探究心。
煙と共に立ち込める肉の匂い。
匂いだけでご飯が食べれる、なんて誰かが言ってたけど強ち間違いじゃないかもしれない。
「ほら、ルイ。焼けたよ。」
「ありがとう、でもハルちゃんの分が……」
「いいよ、俺は最後で。」
職場では1番下っ端だったのでこういった事はいつも俺の仕事だった。
「しかし食ってのは変わらないもんなのかな。」
『かつてはそうではありませんでしたが……人間にとっての大切な欲を規制すると反乱しかねないと考えた文明人が食の自由化を掲げた為、多種多様な食を楽しむ文化が出来ました。食への探究心、というものはどの世界でも変わりはないものですね。』
「ふーん、食う寝るやるってのは大事だもんな。」
そんなこんなで自分の肉が焼けてきた。
「よーし、じゃあ俺も食べよっかな。」
その時だった。俺の後ろに感じる気配。
なんとなく分かる。これはアイツだ。
振り向かずに俺から声を出した。
「よう、ゲス。なんのようだ?」
「……」
ゲスは無言のまま俺の隣に座ってきた。
「なんだよ、なんか言えよ気持ち悪い……」
しかしゲスは答えずに、まだ焼いていない肉を焼き始めた。
「……」
「……」
肉の焼ける音。
焼けた肉を俺とルイに配っていく。
「……何、この展開は?とりあえず食べちゃうよ?」
ゲスが焼いてくれた肉を食べながら考える。
一体何をしに来たのか。
何を考えているのか。
すると、ゲスから口を開いてきた。
「……ルイさん、この前はすまなかった。」
「えっ……?」
ルイが戸惑っている。
いや、俺もだ。まさかこいつの口から謝罪の言葉が出てくるとは思わなかった。
「許されたい訳じゃない、ただ謝りたかっただけだ。すまなかった。」
ゲスが頭を下げる。
「……私は何事もなかったから……その、顔をあげて?」
ゲスは顔を下げたまま話し続けた。
「俺は……生まれたときから常に上にいる人間だった。それが当たり前だしそうあるべきだと思っていた。だから俺は強いと思っていた。弱者は強者に食われるべき……だけど俺は負けた。なのに食われなかった。ただ俺の心に残ったのは圧倒的な敗北感……」
「……」
「強さこそ、俺の立場こそ正義だと思っていたんだ。じゃあ負けた俺は何だ?間違っていたのか?……そうなんだよな、多分俺が、いや俺達は間違っているんだ。」
「ゲス……」
「ハルさん、俺は今日確信した。アンタに付いていきたい。アンタの強く美しい姿に惚れた。人を尊敬するなんて初めてなんだ……」
「……だってさ、ルイ。どうする?」
「えっ、私?私は……ハルちゃんがいいなら……」
「だとさ、ルイが優しくて良かったな。今日から友達だ、仲良くな。」
「ハルさん、ルイさん……」
ゲスが鼻水を垂らしながら泣いている。
「泣くな、気持ち悪い。ほら、お前の話が長いから肉固くなっちゃったじゃんか。」
「今お持ちします!おい店の者!」
そう叫びながら厨房へ走っていった。
「あのバカ……」
「私……ゲス君の気持ちなんとく分かるなぁ。」
「そうなの?」
「うん、なんとなくね。ハルちゃん、色々なものを壊してくから……」
「えっ?なに俺そんな暴れ者?!」
「違う違う!物とかじゃなくて……」
「ハルさん!この店にある肉全部持ってきました!」
「バカっ、そんなに食えるか!」
なんやかんやで文明人の友達が出来ました。




