Lv.29 疲れはストレス!
白い鎧軍団はバラバラと現れ、俺達を囲んだ。
数は10人ほどだろうか。全員剣を抜いているところが物騒だ。
こういうのって普通盗賊とかの役目だろと思ったものの、この白鎧軍団にもなにかしらの事情があるのだろう。何しろ俺達を『伝説の勇者の一行』て言ったからな…。
「あはははははは!」
俺が思わず乾いた笑いを放つと、白鎧達ががしゃっと音を立てて動揺する。
「アキ? 大丈夫?」
ロマが心配そうに寄り添い、俺はそれに頷くとにっこり笑って白鎧のリーダーのような奴の前に立った。
「よくわからんが俺達を取り囲む事情があるというなら話を聞こうじゃないか。俺は平和主義だからな。それから…」
ぐっと腰を落とし、地面をどんっと勢いよく蹴ると、そのまま飛び上がり、白鎧に回し蹴りを放つ!
「こっぱずかしい名前で呼ぶんじゃねぇよ!」
平和主義どこ行った!
自分で自分に突っ込んじまったよ…。
「隊長! 貴様っ!隊長に何をする!」
ふわりと地面に降り立つと、ジャキリと音を立てて剣を向けられ、俺は両手を上げる。
「不可抗力だ」
「あれのどこがだ!?」
おぉ…珍しく突っ込まれる側だよ俺。
「じゃあ聞くがな、善良な市民が突然鎧軍団に囲まれてこっぱずかしいネーミングで呼ばれ、さらに命を狙われて抵抗しないとでも思ってるのか?」
静かに問いかける。
どうやら俺は怒っているらしい。
心が冷静になればなるほど無表情に問いかけてくると昔弟に言われたが、現在その状態だ。
そして、なぜその状態かと言えば原因は一つ。
疲労だな。
現代っ子が昨日から歩きづめだ。昨日はまともに睡眠をとっていないし、しかも竜なんてわけのわからん見たこともないものと対峙して緊張もしていたのだろう。ようやく王都に帰ってまともなベッドで眠れると思っていたのだ。
とにかく疲れた、早く寝たい。
ところがどっこい、この鎧共が邪魔するせいでまだまだ王都までは1時間ほどもあるのに、時間を食うわ、戦闘だわ、伝説の~とか言われると腹が立つだろう!
戦いも血もダメだが、喧嘩ならばある程度やれる。
身体能力は上がっているのだから、あのリーダーのように吹っ飛ばすことは可能だ(リーダーで試したともいう)。
やるというならやってやる(疲れのため、非常に好戦的モードです)
「伝説の勇者は世界の災害だ! 我等勇者ギルドが責任を持って狩る!」
勇者ギルド…ギルド!?
「勇者って団体か!?」
振り返れば、メルニア婆さんがこっくりと頷く。
世界に数人とかそういうのじゃなかったのか~!?
勇者が複数いるとなると、伝説のナントカってやつは奴らの力を奪う驚異なわけで…危機を感じる勇者御一行様が俺を襲いにわんさかと…ひょっとするとギルドの依頼書に賞金首として張られている可能性もある。
いや! 待て待て…いくらなんでもそれだと情報が早過ぎだ。俺が伝説のナントカとしての力を使ったのはつい先ほどだ、それがいきなりギルドに目をつけられるほど早く情報が流れるなんて言うのはおかしい。
「お前ら、聞くがその情報どっから出た?」
鎧達は俺達に剣を向け、油断しないようじりじりと距離をとりながら答える。
「答える義理はない! 皆、かかれぇ!」
リーダーじゃない奴の号令で鎧軍団が一斉に襲いかかってきた。
だが、こちらの疲れによるイライラはピークだ。
日頃大人しいグウェンも剣を抜き、クエストではいいとこ無しのゴルベーザも巨大な戦斧を振り回し、婆さんまでもが杖で鎧の男達を翻弄し、参戦した。
「あら、私の出番はなさそうね」
ロマの周りの地面には、いつでも攻撃できるよう蔦のようなものが見え隠れしているが、今回は男二人と婆さんが頑張ってくれそうだ。
俺も出損ねて見学する。
「その冑! 鎧じゃないからわからなかったが、貴様グウェンか! 緑の騎士がなぜ伝説の勇者・・ごふっ」
グウェンを知っているらしいが、俺は伝説のナントカなんて言葉を聞いて思わず近場の石を男の冑めがけて投げていた。
結果はクリティカルヒットだ。奴はそのままふらふらと倒れた。
「アキ」
獲物をとられたグウェンは不満そうな雰囲気だ。
相変わらず顔は冑なので表情は読めないが、なんとなくわかる。
「悪いなグウェン、知り合いだったかもしれんが、ちょっと聞き捨てならん言葉を聞いたもんで」
「何を言うかアキよ! 伝説の勇者とは世界のたった一人に許される名ぞ!誇るのじゃ!」
婆さんの声に振りかえれば、メルニア婆さんは、いつの間にか
鎧に捕まっていた・・・・
「何やってんだ!」
「わしはか弱いんじゃ! なんとかせぇ!」
捕まってるのに元気よくキレるってどうよ…
「おまえら、今すぐ抵抗をやめろ! さもなくばこの老婆がどうなっても」
「それが勇者のやることか!」
珍しくグウェンが声を張り上げる。
確かに老婆を人質に抵抗を収めようというのは仮でもなんでも勇者を名乗る集団のやることではない。
「ぎゃああああ~!」
今度は何だと悲鳴に驚いて振り向けば、そちらではゴルベーザが戦斧で敵を薙ぎ払い、鎧達が軽々と宙を舞っていた。
当然ゴルベーザは俺達の目の前で繰り広げられる人質云々には気が付いておらず、現在嬉々として鎧5・6人を引き付けている。力任せだが意外と強い。
「勇者ギルドに所属するものがなんと情けない!」
「離さぬか! わしは巫女ぞ! 神に仕えし巫女ぞ! 手荒な真似をすればたちまち天罰がくだるぞ!」
「とにかく抵抗するなと言っているだろうが!」
・・・・・・・
・・・・
なんだこの混沌。
「アキ、全員締め上げましょうか?」
にょろにょろとロマの足元で蔦が蠢き、俺は心配そうにのぞきこむロマににこりと返した。
「あ、アキ?」
ただ今疲労はピーク、ちなみに精神的疲労もピークだ。
ばしんっっと拳を己の平手に当てると、俺は婆さんを捕える鎧を見て笑った。
「ちょっと覚悟しとけよ?」
ブラック勇者発動!――――――




