Lv.32 真の実力?
戦闘開始!
「アキ! カマンハーチは森の戦闘蜂よ! 落とす素材のチーズは濃厚でとってもクリーミーな貴重な食材だけど、ものすごく強いの!」
落とす素材はチーズなのか…
やはりあのチーズなのか…
思わず項垂れたが、それどころではない。
ロマが悲鳴を上げるだけあって、メルニア婆さんが咄嗟に張った結界を今にも壊しそうな強い勢いでハチ達が突進してくる。
どごんっ ごごんっ
「森の中では奴らに有効な炎は使えないな」
少しは魔法が使えるグウェンがハチの弱点である火を使おうか考えたようだが、森に燃え移る可能性の方がやはり高いようだ。
「だったら…」
俺は剣に例の衝撃波を宿らせ、剣を横に薙ぎ払った。
バシュウゥッ!
モノが斬れる音が響き、数匹ぼとぼとと足元に転がる。
これならいける!
「駄目じゃアキ! 結界まで斬れおったわ!」
「「「何~!?」」」
男三人が叫び、頭上を巨大なハチが通過していく。ついでとばかりにぶんっとカマが振られ、俺は咄嗟にしゃがんで避けた。
パラリと髪が数本落ちてきた。
どんだけ切れ味良いんだあのカマ!
「どっせぇぇぇい!」
結界が消えたので、さっそくゴルベーザが斧を振り回してハチを叩き落とす。
巨大な戦斧は振り回してもやはりスピードに欠けるため素早いハチにはあまり有効ではない。よって、斧の腹で文字通り叩き落としている。
グウェンは俺の衝撃波の使い方を見て刀身に炎を宿らせ、ハチを威嚇しながら確実に斬りおとしていく方法を編み出した。
こちらがやや優勢に見える。しかし、戦闘蜂と呼ばれるだけあってハチも負けてはいない。
数匹お尻をこちらに向けたかと思うと、お尻から鋭く尖ったナイフぐらいの大きさがある針を飛ばしてきた。
「うおっ あぶねぇ!」
全員変な格好で避けた。
ロマは相性が悪いのか、蔦や木の根などを使って攻撃しているが、あまり当たらないようで皆の補助に回っている。
婆さんも現在皆のサポートで能力の上昇を全員に掛けていた。
「わしに向かってくる攻撃は防いでくれよ」
数の多さに翻弄されている所にメルニア婆さんの要求。なかなかの無茶ぶりだ。
だが、婆さんの補助魔法がないと正直きつそうなのでゴルベーザが巨大戦斧を盾に使う方法で婆さんを守りつつ、敵を減らしていく。
数…数…数ときたら!
「グウェン! 増やすぞ!」
俺は叫ぶと、自分を3人複製し、グウェンを同様に3人、ゴルベーザは武器が大きくて何人もいてはかえって邪魔になるので1人だけ複製した。
自分と同じ姿の味方がこれで増えたことになる。
これで戦闘が楽に…
そう思って見ていると、俺の複製がよろよろと前に出てあっちにふら~、こっちにふら~っとよたついている。
まるで酔っぱらいのような動きに何事かと見れば、顏もなんだかいつもの俺の顔と少し違う…。
まぁ、今の顔と同じなのだからダンディな他人顔ではあるのだが、いつもはしないような顔だ。
なんだろう…簡単にいうとスケベ顔?
鼻の下を伸ばし、声が出たならばでへへへへ~と気味の悪い笑いを浮かべていそうな俺は、よたーよたーと目障りによたついた後、突然右足を軸にし、ぐるりと回転をかけて左足で衝撃波を放った。
その動きには高速スキルがかかっている。
「あぶね!」
俺は背の高い男衆の頭を抑え込み、高速スピンで放たれた衝撃波を何とかやり過ごした。
しんと静まり返るその場に、虫の羽音はなく、辺りを見回すと、カマンハーチが全て地面に落ちている。
「なんと…」
メルニア婆さんも驚きに目を見開き、俺の複製を見ている。
複製は、にたぁぁぁっと笑みを浮かべると、他の複製と共に、役目は終えたとばかりにふっと掻き消えた。
「…複製ダンディ+キモオヤジ系な俺…めちゃめちゃつえぇ」
思わず呆然と見惚れていると、後ろからメルニア婆さんに木の杖で殴られた。
「自分に感心するでないっ。あれはそなたの本来の力よりも少し弱いはずじゃぞ」
…つまり、俺は現在あれぐらいやれて当然だということになる。
俺は、意外なところで現在の自分の隠れた実力を知ったのだった・・・。
だが、あの気持ち悪さはどういう意味だ!




