Lv.12 仲間が加わった!
昼食と魔法訓練を終えて俺達は目が覚めた自称緑の騎士グウェンに、森の魔女の問題は解決したことと、俺達の素性を明かした。
「この子が森の魔女っ!? そして君があの伝説の勇者だと?!」
どの伝説の勇者だか知らんが、ガシャガシャと鎧を鳴らしながら、グウェンが俺とロマを指さしながら叫んだ。
声は冑でくぐもっているのでそれほど大きくないが、動く度に鳴る鎧がとにかくうるさい。
「その鎧脱いだらどうだ?」
思わず指摘すると、彼は俺からずさっと飛び退った。
「貴様っ、スケベだなっ」
「…なんでだよ。まさかその下に何も着てないわけじゃないだろうに」
気色悪い反応に呆れながら返すと、グウェンはぐっと押し黙った。
まさかと思うが・・・着てないのか? 何も?
胡乱な目で俺と村人がグウェンを見れば、彼ははっとして首を横に振る。
「着てる! 服は着てるぞ! ただ…ちょっとあれなだけで」
「あれとはなんだ」
ゴメスも気になるらしい。ずいずいと威圧的にグウェンに近づいていき、今にも鎧をはぎそうな手つきをしている。
うむ、ここはいっちょ想像魔法を試してみるか。
グウェンの鎧がぼろぼろと落ちる様を想像し、特に呪文も無いのでパチリと指を鳴らしてみた。
ガシャガシャガシャンッ
効果覿面。
鎧と言わず冑までごろりと地面に落ち、現れたのは長身の金髪碧眼の美形な王子様…だが、着ている物はランニングに水色と白のストライプ模様のトランクスという下着姿の残念な王子様。
…どんなセンスだっ!
「なんで服を着てないんだよ!」
あまりに残念すぎる見た目に男達が目が腐ったとばかりに文句を垂れ、女達がきゃあっとそっぽを向いて恥じらいながらもチラチラと見ている。
グウェンはぎゃあっと叫び声をあげると、彼にしてみれば「なぜか急に外れた」鎧を急いで着始めていた。
「真っ裸ではなかったろう!」
グウェンは文句あるかと叫び、男達はまぁ確かに、と納得。だが、あのセンスはどうなんだと俺は言いたい。
そういや俺、ずっと同じ服を着たきりだ。
まぁ、これしかないから仕方ないが、さすがに潔癖症な俺としてはかなり気持ちが悪いわけで…。
「なぁ婆さん。服ってどこで買えばいいんだ?」
お金はそのうちギルドで溜めるとして、購入するべき服の場所と、買い物の仕方も学ばねばならない。きっとお金は円じゃないだろうし。
「そういや服がないのか。若い頃の服で良ければやるぞアキ。下着は女達に頼めば作ってくれる」
ゴメスが俺の衣料事情を悟ってにやりと微笑み、村を救った礼で金はいらんぞと言ってくれた。
衣・食・住は人間に必要なものだからな、そう言ってもらえるとありがたい。
「すまん。世話になるよ」
俺は村の女性達にも礼を言い、話が片付いたところで、まだ冑を被っていないグウェンの子犬のような目と目が合った…というか合ってしまったというか…。
「ゴメス」
思わずゴメスに助けを求めてしまった。
頼られても俺だって無一文の職なし居候なんだ。日本でなら何とかなったろうがこの世界では無理だ。
ゴメスはふかーく溜息を吐くと、グウェンに提案した。
「アキはこの世界に来たばかりで詳しいことを何も知らんらしい。巫女と精霊がいるが、元々人との交流が少ないからな、お前さんが町までアキを護衛するということなら少しの路銀と武器をやろう。村にも泊めてやるが、どうする?」
こ、この見た目怪しすぎる奴と旅をするのか、と俺は不安になった。
だが、よく考えれば旅の道先案内人は婆さんだけ。こちらはいつ俺をだし抜くかわからない曲者だし、ロマは精霊で、旅慣れていないとなると、ちゃんとした道を知っている人間がいた方が助かる。
ゴメスの提案はいいことかもしれない?
「わかった。私も伝説の勇者というものに興味があるしなっ。町までの護衛を引き受けよう。大船に乗ったつもりで任せるがよいっ」
わっはっは~と胸を張って笑う残念な美形を見やり、おれはちょっと間違ったかも知れないと後悔した。
勇者のパーティーに緑の騎士(残念な美形)が加わった。




