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蓮田泉水の場合



「先生はどうして教師になろうと思ったんですか?」



屋上で昼食中、週刊誌を読みながらパンを齧る先生に、聞いてみた事がある。



「何だよ急に。

お前教師になりてぇの?」

「そういう訳ではないですけど。

ただの興味本意の暇潰しです」

「どうしてって言われてもなあ…

まあ、別に隠す事でもないんだけどな、俺結構やんちゃだったんだよ」

「何となく分かります」

「分かるなよ。

…全部どうでも良くて自分がどうなっても構わねぇって思ってた時に、当時の担任が俺を気にかけてくれた。

今思えば臭い台詞だったけど、「自分らしく生きろ」なんて言葉も貰った。

先生みたいに俺も誰かを、生徒を救いたいと思った。

アンダースタン?」



発音の悪い英語。

話している時の先生の目はとても懐かしくて優しい目をしていた。



「――――先生、私今中学校の教師をしてるんです」

「蓮田が?

へぇ、もしかして俺に憧れて?」



そう言って笑う先生は、私が「違います」と言うと思ってるんでしょうね。

残念でした。



「ええ、そうですよ。

先生が誰かを救いたかったのと同じで、私も天城先生みたいに自分と似たような生徒を救いたいと思ったんです」



中学を卒業して高校に入り、将来の事を考えている時に真っ先に思い浮かんだのは天城先生の顔と煙草の臭いだった。

成績は良い方だったし、進路指導の時も驚かれはしたけど止められはしなかった。



「…何て顔してるんですか先生」

「いや、何つーか教え子が教師になるって凄ぇ嬉しい事なんだな」



本当に照れたのか、今火をつけたばかりの煙草を携帯灰皿に入れ、少しだけ口角を上げた。



「先生、中学の時の約束、覚えてますよね」



忘れたなんて言わせませんよ。



「私がちゃんとした大人になったらあの日の答えを私にくれるという約束を、今守ってください」



先生の瞳が一瞬揺らいだ気がした。




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