天下。
ヤマト地区最大の学校。
何をやっても注目を集める訳だが、この文化祭も一つの目玉である。
特に文明人クラスが運営する店はプロの料理人を呼んだり有名なパフォーマーやアーティストを呼んだり、金に物を言わせて豪華になっているらしい。
満足度で一般人クラスが上位に来る事は長い歴史の中でも無い。
俺のいた世界の文化祭とは規模もレベルも段違いだが、学生の催し物に負ける訳にはいかない。
こんな所で負けてちゃ世界なんかひっくり返せないからな。
言わば前哨戦みたいなものだ。
「張り切ってる所悪いんだけど、勝算はあるのかしら?」
「お、会長。天下のハルちゃんが負ける訳にはいかないだろ?会長は何するの?」
「私はパトロールよ。何事もなく無事終わらせる事が仕事。」
「へー、じゃあ手伝ってって言ったら手伝ってくれる?」
「どうしてそうなるのよ……」
もしもの時の為にも会長は欠かせない。
身長が足りないがやってみるか。
会長を壁まで追いやって急接近する。
壁に手を当てるが、身長が足りないので下から少し見上げる形になる。
「いいから来いよ。後でお礼するからさ。」
顔と顔がつく寸前の距離。
「えっ、ちょっと……急になによ……」
「ダメ?」
「その……後で来るわよ……」
よし、これでいける。
ルイがいれば完璧だったけどそんな贅沢は言えない。
会長は照れくさそうにしながら仕事に戻っていった。
「ハルさん、もうすぐ客が来るっす!自分窯から離れられないんでまた後でっす。」
予想以上の客の量なので小屋裏では急ピッチで椅子と机が作られている。
「しかしスゴい人だな……あれ、みんなここに来るのかな。」
「ハル、あの数じゃ捌けない。」
「ちょっとな……どうするか……」
あと3分程……
捌けませんでした、じゃ話にならないからな……
「助っ人参上!ハル君大丈夫?」
「姉さん!来てくれたんですか?」
「朝撮った写真アップしたら反響大きすぎて……心配になって来たんだけど……ハル君、私の店からイスと机持ってきても良いよ。」
「助かります、じゃ──」
シュンッ
「さーていっちょ頑張りますか!」
シュンッ
「よし、マクシルは中で準備頼む。」
「わかった。」
小屋の周りにイスと机を急いで置く。
元々林の中にある小屋なので外に置いてもそれなりの雰囲気になる。
1番客が到着する。
といっても後ろにもう何十人もの人が見えるが……
「いらっしゃいませ、代表のハルです。今日は──」
「キャー本物だ!可愛いー!写真撮っても良いですか?」
凄いな……
「良いですよ、よろしければ写真と一緒にお飲み物は如何ですか?」
写真を撮りつつ接客をする。
この数捌くのか……自信ないな……
……
写真、握手、サイン。
とにかくこの3つが多い。
入場者は事前に端末内に3ポイントを持ち、好きな所にポイントをあげられるようになっている。
俺目当てで来てくれた人はみんな1人3ポイントくれる。
それ以外の人に如何にして満足してもらうかだ。
「お兄さん、これちょうだい。」
「少々お待ち下さい。」
「ねぇねぇ、お兄さんって一般人じゃないでしょ?そのネームプレート見れば分かるけど……どうして一般人の所で働いてるの?」
「……そうですね、代表のハルさんがいるからですかね。」
「へー、やっぱり可愛いから?」
「それもありますけど……我々は友達ですから。友達は助け合うのが当然かと……なんて、ハルさんの受け売りですけどね。」
「……素敵ね、ごめんなさい邪魔しちゃって。」
「いえ、今お持ちしますので。」
みんな頑張ってるな。
あんなに良い子になって……
ハルちゃん感動しちゃう。
それからもひっきりなしに客が来る。
パンク寸前だがみんな何とか持ちこたえている。
そこへ一人の男性がやってきた。
「ハルチャン!ハンジョウしてるネ!」
「ジョロさん!来てくれたの?」
以前公園で撮ってもらった片言カメラマン、あれから仲良くなって俺の専属カメラマンをしてくれている。
「ハルチャン今日は一段と可愛ネ!写真撮るヨ!」
急遽ジョロさんの写真撮影が始まった。
やはりプロがやるとノリが違う。
それに釣られて人がまた来る。
「ハルさん、お昼時点での結果が出ましたよ!」
「どうなってる?」
「今のところ2位です!これイケますよ!」
「1位はどこ?」
「ヴィンスター所属のレストランです!」
「あそこすごいっすよ、接客もシェフも全部プロがやってるっすからね。」
「ゲス、窯はいいの?」
「ちょっと休憩っす!」
「ゲス、ピザ焼く。来る。」
「ちょーっ───」
相変わらずの力でマクシルはゲスを引きずっていった。
「……午後はあれをやるしかないな。」
「あれってなんですか?」
「ふっふっ、ヒ・ミ・ツ。」
「……可愛いですね。」




