ヘカシャーナ・フランディル・リーガー。
明るい金髪の幼女は目の前の少年を見据えながら尋ねた。
「あなたたちがおじさまたちをたすけたの?」
「おじさま?」
少年は金髪幼女の言葉を理解できずに、オウム返しのように繰り返した。
いや、状況すら理解していないだろう。
ギルドから領主の館に帰り、領主に手紙を届けるとリマロと別れたら人形を持った金髪幼女が接近して来たのだから。
少年の答えを待つ金髪幼女。
現状を理解していない少年。
金髪幼女を警戒するように睨む異形。
混沌な状態である。
少年に抱き着いた異形から不穏な空気が漂い始めた中、近くに居た侍女の一人が助け舟を寄越した。
「ヘカシャーナ様、まずは自己紹介をなさいませんといけません」
金髪幼女はハッとしたような顔付きで侍女の言葉を素直に聞き入れた。
持っていた人形を侍女に手渡し少年と異形に軽く頭を下げながらふんわりとしたスカートを少しつまみ上げた。
これが淑女の礼なのだろう。
ぎこちなさは無く、幼いながらも気品に溢れた動きだった。
「ごきげんよう。
わたくし、ヘカシャーナ・フランディル・リーガー。
いご、よろしくおねがいいたします。」
流暢に自己紹介をしたヘカシャーナに少年は頭を下げた。
「ごていねいに、ありがとうございます。
ぼくは、おそれがみ、みたまです。
よろしくおねがいします!」
少年の様子を礼儀正しいのか、背伸びした可愛げのある子供か判断は人によるだろう。
金髪幼女、もとい、ヘカシャーナは異形の自己紹介も待っていたが少年はヘカシャーナの疑問を答えた。
「きしだん?
あ、ルドルフの!
うん、ぼくがたすけをよんだよ」
「まぁ、そうなの!
おとうさまがみたまさまたちにかんしゃしていたわ。
あたしからもおれいをいいたかったの!
おじさまたちをたすけてくれてありがとう。
おじさまのおんじんだからあたしのことをシャーナとよんでいいよ!」
ヘカシャーナは満面の笑みでそう答えた。
手は顔の前で合わせて目を輝かせてそう言った。
「うん、分かった!
ぼくの事はみたまってよんで!
ぼくたち、これでともだちだね!」
少年の友達という言葉に異形が反応したのか、睨み付けるような視線が途端に和らいだ。
少年を触らさないように黒く異様に大きな手で抱き抱えたままで表情も変わってはいないが威圧が薄くなったのは確かである。
ヘカシャーナ、縮めてシャーナが気付いてはいないが。
「えぇ、これでともだちよ!」
幼い子供特有の何故かすぐに仲良くなる様子を異形と侍女が眺めていたのであった。
「では、いっしょにあそびましょう!」
「うん!」
少年と異形はシャーナに連れられて館の奥に行った。




