記憶。
生徒会長に実績を作れと言われて1週間が経った。
と言われてもお茶会に実績を求めるのもどうかと思うが。
端末に生徒会室への呼び出しが来ていたので俺一人で行く事にした。
「中等部2年ハル、入りまーす。」
部屋に入るが中には会長一人しかいない。
この人怖いしなんか気まずいな。
「お呼びでしょうか会長。」
「貴女ね、自分が何をしたか分かってるの?」
「はて?」
「はぁ……隣の校舎のグラウンドにクレーターを作ったのは誰だって言ってるの!」
「あぁ、あれはまぁ……青春の1ページといいますか──」
「貴女があっちで暴れると私たち一般の生徒が迷惑するの、分かる?分かりなさい!」
怖ぇー……
「まぁそんなにカリカリしないで、ね?」
「……貴女腕がちょっと立つからっていい気にならないでよ?」
「そんなつもりは……」
「いい?もう二度とあっちで暴れない事、分かった!?」
「はい!」
「はぁ……貴女といると疲れるわ……」
「すみません……ではもうよろしいですかね?」
「まだよ、貴女生徒会に入りなさい。これは命令よ。」
「えー……イヤ。」
「イヤじゃない!そんな力余らせてても仕方ないでしょ?学校の為、生徒の為に働きなさい。」
「……私だって私利私欲で動いてる訳じゃないんです。あれは友達の為、分かります?」
「文明人のお友達ね、笑わせるわ。」
「どこがおかしいんです?」
「貴女、本気で彼らと仲良くなれるとでも思ってるの?」
「分かりませんがゲスは私の友達ですよ。」
「まぁ貴女には関係ない話だけど色々とあるのよ。色々ね。」
勿体ぶって話しているけど、この人は何を知っているんだろう。
ちょっと探ってみるか。
「私だって何にも知らない訳じゃないですよ?長い歴史で何があったのか。」
「……どういう事かしら。一般人は疎か文明人も知らない話だと思うんだけど。」
……っていうとやっぱアレかな。
「まぁこんな所で話す内容でもないので……」
そう言いながら俺は2つの月を指差した。
「……この空間に誰もアクセス出来ないようにしたわ。私の特技の一つなの。貴女……どこまで知ってるの?というか何者?」
「色々と託された身でね……逆に聞きますけど会長は?」
さぁ、どう答えるかな。
「……私の祖父が体験した事なのよ。兵士として、ね。」
……ヒロとは逆のパターンか。
「帰ってきて、祖父は精神的におかしくなっていった。それでも父が産まれる時、プロテクトを掛ける前の父にある仕掛けを施したの。」
「仕掛け?」
「父が10になる時、祖父が見た光景を父の記憶に重ねる……常に盗聴され、監視下に置かれていた祖父が出来る唯一の行動だった。その後祖父は政府に殺された。10になった父は全てを知り、その後研究員として政府に潜り込んだ。」
研究員……って事はもしかしてヒロと被ってるのかな。
「そこで父は重要な役につく……アンドロイドって知ってる?」
「世界で数台しかないってやつでしょ?」
「そう、そのプロトタイプを完成させた父はある計画を企てた。」
「……強奪。」
「そこまで知ってるのね。父は人類の叡智であるプロトタイプを数人の仲間と共に盗んだ。リーダー格の仲間に全てを託して父は逃げてきた。10年ほど身を隠してたけど私が産まれてすぐに殺された。」
「もしかして会長も10になる時に……?」
「そう、祖父から父、そして私に受け継がれているの……私は許せない、祖父を、父を、数え切れない程の人間を殺した彼等を。」
「……」
「父が私に記憶を残した時、1つ付け加えた事があるの。私に向けたメッセージ。」
「メッセージ?」
「所で貴女、この言葉を知ってるかしら。」
「?」
「────。────。────。」
聞いたことのない言葉だ、俺には分からない。
「ちょっと分かんないですね。」
「……そう。」
言い終わった彼女はとても悲しい顔をしていた。
一体どんな意味があったのだろう。
「もう遮断空間はいらないわね……あら、連絡……えっ?……ウソでしょ……貴女、今日はもういいわ。また今度詳しく話しましょう。」
「そうですね、聞きっぱなしじゃ悪いんで。」
「早く帰りなさい。」
「えー、同好会の件は……」
「好きになさい。ほら出てって。」
「失礼しましたー。」
同好会はよかったけど……
なんだろう、釈然としないというか。
違和感があるというか。
「なぁサクラ、会長なんて言ってたのかな。」
『録音しておきました。ハル様、翻訳を一時解除します。』
「そうか、自動で翻訳されてたのか……」
“────。────。────。”
「?これって……」
……
……
「あっハルちゃん、どうだった?」
「ルイ……同好会、継続可能だって。」
「良かったー、私達の場所無くならないですむね!」
「あぁそうだな……」
「ハルちゃん、どうしたの?」
「ちょっと考え後があってさ。」
「……私に何か出来る事、あるかな?」
少し困った様に、でも真剣に俺の方を見てルイが言った。
「いや大丈夫、俺1人で──」
「……私達の直感って結構あてになるみたいで、それを仕事にしている人もいるの。それで、今悪い予感がして……ハルちゃんよく無茶しちゃうから……」
……そうか、俺が抱いている違和感。
これは胸騒ぎってやつだ。
「そうだな、俺も何か悪い予感がする。だから行かないと。」
「うん……気をつけてね。」
……
……
……
「ハァハァ……この先ね……えっ?どういう事……」
目の前に広がる夥しい死体の数々。
血塗られたその場所はつい先程まで反乱軍の拠点だった場所である。
「ウソ……ウソよ!皆んな起きて、ねぇ……何があったの……」
「っ……ラウラか……?」
「ネス!大丈夫?何があったの?!」
「裏切者だ……奴ら……武器をも──」
弱りきった彼の頭が光に照らされる。
と同時に彼の頭は弾け飛びラウラは彼の血を浴びた。
「ネス!!ウソよ……全部……ウソでしょ……」
「残念だが事実だ。貴様等反乱軍もこれで終わりだな。」
「こんな所で……お父様、お祖父様……」
死の光を感じ目を瞑った彼女の視界が暗くなった。
「!……誰?」
目の前の人物は暴漢の光を全て防壁で防ぐ。
「探しちゃったよ、会長。」
「あ、貴女は……」
「さっきの返事、返してなかったからさ。」
「えっ……」
[【───ラウラ。君がこの記憶を見る頃には僕はもうこの世にいないだろう……君には僕と父の希望を託す。力をつけて耐えるんだ。僕の仲間が、アイツが必ずやってくれる。この世界の希望の光。異世界の言葉を話し人智を超えた力を持つその光を……僕の異世界の知識をこの記憶と共にラウラに受け継ぐ。そしてこう聞けば分かるだろう───】
【──録音しておきました。ハル様、翻訳を一時解除します──“長い間、お待ちしていました。アナタは人類希望の光。お名前をお教え下さい“──】]
『全ての翻訳を一時解除します。』
「──待たせたな、俺の名前はハル。俺が……この世界をひっくり返してやる!」




