Lv.48 暇つぶし
残酷描写あります 苦手な方はお避け下さい。
魔王様視点です。
「つまらんな…」
男は玉座に座り、長い脚を組み替え、頬杖を突きながら広間の中を見回した。
他人の玉座、それも人間の国で最大の国の王の席に奪えば少しは退屈しのぎになると思い、思ったよりも時間をかけて計画し、ようやくここに辿り着いた。
神殿という忌々しいものを壊すのには思った以上の時間がかかり苛々したが、それでもその先にあるものはきっと楽しいはずだと思い、耐えて3年ほどかかけて壊した。そして徐々に進行してさらに数か月。
ようやくここまで来たが…。
人間の国王であったモノは部下によりどさりと床に落とされ、その姿を見た王妃、王太子、それから…まぁ、とにかく一塊に集められた十人程度のこの国の王族達が「ひっ」と小さく悲鳴を上げて身を寄せ合う。
「人間は弱すぎだ。これならばあれと戦っていた方が面白かったな」
思い出すのは、絶対的に強く、けれど魔族であるのにひどく人間に友好的であった変人でもある先代魔王。
挑んでも挑んでも勝てず、策を練ってようやく成功したのは、記念すべき3万回目の奇襲だ。
常に奴に庇われ、戦闘中も安全圏でお茶を飲んで過ごす目障りだった側室達を、実力行使でなく仲間を使って旅行にでも出させ、後宮を空にして先代には一言
『実家に帰らせていただきます 側室一同』
という手紙を渡し、ありえないほどのショックを受けた先代を襲うという作戦が唯一成功した。
あらゆる力を封じ、二度と自分の前に現れて王の座を取り返されないよう念には念を入れて呪ったが・・・
「あの状態でも挑んでくるかもしれなかった。居場所ぐらい把握すべきだったか…」
ぽつりと呟いた彼はふと城が(と言ってもかつての姿は影も形もなく壊れているが)大きく揺れたのを感じた。
どうやら共に連れてきたアンデッドドラゴンが暴れているようだ。
「まだ抵抗的な騎士でも残っていたか?」
ほんのわずかに瞳に喜びが浮かんだが、よくよく考えればあの竜にほとんどの騎士はやられている。自分が出張って楽しめるような人間はいないだろうと気が付き、またもやつまらなそうに瞳は沈んだ。
アンデッドドラゴンが騎士を倒したのか、再び静けさが戻ると、何をしようかとぼんやり考える。
王族の子供達の鳴き声が響く中、ちらりと彼等に視線を向ければ、王太子である青年がこちらを射殺さんばかりに睨んでいた。
反抗的なのは面白い。
部下に視線を送れば、部下の男は頷き、子供達を庇うようにして前に立つ王妃を押しやり、王太子の腕を掴んだ。
横に押しやられた王妃は慌てて取りすがったが、邪魔とばかりに男は彼女を床に叩きつけ、そのままこちらを向いた。
魔族の部下に引きずられ、王妃が泣き崩れる中、この国の王太子が目の前にやってくる。
「私が死んでもこの国には勇者達がいる。お前の野望などすぐに消えるぞ」
手足がかすかに震えているが、それでも拳を握って耐え、ぎっと睨んでくるその姿は称賛に値する。
反抗的なのは面白い。
だが、力のない者の反抗など意味はない。
「殺せ。・・・いや、先にそちらの子供達を殺して絶望を与えてからにするか」
あっさり殺すより、反抗心も希望も何もかもを絶望に染めてやる。
王太子がはっと息を飲み、王妃が背に庇う子供…弟や妹達へと目を向けた。
力なき者には、絶望を与える方が面白い。
部下に殺すよう合図すると、部下の男は何の感情も籠らぬ無表情で剣を振り下ろした。
王太子の真っ青な表情に、にやりと口元に笑みが浮かぶ。
だが、視界の端に茶色いものが引っかかり、それは剣が子供の首に辿り着く寸前、ものすごい音を立てて部下の男を吹っ飛ばし、その場にくるりと宙返りして床に降り立った。
刺付きハンマーを持ったコグマが、部下の立っていた場所に立っていた。
「主役交代の日は近いよな…」
そんな場違いなのんびりした声に広間の入り口へ目を向ければ、そこには・・・・
なぜか着ぐるみを着た集団がいた。
彼等は広間の入り口に次々と詰めかけており、広間にいた部下たちも、王族も、場違いすぎるイキモノにしばし言葉を奪われて見つめていると、彼等は一斉に一歩踏み出し…
ぎゅむっ
入り口で詰まった。
じっと見つめていると、ほんのわずかに全員がじたばたし、小柄な一人がスポンッと抜けたことでバランスが崩れ、そのまま全員床にスっ転んだ。
・・・・
「この国には命知らずの芸者がいたのか…?」
ぽつりと呟けば、黒いクマの着ぐるみを着た男がのっそりと起き上がり
「コント集団じゃないからな!」
なぜか言い訳をした。
説得力はもちろんなかった・・・・。




