8 傷心の遥⑤
私が園村の気持ちを受け入れられない以上、こうなることは初めから分かっていたのに…。どうして、園村は私に気持ちを伝えたのだろう。二人の友情が壊れたら、どうするつもりなのか。
どうしようとも、私は彼の気持ちには応えられないのに…。彼は私の気持ちなどを知る由もなく、力任せに私の腕をつかんで来た。
「ちょっと、本当にいい加減にして! 大きな声を出すよ!」
さすがに応えたのか、園村はようやく私の腕を話した。ふと、彼の横顔を見て驚いた。こんなにも悲しくて苦痛に満ちた男の表情を見たのは初めてだった。
一緒にベランダにいることが本当に苦しくて、私は駆け込むように中に入った。中に入ると二人がきょとんとして、私を見て来た。
「悠ちゃん、どうしたの?」
「えっ、どうもしてないよ」
そう言うと、遥は急に耳元に近づいて来て…
「顔に泣いた後がついとる…」
なんてささやいてくる。何言っているんだよ。遥こそ、泣き過ぎて、顔がくしゃくしゃになっているじゃないか。まぶただって腫れぼったくなっているし…。人のことを言えた義理か。
「ねえ、そろそろ帰らない? そろそろ、終電の時間だし、私、疲れちゃった」
「そうね、悠ちゃん。よし、テーブルを片付けてから帰ろうか?」
「僕、ちょっと…ベランダを見てくる」
矢島がベランダに行ってしまったので、テーブルの片付けや洗い物は遥と二人で進めた。お互いにいろんなことを語り尽くしたせいか、交わす言葉は少なく感じられる。
ただ、蛇口からあふれる水の音だけが真夜中の部屋に大きく響いた。さっきまであんなに楽しかったのに…。いつも、祭りの後ははかなく、そして切ない。祭りは始まるまでが一番楽しい。
一度始まってしまえば、あとは終わるまでひたすらカウントダウンしているに過ぎない。女性陣が台所に入ると、遅ればせながら男性陣はテーブル周りを片付け出した。ほどなくして、それぞれの片付けが終わる。




