その5
その5
マリクの三人のおんなのこは、大きくなってけっこんし、それぞれお家をでていきました。
わたしはうんとがんばって、しくふくを、いえ祝福を、たくさんわけてあげました。
シトリンの町はますますさびれ、治安も悪くなりました。
街道沿いは盗賊や、魔物がでるので、ごえいなしには歩けません。
住む人も減り、古い家は取り壊されていきます。
マリクとおくさんが、おひっこしの相談をしています。
町の規模が縮小され、この家が道路改正にひっかかるので、壊されることになったのです。
お年寄りの一団がわたしを見にやってきました。
「なんとも、かわいい聖女さまだの」
「親方の最盛期の作品なんです。
何とか取り外せないでしょうか」
「三軒長屋の中壁の柱だからなぁ。
切り取ると隣の家の壁まで崩れちまう。
取り壊しはこの一軒だけなんじゃろ」
「ジンゴロさんも面倒な所に彫ったもんだ」
「こりゃジンゴロさんの娘さんだろう。
家と一緒にこわすわけにはいかねぇなぁ」
「どうだ、こういう案は」
「おお、いいな。ちょっと町長にかけあってくらぁ」
それからわたしは厳重に大きな布でくるまれて。
何日も、周りの人声と、大きな音を聞いていました。