Lv.58 ついに登場!!
「あ~、やっぱりこうなったクマ」
「ぬわぁ!」
突然響いた声に俺はきょろきょろと辺りを見回した。
が、当たり前のように闇の中だ。何も見えない。
「えぇと、俺なのか?」
「正確には、未来へ戻る際にこうなることを思い出してちょん切って残した爪垢?」
爪垢って…
ものすごくそばで聞こえるのだが、どこにいるのか確認できない。
それよりも、この空間を脱出する方法…
「なぁ、未来の俺ならこの空間」
「教えてもいいけどぉ~。後悔しない?…クマ」
「いや、もうクマいらんし。後悔するとしたらこのまま死ぬ方が後悔するだろ」
まだまだやりたいことは沢山ある。日本に返れないというのならば、いっそ日本の知識と知恵を生かして店を開くのもいいかもしれない。何しろ優斗がこちらに来たことだしな。
あいつがいれば一般人として優雅に生きる道が開けそうだ!
「他力本願思考駄々漏れの所申し訳ないんだけど~。後悔しないってことでいいかなぁ?」
俺の考えひょっとして口に出てたか?
ドキドキしながらも俺は首を縦に振った。
「じゃあ~、右手を上に」
言われる通り右手を上に伸ばす。
「闇のあるところ笑いあり! はい続けて~」
「や、闇のあるところ笑いあり!?」
「ラブリーフレッシュな勇者!」
「それ言うのか!?」
絶対それはおかしいだろうと喚けば、「言わないと発動しないぃ」となぜかごねられた。
気のせいか奴の口調が微妙に間延びしたおかしな感じに…?
「ラ…ラブリーフレッシュな勇者」
ともかく言ってみるが、声はできるだけ小さくする。
「伝説の!」
「伝説の!」
ただ今のはちょっとやけくそ気味。
この先はなんとなくわかったので、声が重なる。
「「勇者「おいちゃん」見参!」」
おいちゃんって誰だよ!?
心で突っ込んだ瞬間、自分の体から光が放たれるのを感じる。
空に伸ばした右手に次々と光の筋が集まり、それらがすべて俺の力になっていくのがわかる。
ステータス確認スキル 呑兵衛スキル 筋力強化スキル 悩殺スキル 呪い無効スキル 嫌がらせスキル 美形スキル 変態すぎる…
交互におかしなスキルが入ってくるのは気のせいか?
悩殺スキルって…男が何を悩殺すんだよ…それに、感想みたいなの途中入らなかったか?
「来たね~ 来たよ~ つ・い・に・チートだよぉ」
気が付けば、薄黄色いシャツとステテコに、茶色い腹巻と言う昔ながらのファッションをした豆粒サイズのおっさんが、目の前に浮かんで腹踊りをしていた…。
はげかけた頭、でんっとせり出したお腹、背は低く、全体的にまるいフォルム。顔立ちは何とも残念すぎる容姿で、しかも、こちらの視線に気が付いてにたりと笑った顔が…。
「きもっ」
唇の間からのぞいた黄色い歯も汚かった…
「おいちゃんはぁ~ 未来のチミなんだけどもぉ?」
チミってなんだ…コントのキモいおっさんか?
「俺の未来はあの目が金色のちょっと美形を希望だっ」
変わらず膨れ上がる力を吸い上げながらも反論すると、おいちゃんはうへへへへへぇと笑い、腹巻の中から手鏡を取り出すと。
「うふん」
にたぁと笑みを浮かべ…
ぱりんっ
鏡がなぜか耐え切れずに粉々に砕け散った・・・・。
「鏡も耐え切れない顔ってどんなだ!」
叫べば、ことさらゆ~っくりと振り返るオッサンは、なぜか腹巻の中から懐中電灯を取り出して自分の顔をしたからライトアップし…
「チミと同じぃ」
かなり不気味だった…豆粒サイズのくせに…。
「違う! 絶対違う!」
ずもももも~っと目の前に迫られて俺は青ざめるが、いかんせんいろんな力が際限なく入ってくるので現在動けない。
何が起きているのかと現実逃避しつつよくよく考えれば、暗闇に閉ざされたとはいえ、ココには確か勇者軍団が集結していたのだ。
たぶん…これ、勇者の力を吸い取ってるよな…。
おそらく、この後に襲ってくるであろう疲労感は並みじゃないだろうと思う。
となると、この状況を何とかした後は、俺はしばらく動けないということだ。
とりあえずおっさんの気持ち悪さには蓋をして、今はこの事態をどう打破するかに集中することにしよう。でないと、全ての力を吸い取りましたー、何もせずに気絶しましたーなんて恐ろしいことになりかねんっ。
「おっさん!」
「おいちゃんってよ・ん・で うふっ」
おっさんはくねくねと腰を揺らし、ぶにぶにのオケツを振って、ウインクをした。
「ぐはぁ!」
軽く一発で俺のゲージが赤ゲージまで下がった!!
魔王戦、裏ボス戦より強敵が現れたようである…。




