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学園祭当日
どのクラスも慌ただしく準備に勤しんでいる。
2年4組のお化け屋敷は・・・・
異様?いや、異質な、ドス黒い空気を纏った教室になっていた。
総監督は石本真子
ディレクターに高倉健二
マネージャーは桐島由美
おばけ役は
トメさん 故91歳
げんじさん 故89歳
あやめちゃん 故5歳
ひとしさん 故35歳
けいこさん 故32歳
鬼人さん 推定300歳
お化け屋敷のタイトルは
『一家惨殺、殺戮の民家』
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ある時代に仲良く暮らす一家5人のもとに、
一匹の鬼がやってくる、
その鬼は一家全員を八つ裂きにしてしまう。
あまりの突然な出来事に、
一家全員は亡くなった事もわからずに、
魂だけがその家に棲みつき、暮らす事となる。
別の住人が住みようものなら、
その魂たちは家から追い出そうとあらゆる呪いをかけて、その場で殺戮を繰り返している。
この民家は取り壊しも出来ない、曰く付きの物件である。
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サングラスを掛けてメガホン片手に真子は指示を出していた。
「はいー、そこのタイミングー、セリフ合ってないよー」
「ちゃんと、けいこさんの動きにあわせて!」
「はい、そこー、トメさんの声、もっとおばあちゃんっぽい声でー」
担任の原田が指示を出す真子に歩み寄ってくる。
「石本、ちょっといいか?」
石本はサングラスを掛けたまま原田を見る。
「先生?どうしたんですか?」
原田は疑問を真子にぶつける。
「おまえ、このお化けの映像どこから持ってきたんだ?」
「えっ?なんでそんな事、聞くんですか?」
真子の返答に原田は頭をポリポリ掻きながら答える。
「いやな・・映像の割にめちゃくちゃリアルなんだけど・・」
真子は平然と答える。
「あーーっ、ですよねー」
「実はー、これー、内緒なんですけどー・・」
「ウチの親戚が映画会社に勤めてましてー、映像を特別に作ってくれたんですよー」
「でも、映像だけで、声は出ないんで、そこはみんなが声優としてやればいいかなって」
原田は納得の顔をする。
「なるほどなー、すごい映像だよなー」
「特に家の周りを飛んでる物体とか・・めちゃくちゃ怖い演出してるわ」
「でしょーー!叔父さんに感謝ですー」
「これで優秀賞はウチらのクラスのモノですね」
原田はうんうんと頷き、踵を返して去っていく。その後ろ姿を見ながら、真子はテヘペロポーズを見せるのだった。
しばらくして、マネージャーの由美が寄ってくる。
「まこちー、聞きたい事があるんだけど」
「おーい、ケンケン!あやめちゃんグズリ出してるからフォローしてー」
真子の言葉にケンケンが応じる。
「かしこまりっ、はーい、あやめちゃん、こちらへ来るでござる」
「あっ、ゆみっち、ごめん、なに?」
由美は不思議そうな顔で尋ねる。
「なんで幽霊さんたち、みんなに見えてるの?」
「しぃーーっ」
真子は人差し指を立てて口に当てる。
そして、小声で答える。
「みんなには映像って言ってあるから、聞こえる声じゃダメだって」
「みんなが見える理由はね、この教室に張ってる結界のおかげなの」
「結界のおかげ?」
「そう、結界は自分の都合で書き換える事ができるの」
「霊を入れない結界もあれば、霊を寄せ付ける結界もある」
「今回は見える結界を張ったってわけ」
由美はそんな真子の話を聞いて引き気味である。
「この人、なんでも有りになってきたわね・・・・」
「ん?ゆみっち?なんか言った?」
「ん?ううん、なんも言ってない」
遠くからケンケンの声が聞こえる。
「由美マネージャー!げんじさんが外に出ようとしてるでござる!止めてくだされ」
「はーい、今行きまーす」
由美は慌ててげんじさんの下へ走って行った。
再びケンケンの声が聞こえる。
「真子かんとくーぅ、鬼人さん暴れて止められないでござる・・・・お頼み申す・・・・」
真子は平然とメガホンを口に当てて叫ぶ
「それは犬の仕事だろーがっ!」
「しっかり抑え付けんかーいっ!」
「ひぇぇぇーっ、分かり申したーーっ」
ケンケンの悲鳴が聞こえる中、
真子は両頬をパンパンと叩いて気合いを入れる。
「さーーっ!みんなーー!お化け屋敷っ開演だよーーっ」
(本物のねっ、テヘペロ)
当たり前にリアルなお化け屋敷は学校中の噂になる。また、他の学校から来た生徒たちにも大好評。
2日間で利用人数は学園祭史上最高人数を叩き出すという異例の事態となる。
2年4組のお化け屋敷は、リアリティ、クオリティ、全てにおいて最高の賞賛という形で幕を閉じるのだった。
学園祭もフィナーレ、体育館での授賞式
『それでは、今年の西岡高校、学園祭、優秀賞はーーっ』
ドゥルルルルルルルルルルルルルルル・・・・
ジャンッ
「2年4組 一家惨殺、殺戮の民家 だーーーっ」
体育館が歓声で湧き上がる。
クラスのメンバーは喜び歓喜で震え上がる。
みんなが真子監督に抱きつき、揉みくちゃにされる。
真子はそんな中でも冷静だった。
みんなの目が焼肉弁当になっているのを見逃さなかった。




