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Lv.53 正体が!?

「ゴルよ、そなたガルフォードとかいう名前じゃったか…」


 メルニア婆さんがゴルベーザをちらりと見上げて尋ねると、ゴルベーザは首を傾げて答えた。


「そうらしいな」


「お前の名前認識どうなってんだっ」


 俺がゴルベーザと初めに呼んだ手前、罪の意識を感じた…のは一瞬で、カラッとした笑顔で笑い飛ばすゴルベーザに俺は呆れかえった。

 

 まぁ、それはともかくとして


「魔王と知り合いなのか?」


 俺がしようとした質問をグウェンが先にすると、ゴルベーザは腕を組み、こちらを見つめる魔王と向き合って数秒…首を傾げた。


「いや、記憶にないなぁ」


 その言葉に魔王がしょぼんと項垂れる。捨てられた犬のような風情だ。


 同情してやりたいのはやまやまだが、忘れかけていたとはいえ、まだ戦闘中だ。叩きのめしてから同情することにしよう。

 もちろんその頃には忘れているだろうが…。


 俺が剣をぐっと握りしめると、魔王も殺気に気が付いたのか表情を改める。

 当然やる気だ。


「無様よな、ガルフォード。そんな人間どもと共に人間並みの力で、人間として暮らすなど。かつての魔王の片鱗も見受けられん」


 へぇ、ゴルベーザはかつての魔王だったのかぁ…


 全員がうんうんと頷き、俺ははっとして目を丸くする。


「魔王!?」


 これにも全員がうんうんと頷く。

 

「なんでお前ら驚かないんだ?」


 俺が胡乱な目をして全く驚く様子のない仲間を見れば、ロマが胸を張って魔王に向き直り、俺を指さした。


「アキは伝説の勇者よ!」


 なぜそこで張り合うんだー!?


 俺はぎょっとして魔王を見やれば、魔王は目をまん丸くして見開き、驚いていた。

 ロマはそれを確認して満足そうにうんうんと頷き、俺に向き直る。


「魔王なんて勇者並みにポピュラーなんだもの。アキの方が珍しいのよ」


 いや…珍獣比べのようなことをされて勝ってもあまりうれしくはないんだが…

 

 チラリと魔王の方を見やれば、目を丸くして驚いていた魔王が、新しいおもちゃを見つけたかのようににやりと笑みを浮かべるのを見た。

 

 なんかまずい気がするんだが…


 俺は注意深く魔王を見ると、一瞬奴の体がぶれた後、俺の目の前にその姿が出現した。


 ! やばい!


「瞬間移動は我等の十八番だ。楽しませろよ伝説の勇者」


 どん! とあいさつ代わりとばかりに鳩尾に蹴りを入れられ、俺は体を苦の字に曲げ、「げほっ」と息を吐き出した。

 

 なんだか知らんが獲物忍識されたじゃねぇか!


 という文句も口から出す暇もなく、瞬間移動による攻撃が連続で続く。

 最初の1発はともかく、後の数発は結界でしのぎ、何度か攻撃を受けていると、次第に身体能力補正が効いて、魔王の動きが見えるようになってきた。

 

 魔王は楽しそうに一方的な攻撃を繰り広げているように見えるが、少しずつ少しずつ俺の体も反応し、1発、2発と避けられるようになってくる。


 そうしてある程度余裕ができた俺は、周りを見ることもでき、何やら足元がえらく光ってるな…と異変を感じて視線を少し下に下げた。


「・・・!?」


 驚きのあまり無意識に魔王の蹴りを素手で受け、つかんでそのままえいやっと投げ飛ばす。

 

 魔王は思いっきり広間の壁に叩きつけられた。


 あれ?…そんなに力入れてないぞ?

 クマの着ぐるみの時ぐらいの能力、もしくはそれ以上の力を感じて手をにぎにぎと開いたり閉じたりしてみる。

 何も変わった感じは受けなかったが…


 と、その前に…


 俺は再び床に目をやった。


 太い光の線が床を走っている。

 いや、床だけでなく空中にも浮かび上がり、弧を描き、複雑な文字を書き、広間だけでなく廊下も、おそらくは外も巻き込んで広がり続ける。


「・・・魔方陣?」


 銀色に輝く、おそらくはこの王都を飲み込むほどの大きさの魔方陣が展開されていた。


 それを発動させたのは・・


「婆さん?」


 目線をメルニア鹿婆さんに向ければ、鹿の着ぐるみがほろほろと崩れている。

 

「婆さんのストリップは見たくないぞ」


 ゴルベーザが突っ込むと、婆さんは呪文をぶつぶつつぶやきながら杖でゴルベーザの頭を殴った。

 

 ぱかぁん! どさっ・・・・・


 ゴルベーザ、婆さんの渾身の一撃に倒れた…。

 弱いな、元・魔王。…じゃなくて!

 

「味方を倒すなよ婆さん!」

 

 貴重な戦力がっと叫ぶ俺は、ほろほろと崩れる鹿の着ぐるみ婆さんの後ろに立つ、先代の伝説の勇者の残りかすであるクマの着ぐるみもホロホロと崩れていることに気が付いた。


 少しずつ、少しずつ、姿を現すのは、背が高く、髪は黒色、瞳は金色の…


 ロマとグウェンが息を飲む。

 

 俺は驚愕に目を大きく見開き、ハクハクと口を動かして奴を指さすと、奴はにやりと微笑んで手をひらひらと振った。


「遥か先の未来で間違って過去に飛ばしたお前の一部だよ」


 奴はそう告げ、広間はまばゆいばかりの銀色に包まれる。

 婆さんの魔法が発動したらしい。


 俺は光の中、はくはくと口を動かし続け、目を開けられなくなって瞼を閉じると、ようやく声を上げた。




「俺ぇぇぇぇぇぇぇ!?」



 伝説の勇者の残りかすは、どうやら未来の俺の残りかすだった・・・・



 


 


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