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機械じかけの私とお父さん  作者: ブラックサレナ
姉妹1 宗教好き
13/40

⑫ 初めての「要塞戦」3


「こ、ここで… 待機していれば良いの?」


先の初陣宣言からしばらくして

私はこの要塞で一番広い大広間の城壁の上に立っていた。


そしてその下には配下の魔導師100人と、それに加わった要塞の城兵達

城壁の周囲には弓兵が立ち並び

私の私兵ほど高位ではないが要塞の魔導師部隊もそれに続く。


「はい、姫様 ここで待っていれば勝利確定です」

「族の実力は確かなようですが

 ですがいくらなんでもこの数には族も敵わないでしょう」


「そ、そう… なら良いんだけど…」


私が居る要塞はこの地を滅ぼした故に無用の長物と化しているが

本来ならこの渓谷の地形を利用した非常に堅固な作りの要塞なのだそうだ。


周囲の地形に合わせて要塞はフラスコのような形に建築されており

細い路地を抜けて一直線に侵攻してきた敵の部隊をこの広場に追い込み

魔法で一挙に焼き尽くす。


そういうコンセプトの元に作られた要塞だと聞いた。


つまり敵は今現在フラスコの細い部分を進み

本丸であるここに向かってきているのだ。


私は正面にある大きな鉄城門の先を見据える。

そしてその族と対峙したという城兵に尋ねた。


どうやら敵は低位の魔法及び弓矢を跳ね返す鎧を持ち

その旺盛な腕力で要塞入り口の門を吹き飛ばしたのだとか…


「明らかに何らかの魔法で強化されていますね」


私の考えを見透かしたように姉妹が言う。

そうだ。本当であれば人の身でそのような事出来る訳が無い


ならばやはり何らかの力が加わり強化された魔法兵。

そう考えるのが妥当か。


我が帝国以外で魔法を巧みに操る国家は今の所存在しないが

急速な我が帝国の侵攻により他国も焦っている。


ならば我等と違う理論や方法で事態を打開しようとする勢力が居るのは当然の事


(ならば族もただの跳ねっ返りの狂人ではなく、何らからの意思を持った…)


思考を巡らせる。いやそれは後だ。今はまず目の前の事に集中しなくては


「よ、要塞内の非戦闘員は、全て奥に避難させたのよね?」

「はい勿論」「そ、そう……」


私は姉妹に尋ねる。だがそれはこれからの戦いには関係ない質問


(やはり私は未熟だ……) 


「姫様、ここでは姫様が最高責任者」 「我等の功績は全て姫様の物」



 「「ならばここで族を打ち払い、主様に認められる武功を」」



 またぴったりと揃った 本当… 彼女達は心強い…


「たった一人を討ち果たすくらいで褒めてもらえるかな?」

「敵にもよりますねーー」 「でも多少脚色してもばれやしませんよ」


姉妹が笑う。私もそれに続き笑い返す。その瞬間だった。


ドォオオオオオオオオオン!! 目の前の城門が「落ちた」


「ひっ!!」


最初に聞いた音とは違い、間近に聞いたその音は私の鼓膜を振動させ

これから「戦い」が始まる事に暗に伝えていた。


そして、来る。


「あ、あれが… 族……」


扉が落ちる砂塵の中を進むようにその「族」が姿を現す。


「大きい… 」


遠目で見て分かるくらい、その族は大きかった。 

おそらくニ進以上はあるだろう。 

非常に恵まれた巨躯を持つ族は、こちらに向かってゆっくりと近づいて来る。


「それ」は全身美しく輝く銀白色の鎧を着込み

その全面に付けられた兜造形はどこか異国の神を思わせる神々しさを持つ


そして「それ」は状況を飲み込めていないかのように

のしのしと変わらず城塞の中央を歩き続ける。


その異様で堂々とした様は私含めこの場の者全てが固唾を呑むくらい

異常で凛々しかった。


(あの堂々とした振る舞い… 只者ではない…) 族は歩く。

本来ならばすぐさま攻撃命令を出し、目の前の族と対峙すべきであろう


だが私含めた全て者が目の前のそれを見守り、声一つ上げない。

族は近づく。その行為に躊躇いは無い。


「が、眼前の不届き者に問う!!」」


無意識の内に私が声を上げる。そして続ける。


「この城塞は我等が皇帝陛下により預かった神聖なる要塞である!!」


「汝は何の因果や訳あってこの場所を汚すのか!!」

「こ、この要塞の責任者として汝にい、言う!!」


「す、すぐさま我等に降伏し、我が軍門に下れ!!」


最後の言を言い終わって、姉妹が怪訝な顔でこちらを向く。

分かってる。 降伏しろなど、そんな事無意味だろう。


だが「敵」であるその甲冑戦士の姿からは何とも言えない威容と自信が感じられる

もしかたら… そういう事もある。 ならば、可能性は一つ残しておきたかった。


私は問いかけた。だが族は動かない。

一瞬の間、それより動いたのは族の方だった。


族は突如ゆっくりと手を挙げ、空を掴むような仕草をする。

もしや投降か? 一瞬そのように思ったけれど、違った。



「 ア ア ア ア ア ア ア ア ア ア ア ア ア ア ア ア ア 」


(え!?)



怒号ではない。悲鳴でもない。突如何か増幅された風に響き渡る族の声

族は天を仰ぎ、なおもその雄たけびを続ける。



「 ア ア ア ア ア ア ア ア ア ア ア ア ア ア ア ア ア 」



(………………………)


族はそれを続ける。 

……なんだこいつは コレは… 結局何がしたいんだ?


「 ア 」


族はしばらくその妙咆を繰り返したのに、短く声を残しそれを終える。

訳が分からなかった。 いや、もしや何かの暗号か!?


だが、それは確認出来る者は誰も居ない。

族は立つ。 我等も立つ。流れる時間、顔に滴る汗


それから族が動く。そして私は言う。




「 総 攻 撃 開 始 !! 全力で目の前の敵と対峙せよ!!」




私の掛け声と共に一斉に族に向かって魔法の火が噴きかかる

下から放つ配下100人の強烈な烈火の炎 そしてそれに続く上からの城兵の炎


上下一体の強烈な業火の一撃で正面の城塞がドロリと溶け無残な姿を晒している。

しかしそれを見てしてなお、誰一人としてその炎を止める事は無かった。


目の前の族が行ったその奇妙な行動 それに怖気づいたのか怒ったのか

みな族の行動に何かしらの危機を感じ、その火を噴き掛け続ける。


その火の熱に遂に耐えかね、後方の城塞が赤く崩れる

それでも止めない 誰も止めない 止められる訳がない みな怖いのだ。


だが、聞こえてた。



「 ア ア ア ア ア ア ア ア ア ア ア ア ア ア ア ア ア 」



「ひっ!!」



「 ア ア ア ア ア ア ア ア ア ア ア ア ア ア ア ア ア 」



「…………っ!!」


有り得、ない… これ程の炎だ 耐えられる訳が無い。 

しかしそれは聞こえて来る。 


こちらまで感じる、煮えあがるような熱い熱風を感じながらも放つ炎の中心で


それは、確かに聞こえている。



「 ア ア ア ア ア ア ア ア ア ア ア ア ア ア ア ア ア 」



(聞こえない聞こえない聞こえない聞こえない聞こえない!!)


目を閉じ、耳を塞いで聞こえないようにしたかったが

指揮官という手前、そのような事は出来ない。


兵が頑張って敵を溶け殺そうと言うのだ。

なのに自分だけがそれから逃げられるものか


耐え切れない熱風で顔が焼けそうになりながらも、私は前方の炎の先を見続けた。


大丈夫、こんなに皆が頑張ってやってるんだ。神様は見てくれる。 

敵は、滅ぶのだ。



「 ア ア ア ア ア ア ア ア ア ア ア ア ア ア ア ア ア 」


「 ア 」


ふと族の声が途絶えた。やったか!?


そこで前方の炎が止まる。 ああ、そうか!!やったんだ!!


「皆、やっ!!」


「えっ…… 」


喜びの形相のままで下を向いた私は、そのまま下方の光景も同じ表情で見た。


「嘘……」


あの銀白色の甲冑の族が魔導師の一人の顔面を掴み、塞いでいる。

そしてそれを一斉に見る他の兵達。族は確かにそこに居た。


族を見る。ああ、奴は、無傷だ… 


「わたっしあ、メキョッ!」


顔を握られていた兵の一人の顔面が崩れ、落ちる。

静寂に包まれた空間で何かがメキョリという音と共に破裂して落ちた。


それは確かに人で出した音だった。


ドサリと地面に崩れ落ちるそれ。

そして私が慟哭の声を上げるよりも早く、姉妹が大声で配下に命じる。


「全軍白兵戦の用意!! 敵を全力で撃滅しろ!!」


その声と共に一斉に兵が思い思いの武装で敵と対峙する。

まずは一人 彼女は幽霊刀と呼ばれる術で族の腕を狙い、切り付ける


幽霊刀とは半透明に揺らめく剣で

その見た目とは裏腹に、その剣は世界のどんな硬い金属をも貫き


並大抵の金属の武具であったら、女の腕でもそれを断つ事が出来た。


しかしそれはあくまで並大抵の話 

あれ程の烈火に耐え切った族の甲冑には通じる事はなく


彼女はあえなく族の片手で首を捻られ絶命した。


幽霊刀は通じない。しかしそれが分かっていても向かわずば難局を打破出来ない。

控えに残しておいた城の剣兵と幽霊刀を持った魔導師達が一斉に襲い掛かる。


その瞬間、魔導師の一人が地面に潰れた。 

族が振り上げた手によりブチュブチュと辺りにその肉片を撒き散らしながら

彼女のその搾りかすのような残骸が床に花びらのように根付く。


悶絶を称えるその肉の花は縦だったものを無理やり横にしたように散らばり

周囲に群がっていた兵士達をその肉片で赤く染め上げた。


呆然とする兵士達、しかし族は手を緩めない。

たまたま運が悪い兵士が族に捕まり

両肩を捕まれ、そのまま両の腕をブチリと勢い良く引き千切られた。


文字通り体が裂ける痛みに声を張らした兵士


が、族のうるさいという意思表示だろうか

兵士の頭は族によって掴まれ、族はその力を強める。


そして兵士の頭に溜まっていた中身は膿を取り出すかのように

ブチュブチュと口外から排出され

白か赤だろうかの物質をドロドロと外に押し出した。


その内容物を一心に浴びる族 だがそれが族の鎧を汚す事はない。

血だろうが何だろうが

族の鎧にこびり付いた全ての物質はスルスルと族の鎧を弾き

その全てが床を汚していく。


そして族は空になった兵士の頭をそのまま捻じ切り放り投げると

別の獲物を探すような目つきで首をグルリと一週させる。


族が倒した兵士は3人 残る兵士はその何十何百倍 


だが、そこで全てが崩れた。


族を討ち果たすという意思はどこへやら

兵士達は我先にと武器を捨て逃げ出していく。


当たり前だ。敵う訳が無い。 


怒号と悲鳴が反響するその空間の中で兵士は逃げ惑う。

しかし逃げ道など何処にも無い、それは先程自分達で塞いだ。


最初の攻撃で焼け溶け崩れた城壁が兵士達の行く手を阻む。

それでもなんとか進もうとする兵士達で城門周辺は人の塊となり

その下には勢いで踏まれた兵士達の死骸が散乱する。


そして反対方面の扉はどうだろうか? こちら側の扉は無事だろう。


だが開ける作業をする者は居ない。

その作業を知る者は同じく人の波の下。潰れて亡くなってしまっている。 


つまりここは閉鎖空間 逃げ場は無かった。

上の城壁からならば出る事自体は出来るだろう。

しかし生きて出られる補償は無い。


その証拠にチラリと覗いた城壁の下では

多くの兵士だった物が岩肌が赤く汚している。


「いやあっぁああああああああああああああ!!」


その地獄のような光景に私はついに耐え切れなくなり、悲鳴を上げ崩れ落ちる。


「姫様立って!! ここから逃げましょう!!」


しかしそれでもなお冷静さを保つ姉妹達に手を掴まれ、私はその場を後にする。

一目散に逃げる私の背後で



「 ア ア ア ア ア ア ア ア ア ア ア ア ア ア ア ア ア 」



確かにそれは聞こえていた。

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