Lv. 46 喋った!?
魔王を倒してさっさと終わらせる!
なんて言っても経験の浅い俺ではとてもとても…というのが実は正直なところだ。
できれば今の残虐魔王ではなく、女好きのハーレム魔王との対決がよかったなぁ…と、遠い目をしながら、俺達はクマの着ぐるみの異常な能力を駆使して魔物を吹き飛ばす無双をしていた。
結局のところ、ギルドの地下で剣は手に入らなかったので素手で戦っているのだが、このクマの着ぐるみ、体全身を覆っているので拳を繰り出しても手が痛くならないし、多少敵に弾き飛ばされてもダメージがほとんどない優れものだ。
唯一の弱点があるとすれば…
仲間の攻撃だな。
「きゃあっ」
言ってる傍からロマがゴルベーザの背中に突撃し、パンダが「ごふっ」と声を上げ、ビタンッ!という音と共にその場に倒れた。
「ごめんなさいゴル。まだ速さになれなくてっ」
ロマコグマがゴルベーザの手を取り、グイッと立たせようと力を籠めれば、そのままゴルベーザは空へと吹っ飛んでいく…
「うおぉぉっ…ぐはっ!」
可愛いパンダから不気味なおっさんの叫びとダメージ声が響いて落ちた…。
コグマ…どこまで最強補正をかけてあるんだ。
俺は遠い目をしながらも敵を倒していく。
敵の数は順調に減っているし、グウェンの姿もすぐ傍にある。もうすぐ魔王に辿り着く条件は揃っていると言えるだろう。
「しかし…なんか忘れてるような気が…」
何かが足りないような気がするのだが、この時の俺は深く考え込んだりせず、先へ先へと進んだ。
昔の慎重さをこの時働かせていれば、この後、あんなことにはならなかっただろう…。
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「まぁ、そうだよな、普通に考えて…」
グウェンの案内で辿り着いたのはやはり王都の中央に建つ白亜の城である。
普段であれば観光気分で周りを歩き、日本の城とは違ったその壮麗さに、すごいなぁと呟くだろう城は、別の意味ですごかった。
城の入り口である門は蝶番がはずれたような状態でぐらぐらしており、その下には魔物と兵士らしきモノが落ちている。
その辺りは凄惨過ぎるのでできるだけ見ないようにし、門の向こうを見やれば、尖塔が聳え立つ城の、その尖塔がいくつも崩れ、城は半壊していた。
そして、その尖塔の一つに足をひっかけ、現在巨大な骨と皮でできたような黒い竜が城の庭を睥睨していた。
「美しき城がっっ」
グウェンの愕然とした声に俺は城を見上げる。
ギルドに行く途中にも見えていたが、観光しようとも思わなかったため、元の城の形はうろ覚えでしかない。だが、うろ覚えな元の形と比べても、今の城の姿はあまりにもかつてと違い過ぎていた。
「あの竜が邪魔ね」
ロマは城を見上げてぽつりと言うなり、魔法で攻撃を仕掛ける!
「打ち合わせ無しか!?」
俺はぎょっとしてグウェン、ゴルベーザと共に城に向かって走りだした。
頭上では木の根に串刺しにされようとしている竜が木の根を避け、咆哮を上げて翼をはためかせた。
轟々と唸る翼から生み出される風が俺達に襲いかかるが、さすがは伝説の勇者の遺品、激しい風もわずかに押される程度で問題なく進める。
門を抜けると、俺達は広いかつては美しかったであろう花の踏み荒らされた前庭で3方向に分かれ、俺は後をついて来たロマに向かって叫んだ。
「ロマ! 足場頼む!」
「まかせて!」
先ほどのファンシークマの作戦と同じだ。
空を飛ぶやつにはまず近づくことからしなければ。
木の根の足場を借り、着ぐるみ補正で高速スキルを発動。
まるで世界が止まっているかのような状態で、さらに自分の複製を生み出し、黒い竜の頭上へと飛び上がる。
狙いは竜を地上へ叩き落とすこと!
翼の付け根あたりと首の付け根あたりを狙い、俺を含む5人が繰り出すのは
「「「「必殺、かかと落とし!」」」」
!?
俺の複製がしゃべった!?
て言うか…
「技名叫ぶな! 恥ずかしいわ!」
しかも全員タイミングがバラバラ。
まぁ…それでも、連続攻撃という形で竜は地上に叩き落としたけどな…。
地面に降り立つと、ムクリと竜が頭を上げかけ、俺は振り返りつつ飛び上がり、竜の骨頭の横っ面に回し蹴りを放った。
どごん!
鈍い音と共に竜の頭が再び地面に叩きつけられ、それを複製達が数度繰り返した後、呆気にとられていたグウェンとゴルベーザが我に返って止めを刺した。
「うむ、よくやった」
「まぁまぁだよな」
「ロマ、結婚しよう」
複製はそれぞれ言葉を放ち・・て
「だからなんで話すんだ? そしてそこ! 何プロポーズしてる!」
ロマに迫っていた黒いツキノワグマの着ぐるみは、「喜んで」と体をくねくねさせるロマの前で跪き、うんうんと頷いていた。
「ロマ! それは俺じゃないぞ!」
俺、ある意味ピンチ!?
ロマ、それは俺じゃないと気が付いてくれー!




