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Lv. 43 真打登場…?

 ギルドの地下に降りると、やけに地上がどんがらがっしゃんとうるさくなり始める…まぁそこは地上組に頑張ってもらうとして、俺は地下をうろついている冒険者を捕まえて剣の保管庫を尋ね、先へと急いだ。


 走っている最中に時々地響きまでしだすので、一体地上で何が!?と何度も思うが、剣がなければ何もでき無いのだからとにかく急ぐ。


 冒険者の話によると、ここに保管されている剣は全て予備とはいえ良品ばかりだから安心していいということだったが…。


 狭い通路を何度か曲がり、ようやく見えた倉庫に飛び込んだ俺は、廊下と同じようにぱっとついた明かりに照らされた倉庫の中を見て、ガクリと床に手をついた。


「なぜファンシー…」


 学校の体育館と言えばイメージできるだろうか、それぐらいの広さの倉庫の中に、整然と並べられたクマとウサギのぬいぐるみたち・・・


 剣じゃねぇし…


 部屋を間違えたのだと思い踵を返すと、ゾクリと背に悪寒が走り、ばっと振り返る。

 俺が振り返った時には、目の前に巨大な黒いクマが…


 って、毎回目の前に…てパターンか!


 視界はクマによりブラックアウトした。


_________________


 地上では敵の数が増えていた。


 ガーゴイル、ワイバーン、ゴブリン、オーク…。


「なんだか気持ち悪いわ」


 ケガ人の治療を粗方終えたロマが、メルニア婆さんと連れ立って外に出るとぽつりとつぶやく。


「何がじゃ?」


 敵が気持ち悪いというのならばまぁ相手は魔物だ。気持ち悪いのが普通だが、ロマが言いたいのはそうではなく、ちらりといつもは自分の少し斜め前にいる人物を思い出して続ける。


「アキがいたら、何かどうでもいいことを叫んでいそうなのに、いないからなんだか物足りなくて」


「突込みに飢えておるのじゃな。奴は突っ込みの勇者じゃからな」


 アキがここにいたならばあきらかに「どんな勇者だよ!」と叫びそうな内容をメルニア婆さんはさらりと告げる。

 

「「・・・・」」


 しばし沈黙が流れた後、やはりメルニア婆さんも突っ込み不足で気持ち悪さを感じながら、頭をぶんぶんと振った。



「とりあえず敵じゃ。少しでも減らさねば」

 

 気を取り直して婆さんは杖を構える。


「わかったわ。でも、ここは森じゃないからあまり戦力になれないけど」


 ロマは腰につけていた小さな袋から植物の種らしきものを取り出すと、それを地面にまき散らす。 

 すぐ傍に森があれば種など蒔かずとも蔦や木の根を操ることができるが、人の作りだした町の中では不可能なので、種をまいて蔦を生み出した。

 数が心もとないが、無いよりはましだ。


「ほれ、そなたも戦わぬか」


 メルニア婆さんはそういうと、後からやってきたふらふらとしている緑の騎士ことグウェンの背中を杖で突いた。


 アキが地下に降りた後、宣言通り婆さんのどつきによりグウェンは一発で目を覚ましたが、やはりガーゴイルの石の体に投げられたダメージがあるらしく、いまだふらふらしているのだ。


「二日酔いの気分だ…」


「それを言うなら頭痛じゃろうて。ほれ、とにかく戦え」


 そういうと、メルニア婆さんが投げてよこしたのは緑の柄のハルバートである。


「!? これはロマの森近くで亡くしたはずの俺のハルバート? なぜここに!?」


 驚きまじまじと見つめるグウェンに、メルニア婆さんはギルドのとある一角を指さした。


 そこには大きな物入れが置いてあり、よくよく見れば『落し物ポスト』と書かれている…。


「おっ…落し物…」


 がくぅっとその場に膝をついて項垂れたグウェンは、見つかったことに喜ぶべきか、誰もハルバートに見向きもしなかった事実に悲しむべきか一瞬悩んだが、首を振ってぐっとハルバートの柄を握りしめると、半ば自棄の様に敵へと突っ込んでいったのだった。


「これでも名工の作なんだー!」

 

 叫びながらかけていったグウェンのハルバートは、持ち手から槍、斧頭まで、全てが藻色の緑色をした不気味な武器だった…。


 きっと誰も欲しいと思わず、放っておかれたのだろうなとグウェンの背中が泣いている姿を見つめながら、婆さんはうんうんと頷いたのだった。





「しかし…多いのぅ」


 いくら魔物ホイホイのゴルベーザがいるとはいえ、空を覆い尽くすかのようなガーゴイルに、地上をざりざりと音を立てて歩いてくる魔物たち、明らかに人間は劣勢に立たされている。

 

「ふ…ここは一つ、巫女の真の力を見せてやろう!」


 ぶんっと杖を振り回し、空に向かって宣言したその瞬間・・・足元のぬかるみに足をとられ、ずるりと転びかけた所を何とか堪えた!


 しかし…


 ボキッ…


「ぐほぅ!」


 …メルニア婆さん…雨の中、ぎっくり腰により戦線離脱…


「何やってるの、おばあちゃん~!」


 ロマが叫び、そんなロマの頭上からもワイバーンが襲いかかってくる。


「きゃああああ!」




 上がる悲鳴

 

 駆け抜ける影…


 そして…




「よらないでよ変態!」


 ロマはワイバーンを蹴りで撃退!

 

 助けに入るはずだった影はそのままズザー!とロマの後ろでスっ転び、その場にばたりと倒れた。


「…そこはさすがに真打登場のシーンだと思うんだが…」

 

 スっ転んだ影からくぐもった声が響く。


「え?…アキ? その姿はアキなの?」


 ワイバーンを蹴りで撃退したロマは、声に反応して振り返ると、地面にばたりと倒れ、ヒーローになりそこねたクマのぬいぐるみ…ならぬ、クマの着ぐるみに目を丸くしたのだった。




 

 最強の真打登場…?



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