Lv.23 敵?
この呪いはどうやら息継ぎをする箇所に『ん』が付くらしい。とわかったものの、結局のところ、恥ずかしいのでできるだけ話さずに、そして素早く事件を解決させようと全員が一致した。
とにかく俺達ができることは、呪いをかけた赤竜を説得し、早々に呪いを解いてもらうことだ。
「まぁん、とにかくん、大船にのったつもりでんいるがよいん」
グウェンが心にダメージを受けながらも話し終え、村長の案内で赤竜の住む山へと向かうことになった。
赤竜の山は竜が住み始めた頃からその魔力を纏い、現在では魔物が滅多に寄り付かない地となっている。おかげで魔物ホイホイであるゴルベーザがほっと息をつく姿がちらりと見えた。
そういえば、ゴルベーザの名前は何だったかな、奴がフルボッコから回復して聞いたはずなのだが、俺の中でゴルベーザとして定着してしまったので思い出せない。
まぁ…いいか。
山を登り始めて30分。確かにモンスターの姿はない。だが、山に入った時から時折ゾクゾクと背中に悪寒が走る。
「変な気配がんするのぅん」
メルニア婆さんがきょろきょろと辺りを見回し、グウェンとロマも頷く。
「見られてるん」
「気持ち悪いわん」
俺も皆の視線を受けて頷く。これで全員がこの気配を感じていることになる。
「これは、赤竜の気配か?」
「「「「!」」」」
ゴルベーザがきょろきょろ見回す横で、俺たち全員が目を見張った。
いま、こいつの語尾に『ん』がなかったぞ。
「ゴルベーザん。呪いはん?」
俺も思わず言葉の恥を忘れて尋ねれば、彼は首を傾げて自分を指さす。
「ゴルベーザって俺か? ははははっ、あだ名なんて初めてつけられたな」
俺の中ではあだ名じゃねぇし…言わないけど。
喜ぶ彼を見つめながら俺は辛抱強く、かなり睨みつけてはいたが、返答を待った。
ゴルベーザは笑いをひっこめると、すまなさそうに笑みを浮かべた。
「俺は呪い全般全く効かないんだよ」
その瞬間、俺の中にある仮説が立った。
何かで読んだ物語では、呪われた者は重複して呪われることがないとか。
もしそうだとしたら、ゴルベーザの魔物ホイホイは呪いじゃなかろうか…と。
・・・・なんていうのは小説じみた仮説だよな。
この世界では幼女好きがスキルになるくらいだ。魔物ホイホイがスキルでも何ら不思議はない。どちらかと言えばそちらの方が信憑性が高い。
ま、なんにせよ、呪いが効かないってことなら赤竜に呪われかけたらこいつを盾にしよう。うん。
そんなことを考えた後、俺は再びぞくりと悪寒に襲われてぶるっと身を震わせた。
「ロマん、おいでん」
スキル幼女好きが発動し、俺はロマと手を繋ぐ。
いかがわしい行為じゃないぞっ、視線の危険度を考えたら発動したんだ。
ロマは何ら疑うことなく俺と手を繋ぐ。
俺は微妙な気分になりながらも、スキルに突き動かされ、創造魔法を展開していた。
自らの意志というより、幼女好きスキルの賜物というべきか、特に何を想像したわけでもないのに索敵の魔法を広範囲に広げ、悪寒の元を探る。
「赤竜はん、山の上かん?」
語尾を気にしたら負けだっ。今は一刻も早くこの呪いを解くことに集中しろ、俺。
心で葛藤している俺の前を行く村長は頷き、山の頂上部分に赤竜の住む洞穴があると教えてくれた。
と、いうことはだ。
俺は首を傾げる。
「敵がん、もう一人いるん」
俺の言葉にパーティーの表情が引き締まる。
「どういうことだ? 敵とは?」
ゴルベーザは辺りをきょろきょろ見回して警戒を強め、ロマがつないだ手をぎゅっと握る。
敵、はどちらかと言えば一人ともいえる。
頂上付近に鎮座している生物は大きめの緑色の点として感じられ、もう一つの点は赤色。どう考えたって赤は危険信号だ。
「婆さん、いつ襲われてもんいいようにん、結界をん張ってくれ」
「まかせろん」
「グウェン。ゴルん、警戒をん。ロマん、ここも森だん、精霊としてん何かん感じないかん?」
ロマははっとして頷くと、ふわりと緑の靄に変わった。
『探ってんみるん』
ロマがふっと姿を消し、俺達はとりあえず山頂方向へと進む。
どうも、きな臭い感じがするぞん…
て、精神までも侵されたー!
俺の心はマイナス50のダメージを受けた・・・・




