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ゲートを抜けると、その眩しさに思わず目を覆った。人を焼き殺さんとばかりに照りつける太陽、カラカラに乾いた空気。ここが砂の都アズールだ。道行く人は顔をターバンの様な布で覆っている、口に砂が入らないようにするためだ。
「ぺっ!!忘れてたっぺっ!!」
どこぞの方言のようになっているが、けっして方言などではなく、口に入った砂を必死で吐き出そうとした結果である。グラン達はしっかりと口を布で覆っている。僕も慌ててアイテムボックスから布を引きずりだし口に当てる。
「ふぅ、相変わらずアツイですね」
「そうか?」
「そう?」
「あぁそっか・・・」
リザードマンの種族特性、この前挙げた筋力や防御力、毒への耐性といったものの他に、過酷な環境に対する適正もあるのを忘れていた。暑さには強いが、逆に寒さには弱く体の動きが鈍くなる。かなり変温動物的な適正だ。こんな所でその差を体験するとは思わなかった。となると、雪山とかじゃ辛そうだな。
「どうした?」
「いえ、何でもありません」
「そうか、ならいい。・・・じゃあ行くぞお前たち!!!」
「「「「応!!!」」」」
■■■■■
砂の都アズールを出て、そう遠くない所にある砂漠に目当てのモンスター、D-REXはいる。ティラノサウルスの様な恐竜型のモンスターで、砂の中に潜るために鼻の上の部分がスコップの様に反り立ち硬化している。夜行性で昼間は砂の中に潜って寝ている。
グランが口を開いた。
「あった、半分になった馬車、この辺だな」
破壊された馬車はそれぞれ形こそ違うがフィールドの中でも特に危険とされる場所にあるオブジェクトだ。その壊れ具合で危険度を表しているとも言える。大破している場合もあるし、馬車でなくてトラックや戦車の場合もある。いろいろだ。
ここの馬車は後ろ半分が抉られるようにして無くなっている。少なくともそれだけの大きさや力を持つモンスターがすぐ近くにいるという事だ。
「今は昼だから眠っているだろうな。誰か、音響爆弾頼めるか?」
「じゃあ僕が」
音響爆弾は耳をつんざく強烈な音を出すアイテムだ。投げた本人も耳を塞がなければダメージを受ける。基本的に獣型や人型のモンスターには有効なアイテムだ。上手くいけば相手の聴力を一時的にだが奪うことが出来る。さらにD-REXについて言えば、音に非常に敏感なモンスターでもあるので弱点とも言える。
「投げるよ、みんな耳塞いで」
そう言って少し遠くに投げる。急いで僕も耳を塞ぐ。するとすぐに、キイィィィンという音が聞こえた。僕はこの音が嫌いだ。背中がぞわっとする。
「あ、きたきた」
そうアキが呟いた。辺りに響くバッファローの大群が横切るような音と震度3程度の揺れ、これがD-REX登場の際のお決まりだ。揺れは僕たちを通り過ぎ、音響爆弾が破裂した方へ向かう。そして、砂が爆発した。いや、D-REXが地中より現れたのだ。
「お前たち、一応最後の確認だ。俺があいつを引き付ける、サトールは隙を見つけて強力な『スキル』を叩き込め、ヴァニキスは補助を頼む、アキはあまり前に出ないように、お前が死んだら意味ないからな」
それぞれがグランの指示に頷く。皆がグランを見つめるその目は信頼に満ちている。
「それとワカ」
「うん?」
「ワカには基本的には遊撃を頼みたい、ワカだったらこの程度のモンスターはすぐ狩れると思う、だからあまり手を出さないでほしい。呼んどいて何様かと思うだろうが、本当ならこれは、自分たちだけでやらなければいけない事だからな」
「うん、分かった。のんびり見とくよ。アキちゃんが危なくなったら助けるってことでいい?」
「そう・・・だな・・・。頼む」
「りょーかい」
砂漠を風が吹き抜け、立ち込めていた砂の煙幕を吹き飛ばす。するとそこにはこちらを射殺さんばかりの目で睨みつけ、今にも駆け出そうと足を軽く蹴り地面を整えている巨大な竜の姿があった。
「おーおー、ムキになっちゃって。クールに行こうぜー」
「同感だ」
「え、思ったより大きい!?」
「そう?」
「来るぞ!!」
竜が駆けだすと同時に僕たちも走り出す。こうして砂漠の恐竜狩りは幕を開けた。




