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学校生活3日目、昨日の出来事で私の評価は鰻登りである。
「あー、まこち、おはよー」
「よう、まこっち、おはー」
教室に入ると、みんな私を見て挨拶をしてくる。席に座っても、次々と質問責めである。
「中学途中で居なくなったけどどうしたの?」
「これまでどこに行ってたの?」
「昨日はなんで知らないことわかったの?」
「あの指鳴らしは何?」
みんな、仲良くしてくれるのは有り難いが、心が読めるとか、未来が視えるとか、言ってしまうと危険な気がする。
無難な言い訳は・・・・
霊視ができるってことにしておいた。
霊力が強すぎてお寺に篭ってコントロールの勉強をしていた。
こんなところでみんなは納得してくれた。
でも、人気が出るとやっかむ奴もいる。
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早くも仲の良い4人の友達ができた。
安達 玲子[あだち れいこ]
清水 香織[しみず かおり]
桐島 由美[きりしま ゆみ]
田所 理絵[たどころ りえ]
お昼休み、5人でお弁当を食べていると、
1人の男の子が近づいてきた。
黒縁メガネをかけて、如何にもオタクっぽい男、高倉 健二[たかくら けんじ]だ。
「石本殿、少しよろしいか?」
(ん?・・殿?)
周りの女子達は引いた目をしている。
【うわ、高倉じゃん、キモい】
【相変わらず気持ち悪い】
【なんでこっちくるのよ】
(あー、皆んなにも嫌われてるタイプかー)
真子は気にせず普通に接する。
「高倉くんだっけ?どうしたの?」
高倉は黒縁メガネを右手でクイクイしている。
「君、霊能力者だって、本当かい?」
(うーん・・・・違うんだけどなー)
返答に困っていると、玲子が口を開く。
「高倉くん、昨日のまこち見てなかったの?」
高倉のメガネクイクイは止まらない。
「見ていたさ、だか信じられないね、僕が本物の霊能力者だからね」
真子はポカーンとして高倉を見ていた。
(なんだ?マウント合戦か?)
(・・・・興味ないんだが・・)
真子が口を開かずとも友達が前に出てくる。
今度は由美である。
「何訳のわからないこと、言ってるの?、あなたが偽物じゃない?この前も霊が通ったって叫んでたし」
由美の言葉に火がついたのか高倉のメガネクイクイが高速になっていく。
「あれは、本当に通ったから・・・・」
「そこまで言うなら、石本殿、勝負なり」
(ん?・・なり?)
香織が尋ねる
「どんな勝負をするのよ?」
高倉はドヤ顔でクイクイである。
「よーし、石本殿、ルールは簡単」
「あの扉から入ってくる人が男か女か、霊視で当てる勝負だっ」
そう言って入口を指差す。
(あのーー、わたし、一言もやるって言ってないんですけどー)
高倉はメガネをクイクイさせて扉に集中している。
(え、もう始まってるの?)
真子が弁当を口に運ぶ横で、勝負は勝手に始まっていた。
「ムムム、男だ」
「おんなー」
女性が入ってくる。
女性陣が湧き上がる。
「まこち、1ポイントー!」
「クソっ、次は・・・女だ」
「卵焼きうまっ、おとこ2人」
男性が2人、入ってくる。
女性陣は少し引き気味になる。
「えっ?・・まこち?これは2ポイント追加?」
「まぐれだっ、次っ、女だ女2人」
「れいこ、そのトマトちょうだい、あっ、男・・原田先生ね」
原田先生が何食わぬ顔で入って来た。
女性陣4人は口に手を当てて驚きを隠せずにいた。
「うそ・・・・まこち?・・どこまで視えてるの?」
そんな中、理絵が高倉に冷静なツッコミを入れる。
「高倉くん、1つも当たってないけど」
高倉はメガネの縁を持ったまま固まっていた。
【こんなはずは・・・・】
【俺は、霊能力者なんだ・・・・】
【本物なんだ・・・・】
真子は箸を置いて、頭をポリポリ掻く。
(あーっ、もう、面倒臭いなー)
そして口を開く
「高倉くんさー、あんたは、ただ、霊が視えるだけなんだよ、自信過剰になっちゃダメ」
「あと、霊が視えるってことは、逆に危険なの」
「視えちゃうと、霊が助けてもらおうと集まってくるから」
「あなたには、まだ霊を浄化させる力はない。だから視えたら見ないふりするか、『あなたを浄化させる力はありません、ごめんなさい』って謝らないといけないよ」
高倉は何かを言いかけて、やめた。
そして静かに頷いて、教室を出ていった。
真子は邪魔者が居なくなって、再びお弁当に箸を進めた。
周りの4人は真子の異次元の能力に呆気に取られて箸が止まっていた。
由美は1人、思い更けて青ざめる。
【えっ?じゃあ、霊が通ったって言う話は?本当?・・・・】
その視線が、ほんの一瞬だけ真子から離れなかった。
(本当だけど、深入りすると面倒くさいから黙っとこー)
真子はルンルンで卵焼きを頬張っている。
真子の能力がクラスだけでなく学校中に響き渡る前兆でもあった。




