森を抜けた先の草原へ。
少年は森の中を走る。
先ほど、気絶して倒れた騎士達を助ける為にだ。
助けを求めて騎士達が来たであろう方向に走る。
「いそがないと!」
少年は森で寝てしまう事でどのような危険があるかは分からない。
しかし、森の中で安易に寝てはいけない事は分かっているようだ。
実際にこの森には魔物という人食い化け物が存在する。
そんな森で寝てしまえばその化け物の餌食になるだろう。
しかし、それは杞憂になる。
何故ならば少年に引き寄せられるように近付いてきた魔物の全てが異形に囚われあたかも喰われたように姿を消したからだ。
周囲には魔物一匹たりとも存在しない空間が出来ているのである。
さらに言うならば異形が騎士達を髪の毛で包みそのまま引き摺っている。
少年には見えていないだろうが。
しかし、森で走ると普通ならば木の根や石で躓いてしまったり泥や苔に足を取られて捻挫をしてしまう危険がある。
だが、少年には異形が付いている。
自然の中に人口の道としか思えない程の道を作っているのだから。
もし、この光景を見る者がいれば驚くだろう。
森の一部が黒い何かで覆われたと思えば道が出来るのだ。
その道を幼い少年が必死な様子で全力疾走をしているのだから。
少年は異形を引き摺りながら走る。
そしてその後ろからいくつもの毛玉が引き摺られて行く。
さらに、異形の作った道は真っ直ぐでは無い。
なんと、とある町へと行けるように道を曲げたりしているのだ。
不思議な事に異形は騎士達が何処から来たか把握しているようだ。
………少年が道を曲がる際に毛玉が木や岩にぶつかり鈍い音が聞こえたりするのはご愛嬌であろう。
数秒、数分、数時間。
走っている少年本人はどれぐらい走ったか分からないだろう。
実際には約20分間、走り続け周囲の樹々が少なくなっていった。
鬱蒼としていた森も段々と明るくなり、異形がわざわざ木漏れ日を作らなくとも良いぐらい明るくなった。
そして少年達は森を抜けた。
そこは広い草原が広がっていた。
さらに目測で1Kmぐらいだろうか。
森を抜けた先の草原の向こうに高い壁が見える。
町に魔物が入らないように壁で覆っているのだろう。
「みつけたーっ!!!」
そこが目的地だと少年も半ば理解したのだろう。
壁目掛けて走り続けた。
異形を引き摺り毛玉を引き摺りながら。
さて、少年には異形も毛玉も見えないが他の者には見える事は騎士団長が証明している。
このまま走り近付けばまず、間違い無く騒ぎが起こるだろう。
不幸な事にそれを教える者は少年の近くには居なかった。




