うにも同じ格好。
「あっ、またハルちゃん出てきたよ?凄いなぁ……有名人だね。」
CMを見てルイが言う。
「なんだか遠くに行っちゃったみたい……」
「ここにいるよ。ほら、つるペタを感じるでしょ?」
「ふふっ、好き。どんなに有名になっても……私は本当のハルちゃんを知ってるから……ねっ♪」
本当の俺……
俺はアンドロイドだ。
俺の魂は男、平行世界から来た。
この世界の根底を変えるために俺は戦っている。
マクシルはなんとなく知っている。
ラウラも同じだ。
じゃあルイは?
ルイ……
「──ん?ハルちゃん?」
「えっ?あ、あぁごめん……」
「……私ね、最近夢を見るの。」
「夢?」
「うん、指輪を付けてからかな……知らない場所で知らない言葉を話す……男の人の夢。」
自分の鼓動が早くなるのを感じる。
ルイは静かに語りだした。




