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昼休み、1人の男が廊下の真ん中をズカズカと歩いている。その風貌は厳つく、怖そう、触れようモノなら火傷しそうなオーラが出ている。
その男とは、学校で1番怖くて、強い。
3年生の入来 翔である。
彼が歩いていると、前から来る生徒は全て端に避けていく。
先生までも・・・・
そして、入来は2年4組にやってきた。
教室に入って周りを見渡す。
その姿を教室内の生徒たちが見つけて騒めく。
入来は入口に1番近い生徒に声を掛けた。
「おいっ、石本ってのはどいつだ?」
威圧的な口調に生徒は声が出ない。
そして、皆が真子に顔を向ける。
視線を感じた真子。
「んっ?」
入来を見る。
「・・・・あいつか・・」
入来は真子のもとへゆっくりと歩く。
真子の前で立ち止まり睨む。
真子は、ほけーっと入来の顔を見る。
【入来先輩だ、、、】
【こえーっ、喧嘩強そー】
【石本、なにやらかしたんだよ】
そんな声が聞こえてきて真子はニヤッとする。
入来が口を開く
「おまえ、可愛いな、俺と付き合えよ」
その言葉をクラス中が聞いた瞬間、
皆は静かに見守っているが、心の中はお祭り騒ぎである。
【えーーっ、入来先輩、告ったー】
【えーーっ、石本?どうすんの?】
空気が静まり返っている中、椅子がガタッと音を立てる。
「ちょっと待ったーーーっ!」
その声に周りは騒つく。
【おーーっと、ちょっと待ったコールだーぁ!】
【誰だ?入来先輩に対抗するのはー】
その男は忽然と真子に歩み寄ってくる・・
メガネをクイクイさせて
皆は一瞬でテンションが落ちる
【なんだよー、高倉かー】
【なに邪魔してんだよ・・・・】
不協和音の中ケンケンは入来先輩の横に並ぶ。
メガネのクイクイが徐々に早くなってくる。
「我が師にはこんなヤンキーは似合わないでござる」
「まこ殿、しっかりと考えられよ」
入来は目だけケンケンに向ける。その時
「ケンケン伏せっ!!」
真子がいつもより大きい声で放つ!
その言葉に反応して、犬は従順に、そして反射的に伏せる。
その瞬間、ケンケンの頭上を暴風の裏拳が、唸りながら素通りしていく。
教室中の空気が止まる。
ケンケンは何が起きたか理解せず伏せていた。
「チッ」
入来は舌打ちをする。
「せんぱーい、可愛い後輩にそれはないよー」
「んで、あたし、付き合わないから」
サラッと断り、今度は周りの空気が凍りついた。
【振ったー、入来先輩を振ったー】
【石本おわたーー】
【あー、南無南無】
入来は真子を睨みつける。
真子はそんな睨みにも動じず頬杖をつく。
「せんぱーい、浮気はいかんねー、浮気はー」
その言葉を聞いた入来はフッと笑う。
そして、満面の笑みで笑い出す。
「あー、ハッハッハッ、お前すげーな」
「噂通りだよ」
真子と入来の周りだけ明るくなっていて、
教室の空気だけが取り残されて凍っている。
2人だけ別の会話をしているようだった。
そして、入来の目は、獲物を見る目ではなく、同じ高さに立てる相手を見つけた男の目だった。




