LV.24 竜落ちる
周りを警戒しつつも、俺達はようやく山頂の赤竜の住処へとたどり着いた。
竜というだけあって、周りにまき散らされる威圧感は確かに精霊やモンスターの比ではない。これは確かに他の魔物が近づかないだけある。
だが、どんなに威圧感の強い生き物でも、今回は戦いに来ているのではなく、説得に来ているのだから怯む必要はないはずだ。…と、実は言い聞かせている。
ゲームだと、心優しい竜を説得に来たら狂っていて、戦闘、竜死亡、周りの土地もめちゃめちゃに…なんてことがあるからなぁ…。
ここはゲームじゃないんだ、と自分に言い聞かせながら村長の後ろに立った。
「赤竜様ーんっ。レピド村の者ですけどもーん、話を聞いてくださいーん」
気が抜けた…。ふざけているとしか思えない話しかけだ。
呪われてるから俺が言っても同じになるだろうが、突っ込まずにはいられない。
「赤竜さ」
『聞こえておる、早くこの場を去ね』
ずんっと腹に響くような低い声が響き渡り、俺達は全員が一瞬怯んだ。
「話をん聞いてくれん! あなたはん、本当に村にん呪いをかけたのかんー!」
グウェンが先手必勝とばかりに早口に言い切ると、しばらくの沈黙の後、ずうぅぅんっと目の前に赤い塊が落ちてきた。
いや、落ちてきたのは赤竜だ。
どこかで様子を見ていた赤竜が目の前に降り立ち、金色の瞳孔の瞳を細めてこちらを睨んでいる。
都会の小さな一軒家などすっぽり隠してしまいそうなほど巨大な体は、見上げるほど大きい。そして、その口には鋭い牙が並び、赤竜はそれをむき出しにして告げた。
『おかしな疑いをかけるな! そのわけのわからぬ呪いはお前達人間が生み出したものだっ。我はそれをうつされぬようここに来るなと言ったまで!』
その言い方だと、呪いをかけた者は他にいて、赤竜はこの間抜けで地味な呪いを受けたくないがために村人を寄せ付けなかったということだ。
「あんたが落ちてからん、呪いが広まったとん聞いたん」
俺が尋ねれば、竜はふいっとそっぽを向く。
「あれは 受け身の訓練だ」
こんな巨体が空から受け身の訓練なんか始めたら自然破壊も甚だしいと思うんだが…?
俺がジト目で睨めば、ますます赤竜は目を逸らす。
「よくわかったん。あんたん…落ちたろん」
ただ純粋に、なにがしかの理由があるわけでなく、この赤竜はドジって空から落ちたのだ。
『空の覇者が落ちるわけなかろう』
「猿もん木からん落ちるん」
俺は思わず聞こえないようにぽつりとつぶやいた。
落ちたと指摘されてバツが悪いのか、恥ずかしさのあまり当たり散らしたいのか、とにかく赤竜はイライラとしながらもそこにとどまり、聞いてもいないのにいろいろと弁解を始めた。
『あの日はおかしな結界が山に張りめぐされておった。それこそ呪いとやらをかけるために必要な範囲を覆ったのではないだろうか? おかげで我はそこに足を引っ掛けてだな』
ブツブツと呟く竜の周りに、ふわりふわりと緑色の靄が纏わりつく。
『あらあらん、随分とん幼い竜ねぇん』
どうやらロマが帰ってきたようだ。
靄からふわりと転じて幼女の姿に戻り、俺の元に駆け寄ってきて足元にピトリと抱きついた。
…幼女スキルが発動しそうだ…
「お帰りんロマん」
ロマん、て…いや、もう何も言うまいよ。これは呪い、呪いだから仕方ない…
「ただいまんアキん。この竜ん、成人して無いわよん」
竜がグルグルと唸り声を響かせる。
『余計なことを言うな精霊。我ら竜は」
「アキん。おかしなん人間見つけたわん」
『人の話を聞かぬかー!』
無視をされて竜は怒鳴るが、すでに俺達はこの間抜けな竜が犯人ではないとわかっている。となると怪しいのは索敵で見つけた山の中に潜む赤マーカーの方だ。
もちろん呪いをかけた人物自体はすでに他国に行ったとかそういった線もある。日数が経っているのだ、どちらかと言えばその線が濃い。
ちなみにロマが見つけたのは赤マーカーの人間であろう。
どんな人物か聞けば、ロマはう~んと俯き、顎に手を当てて悩みながらも答えた。
「あれん…たぶん、勇者だわん」
ロマの言葉に、俺ははっとして期待を込めて婆さんを振り返った。
やはり俺以外に勇者がいるんじゃないかー!
「婆さん!」
振り返ると、そこにはレジャーシートのようなものを敷き、村長を巻き込んでピクニックランチをするパーティーの姿があった・・・・。
気が抜けすぎだろお前等…。




