79.混ざる感情
※この物語はフィクションです。実際にいる人物、団体とは一切関係ありません。
ラン原作品
現代異世界ファンタジー
『アサシン』
毎週土曜日に1話ずつ投稿!
原作だけでなく、イラストなども投稿しているので、気になる方はXを見に行ってみてください。
イラスト垢 @RAN_assn
創作メイキング垢 @Ran_Makin
現代
ウイの中で過去が頭を巡る。
何が本当で、何が嘘なのか、恨みと悲しみによって捻じ曲がった過去から真実が見えて来ず、困惑する。
アン「お姉様…」
ウイ「はぁー…はぁー…」
アカネ「今だ!!ネス!そいつに攻撃を与えろ!!」
ネス「あんた…ただ悲しかっただけなのよね…」
アカネ「おい!ネス!!」
アン「悲しかっただけ?」
ネス「なんでだろう…こいつの顔を見てると、感情が、考えがずっと流れて来るのよ…」
アン「え?」
モコ「もしかして、ご主人…能力に開花してる?」
サスケ「このタイミングで!?」
モコ「僕も土壇場で能力に開花したし、しかも見てるだけでっておかしくない?」
サスケ「?確かに…」
アカネ「でも、その能力でこの状況を切り抜けないとどうしようもねぇだろ!!」
ネメシス「なぁ、ラール…お前のその持ち前の賢さでどうにかならないか?」
ネメシスがラールの方を向いた時…
その場にラールはいなかったのだ。
ネメシス「あいつ、逃げたか…」
アカネ「どんだけ性格腐ってんだよ…あいつ…」
ネスは、ずっと頭を抱えるウイの前に出る。
アカネ「ネス!下がれ!!」
ネス「あんた、本当に父親が憎かったの?」
ウイ「っ!」
ウイは振り返る。父との思い出を…
新しい魔法を習得して、いっぱい褒めてくれた事…自身が能力に目覚めた時、泣きながら喜んで抱きしめてくれた事…外へ遊びに行った時、美味しい物を食べさせてくれたり、欲しい物も買ってくれたりした事…
全て、父からの愛だった…
だけど、自分を苦しめたのは父だと言う考えもあった。
結果的にその感情でせめぎ合っているウイ。
ウイ「違う!いや…でも…でも、あいつさえいなければ…」
ネス「確かに、父親がいなければ、あんたって存在は生まれてないし、苦しまずに済んだかもね…」
ウイ「……」
ネス「でも、本当にいらないんなら、あんたもアンも育てるなんてしないわよ…」
ウイ「っ!」
ネス「私は実の親から愛なんて貰えなかった立場だからなんとも言えないけど、でも、少なくとも、あんたらの父親はあんたらに愛情を持って接してるとは思うわ。そうじゃないと、アンみたいな根っからの善人なんて出来ないわよ…」
アン「……」
ウイ「っ!なら、なんであたしはこんなに苦しんでるのよ!!」
ウイは再びネスへ刃を向ける。
ネスは向けられた刃を剣で受け止める。
ウイの目からは大粒の涙が流れる。
1000年近く閉じ込められ、父を信じて良いのか分からなくなり、更に1000年封印され、彼女の中で大きく感情が入り混じる。
恨み、悲しみ、殺意、怒り…どうしたら良いのかわからない彼女の感情は行き場を失い、結果的に自分自身を苦しめていた。
ネス「あんたはどうしたいのよ」
ウイ「っ!」
ネス「その感情を持って、あんたは一体何がしたいわけ!?父親への復讐?それとも、当主の座を奪取?天界の破壊?何がしたいのよ!」
ウイ「あたし、は…」
また、考えを巡らせる…だが、答えは負の感情に呑まれ、隠れていく。
ウイ「もう…そんなのどうだっていい!!」
振り切ったウイは、ネスへ攻撃をする。
ネスは激しい攻撃に防御するしかない。
そして、その様子をただ眺める事しかできない他の者達…
その時…
???「ウイ!!」
聞き覚えのない男性の声が響く。
だが、アンとウイの2人はピクリとその声に反応したのだった。
アサシン一同が声のした方を振り返ったところにいたのは…
先ほど、医務室で眠っていた男性『アーロン』がいたのだった。
アカネ「は?え?」
アン「お、お父様…」
ウイ「……」
ラール「良かった…間に合った…」
シロ「ラール、お前…」
ラール「医務室の方から膨大な魔力反応を検知したから見に行ったら目覚めてたんだ。だから、事情を伝えて連れてきたんだ」
アカネ「マジでナイス!ラール!見直したぜ!」
ミヤ「さっきまでめちゃくちゃ暴言言ってたけどね…」
ラール「だけど、これで戦況が良くなるはずだよ…」
アーロンはゆっくりとウイに近づく。
ウイは咄嗟に攻撃の姿勢になるが、アーロンの目には優しさが籠っていた。
幼少の頃に、自身に見せてくれていたあの時の顔だった…
いや、最初からアーロンは悪魔のような顔はしていなかったのだ。
ただ、彼女の記憶の中で大きく歪み、結果、彼女の中でのアーロンの像そのものが変わってしまったからだったのだ。
ウイから、若干敵意が消え、油断が生まれたその時…
アーロンは優しくウイを抱きしめたのだった。
アーロン「ごめん…ウイ…本当に…」
アーロンはウイへ謝罪をした。
その謝罪は「ウイを1人にしてしまった」と言う思いからの謝罪だったのだ。
そして、ウイの中で歪んでいたあの時の過去が修正されていく。
そして、もう一つ流れてきた記憶…
それは、『父が自分を探し続けていた時』の記憶だった。
アーロンは自身を閉じ込めた天使から『ウイは天界から出ていった』と聞かされていたが、アーロンは天使の記憶から、天使がウイを宮殿のどこかに閉じ込めた事を知り、仕事の合間にずっとウイを探してくれていたのだった。
そして、ある日、アーロンの仕事机の上に、ウイが閉じ込められている場所が記された紙が置かれていたのだった。
なんと、アーロンは一度立ち入り禁止区域となった場所の前まで来ていたのだった。
その時…
天使『アーロン様…何をしているのですか?』
例の天使が現れたのだった。
アーロン『っ!ウイを、娘を探しているんです』
天使『前にも言いましたが、ウイ様は天界を出て行きました』
アーロン『ですが!』
天使『仕事に戻ってください。それと、その先は立ち入り禁止区域です。当主でも、そこへの立ち入りは禁止です』
そう冷徹に言われ、アーロンは泣く泣く、立ち去る事しか出来なかったのだ…
ウイ「……」
アーロン「本当なら、彼の言う事なんて無視して君の元に行ければ良かった…ごめんよ…ウイ…」
ウイ「父……さん…」
ウイの目から殺意や憎しみ、怒り、悲しみが消えていく。
そして…
???「……ウイ…」
アン「!お母様!」
続いて、ランスも現れたのだった。
ランスは今目の前で起こっている現状から、ようやっと全ての出来事が終結したのだと察しがついた。
そして、アンはランスに支えられながら、ウイとアーロンのいる方へ歩みを進める。
その空間は親子団欒で、平和な空気に包まれているのを感じた。
ネム「良かったね!(泣)」
モコ「良かったぁ(泣)」
ミヤ「親子全員で平和に終わって良かった(泣)」
ネメシス「紆余曲折あったけど、なんとかなって良かったぜ…(泣)」
アカネ「おいおい、お前ら泣きすぎだろ(大泣)」
ネス「あんたが1番泣いてるじゃない」
シロ「でも、引き剥がされた親子が揃ったんだ。涙は誘う…」
レン「そうだね…良かったね、アン…」
平和的な親子の様子を眺めていた時…
???「貴様ら…許されると、思うなよ?」
その時、ウイに倒されたはずのライオウが起き上がったのだ。
アン「!」
アーロン「ライオウ…」
ライオウ「アーロン、俺はな…そいつを神として認めた覚えはない!!お前の娘、それからランス!お前の兄も神として認めた覚えはない!!」
ラール「親子団欒に水刺すなよ…この老害…」
アーロン「あなたが神と認めなくても構いません。それでも、ウイは私の娘には変わりありませんから」
ライオウ「なんだと!?」
ランス「それは私も同じよ。私も、他の者達が兄を神と認めなくても、私にとっては家族の1人には変わりないです。だから、あなた達に私たちの家族を認める権利も、認められる筋合いもありません」
ライオウはまさかアーロンとランスに反論させるとは思っていなかったのか、一瞬狼狽えるが、まだ、強気に出る。
ライオウ「さすが、絶望の神の父と破壊の神を兄に持つ母…考え方がイカれてるな…俺は破壊も絶望もな…いらないんだよ!!」
そう言って、親子へ攻撃をしようとした時…
ライオウの雷へ誰かが魔法を放ち、相殺した。
その正体は、ネスだった。
アン「ネスさん!」
ネス「好き勝手言ってるわね」
ライオウ「は?」
ネス「破壊も絶望もいらない?それは間違いよ…破壊は創造の対比…だけど、破壊があるから創造が存在する。創造だけし続ければいずれ創造ができなくなる。創造にだって限界はある。それは絶望だってそうよ。絶望があるから希望が生まれる。そして、希望があるから絶望が生まれる…結果的に、その2つは対となりながらも支え合って、互いの存在意義を保っている。そんなのもわからないのなら、神なんてやめてしまえ」
ライオウ「魔人風情が…生意気言いやがって…」
アーロン「いえ、彼女の言う通りです。破壊があるから創造が存在する。そして創造が存在するから破壊も存在する。そして、それは絶望も希望も同様です。互いが存在し続けるからこそ、その言葉や行動には意味が、存在意義があるんです!」
ライオウ「っ〜」
ライオウは言葉に詰まる。
ライオウ「だが!」
アン「ライオウさん!」
その時、黙っていたアンが口を開く。
アン「私は今まで『親の犯した罪の償い』として、あなたから色んな命令を受け、色んな仕事を押し付けられてきた…ですが、もう、あなたの言いなりも、償いもやめます!」
ライオウ「貴様!当主としての信頼は…(アン「そんなの、もういらないです!」っ!」
アン「当主としての信頼より、私は…また、家族で仲良く過ごしたい…今度は、お姉様も含めて…全員で…ずっと…仲良く…」
ライオウ「っ〜貴様の当主としての立場も危うくなるな!覚悟していろ!!」
そう吐き捨てたライオウはフラフラの足取りで去って行った。
そして、自身より強大な相手に立ち向かったアンはその場にへたり込んでしまったのだった。
アーロン「アン!」
アン「こ、怖かったです…」
ランス「よく言えたわね…」
アン「はい…」
ウイ「はぁ…はぁ…」
その時、ウイが後ろで力無く倒れたのだった。
アーロン「っ!ウイ!」
アン「お姉様!」
ウイ「…疲れ、た…」
アーロン「こんなに暴れたんだ…仕方ない…ゆっくり休むと良い…」
ウイは安堵したのか深い眠りについてしまった。
こうして、天界で起きた1つの事件に幕が降りたのだった。




