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お館様の代理人 呪いの館を相続したはずが館にめちゃくちゃ世話焼かれてるんですけど!  作者: zingibercolor


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呪われるはずが助けられてるんですけど

 呪いの館を相続した。

 呪いの館と言われる理由は、館の相続人すべてが館内の事故で死にかけているから。相続人はみんな館を潰してタワマンを建てようとしていたため、死んだ館の主人、お館様が呪ったと言われている。

 お館様の遺言で、館に住まなければ他の遺産を相続できないことになっている。なので私、最後の相続人は欲をかかず、大人しく館に住もうとしてるんだけど……私なんか今、この館に助けられなかったか?

 遡ること1時間前。私は一人で呪いの館に足を踏み入れていた。

 きりっと三角錐に切り揃えられた木に囲まれた広い庭、さまざまな木や花が植わっている先にある大きな洋館、それが私の相続した館。夏の盛りだし、ここに来るまで結構距離があったしで、私はひいこら言いながら杖をついて歩いていた。足が悪いんじゃない、あまりにも体力がないの、ハタチの時体壊して以降……。

 私はこの館に住むことにしてる。でも、何も知らずにいきなり引っ越すなんて無理だから、まずは下見。お館様の遺言を預かってた弁護士さんが館の鍵を渡してくれたので、それを使う。

 館はまず本館があり、渡り廊下で両脇の東館と西館につながっている。もともとは、裕福なお雇い外国人が立てた洋館だそう。

 本館の玄関までのスロープを「よいしょ」と登ろうとしたら、ベチャッと音がして、見ると手すりに鳥の糞が落ちていた。


「あー、きれいなとこなのに、もったいない……」


 鳥の糞をウェットティッシュでぬぐって、よっこらしょとスロープを登って、玄関を開ける。

 2階まで吹き抜けの玄関ホールだった。床にも2階へ続く階段にも、高級そうな赤い絨毯が敷いてある。もらった間取り図を見ると、1階には応接間と食堂と厨房があって、奥に書斎と寝室もある。他にも部屋はたくさんあったけど、これはお雇い外国人が家族や使用人を住まわせていたもので、人を寄せ付けないで暮らしていたお館様はあんまり使ってなかったんだそう。でも家具は一通り揃っているらしい。

 私は玄関ホールを見渡した。館にはしばらく足を踏み入れた人がいないそうだけど、全然埃じみてないし、きれいだな?

 しかし、私の体力のなさでは、とてもこの館全ては使えない。


「暮らすにしても、どこにしよう……」


 間取り図をもう一度見て、東館にシャワー室と洗面台がある大きい部屋があるのに気づいた。とりあえず、この部屋の様子を見てみよう。

 玄関ホールを抜け、絨毯を踏みながら渡り廊下を歩く。ここも全然埃がない、なんなら、絨毯は昨日敷いたのかってくらい鮮やかできれい。よっぽど手入れが良かったんだろうか?

 東館の部屋は、パッと見8畳はあった。造り付けの、古いけどいい感じのベッド、大きくて明るい窓、凝った作りの木製の机と椅子。壁際には書き物ができそうな仕事机もあり、ここだけでホテルの一室みたい。

 ベッドの寝具を触ってみた。古いながら全く埃じみていない羽毛布団、清潔なシーツ、大きくてふわふわの枕、ちゃんとバネがきいているマットレス。今すぐにでも使えそうだ……。

 シャワー室を覗いてみたけど、これはそんなに古くなくて、ちゃんと現代のシャワーノズルと蛇口がついてる。ここも全然水垢がなくて、昨日磨いたのかってくらいきれい。今すぐにでも使えそうだ……。

 隣にお手洗いもあるし、暮らすとしたらこの部屋かな。だからお手洗いも覗いてみたけど、水垢もほこりもなく、ぴっかぴかだった。なんでこんなにきれいなの?

 根城に目星をつけたから、あとは一応、本館を見て回る。書斎の隣は図書室。書斎も図書室も、お館様が集めたらしい経済系の本や資料がびっしり。お館様は投資で巨万の富を築いた人だったのである。

 ビリヤードルームなんてのもあった。覗いてみたら、ビリヤード台の上には何もなくて、その代わりぎっちり詰まった棚に、一生かけても飲みきれないほどの数のウイスキーの瓶が並んでいた。お酒好きだったのかな? それとも、高いお酒っぽいから投資の対象だったのかな?

 厨房と食堂も見てみた。広くてきれいなキッチン、白いキッチンクロスがかかったたくさんのテーブル。大人数を養えそうなのは、お雇い外国人が主人だった頃の名残だろう。でも、高そうな全自動コーヒーメーカーとか大きい冷蔵庫とか食洗機とか、現代のものがちゃんとそろっている。

 そろそろ疲れてきたけど、二階にも上がってみる。間取り図を見ると、音楽室に客室に、あとバルコニーがあり、それから午睡室なんてのもあった。優雅な館すぎる。

 でも、やっぱり東館の大きい部屋で暮らすのが現実的かな。そう思いつつ、1階への階段を下りようとしたんだけど、思ったより疲れてたらしくて、私はよろけて階段を踏み外した。

 思いっきり転げ落ちる。し、死ぬ!と思ったけど、途中で何かが私を受け止めた。


「な、何!?」


 見ると、階段に敷かれた絨毯がものすごくたぐまって、私を受け止めていた。

 え!? さっきまできれいに敷いてあったよね!? 絶対こんなじゃなかったじゃん!

 とりあえず、杖にすがって立ち上がる。大きく息をついて、体をはたく。ひとまず、絨毯直さなきゃ……端っこを引っ張れば、どうにかなるかな?

 絨毯の上からどいて、絨毯の端、階段の下を目指して歩き、下について、さてこれから引っ張るかと振り返ったら、絨毯はぴしっと敷き直されていた。


「えええ!?」


 こ、これは……これが、お館様の呪い!? いや、私全然呪われてないけど!

 しかし助けてもらったわけだし、住まなきゃいけないし……挨拶だけは、しとこう。


「あの、お館様ですか? これからここに住みます、牧之原真希と申します。その、あなたが離婚した奥さんが連れてった娘が私の母です、お世話になります……あの、実際引っ越してくるのは少し先になるんですけど、よろしくお願いいたします……」


 虚空にそう言い、それ以上どうしていいか分からなくて、私はとりあえず帰宅した。こんなに立ち歩いたら、明日絶対熱出るな……。

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