第八話 散らばる鬼王核――旧地獄に潜む影
前書き
黒殻鬼との戦いを終えた轟羅たちは、鬼王核が複数に分裂したことを知った。
鬼王の力を凝縮した黒い核。
それが旧地獄の各地へ散らばった。
このまま放置すれば、再び鬼王の眷属が生まれる。
しかし、黒牙玄真は告げた。
始原五大戦鬼がかつて戦ったのは、単純な「鬼王」だけではない。
鬼王の思想。
鬼王の力。
そして――。
鬼王を利用しようとする者たち。
封印が弱まり始めた今。
千年前に終わったはずの戦いが、再び動き始める。
---
# 東方Project 二次創作 外伝 鬼の大戦鬼
## 第八話 散らばる鬼王核――旧地獄に潜む影
旧地獄。
黒嶺洞へ続く地下道。
轟羅たちは四人並んで歩いていた。
先頭を歩くのは風華。
風を使って地下の空気の流れを探っている。
その後ろを雷華。
さらに焔羅。
最後尾が轟羅だった。
「……三つ」
風華が突然言った。
雷華が顔を上げる。
「何が?」
「鬼王核」
風華は目を閉じている。
「遠くに三つある」
「三つ?」
「ええ」
風華はゆっくり指を動かした。
「一つは北」
「もう一つは?」
「東」
そして――。
「最後の一つは、かなり近い」
轟羅が立ち止まる。
「近い?」
「この先」
風華が前を指す。
そこには巨大な洞窟があった。
「……ここだな」
轟羅が笑う。
焔羅が拳を鳴らす。
「行こう」
雷華が二人を止める。
「待って」
「何だ?」
「妙なの」
雷華が地面へ手を置く。
「妖気の流れが、普通じゃない」
「鬼王核?」
「それだけじゃない」
雷華は眉をひそめた。
「誰かが、核を動かしている」
四人が黙る。
轟羅がゆっくり笑った。
「つまり――」
「眷属が勝手に生まれているわけじゃない」
雷華が答える。
「誰かが鬼王核を利用している可能性がある」
焔羅の表情が険しくなる。
「誰だ?」
「それを調べる」
風華が言った。
四人は洞窟へ入った。
中は異様なほど静かだった。
風がない。
音もない。
ただ――。
奥から微かな呼吸音だけが聞こえる。
「……誰かいる」
風華が呟く。
轟羅が前へ出る。
「出てこい」
返事はない。
「隠れているなら――」
轟羅が拳を構える。
「こちらから行くぞ」
その瞬間。
天井から巨大な影が落ちてきた。
――ドォン!!
轟羅が横へ跳ぶ。
地面が砕ける。
そこにいたのは――。
黒い皮膚。
長い腕。
異様に細い身体。
そして頭部に一本だけ伸びた角。
「……一角鬼?」
焔羅が呟く。
だが普通の鬼ではない。
身体から黒い妖気が噴き出している。
玄真の言葉が頭をよぎる。
――鬼王核。
「気を付けて!」
雷華が叫ぶ。
一角鬼が口を開く。
「……力……」
声が二重に響いていた。
「力を……寄越せ……」
その身体が膨張する。
黒い亀裂が全身に走る。
「――来る!」
轟羅が迎え撃つ。
――ドゴォン!!
拳と拳が衝突する。
轟羅の身体が後ろへ滑る。
「……こいつ」
一角鬼が笑う。
「もっと……」
黒い妖気が増える。
「もっと力を……!」
轟羅が笑った。
「なるほど」
「何笑ってるの!?」
雷華が叫ぶ。
「こいつは強くなっている」
轟羅は拳を握る。
「なら――」
一歩踏み込む。
「私も強くなる」
一角鬼の拳が飛んでくる。
轟羅は避けない。
真正面から受けた。
――ドンッ!
轟羅の身体が吹き飛ぶ。
壁に激突する。
「轟羅!」
雷華が叫ぶ。
しかし――。
瓦礫の中から笑い声が聞こえた。
「……いい」
轟羅が立ち上がる。
口元から血を拭う。
「今のはいい拳だ」
一角鬼が吼える。
轟羅が構える。
「なら、次はこちらだ」
拳を握る。
その瞬間――。
轟羅の身体から妖気が膨れ上がった。
「――ッ!」
雷華が驚く。
「能力が……」
轟羅が踏み込む。
「敗北するほど強くなる」
一角鬼の拳を受け止める。
「それが私の力だ!」
そして――。
轟羅の拳が一角鬼の腹部へ叩き込まれた。
――ズガァン!!
一角鬼が吹き飛ぶ。
「ぐ……!」
焔羅が笑う。
「やっぱり強いな、あんた」
「まだだ」
轟羅が言う。
「こいつの中には鬼王核がある」
雷華が頷く。
「なら核を狙う!」
雷が走る。
「――雷槍!」
雷の槍が一角鬼の胸部へ向かう。
しかし。
一角鬼は腕で防いだ。
「甘い……!」
黒い妖気が爆発する。
雷華が吹き飛ぶ。
「くっ!」
風華が手を伸ばす。
「――風壁!」
風が雷華を受け止める。
「助かった」
「まだよ」
風華が前を見る。
一角鬼の周囲に黒い妖気が渦巻いている。
「この妖気、外へ逃げようとしている」
焔羅が笑う。
「じゃあ逃がさなければいい」
炎が広がる。
「――紅蓮陣!」
炎の壁が一角鬼を包む。
「これで逃げられない」
轟羅が笑った。
「なら――」
拳を握る。
「終わらせる!」
轟羅が突進する。
雷華も続く。
風華が風を集中させる。
焔羅が炎を集める。
四人の力が重なった。
黒。
雷。
風。
炎。
四つの力が一つになる。
「――行くぞ!!」
轟羅の拳。
雷華の雷撃。
風華の風刃。
焔羅の炎。
同時に一角鬼へ叩き込まれる。
――――ドゴォォォォォン!!
爆発。
洞窟全体が揺れた。
一角鬼の身体が崩れ落ちる。
胸部から黒い石が転がり落ちる。
「鬼王核!」
雷華が駆け寄る。
しかし――。
黒い石の前に、誰かが立った。
「――そこまでだ」
四人が振り返る。
暗闇の奥。
一人の男が立っている。
鬼ではない。
少なくとも――。
普通の鬼には見えない。
黒い衣。
細い身体。
顔には白い仮面。
轟羅が拳を構える。
「誰だ?」
男は答えない。
ただ鬼王核を拾い上げる。
「それを返して」
雷華が言う。
男は笑った。
「なぜ?」
「それは封印を弱める」
「だから?」
「鬼王が復活する」
「それが目的だ」
男は淡々と言った。
全員の表情が変わる。
焔羅が一歩前へ出る。
「お前……」
男は仮面に手を当てた。
「鬼王は、いずれ目覚める」
「だったら何だ?」
轟羅が言う。
「その前に私たちが倒す」
男が笑う。
「倒す?」
「そうだ」
轟羅が拳を握る。
「私は強い奴を倒す」
「鬼王もか?」
「もちろんだ」
男の笑いが止まる。
「……面白い」
そして――。
身体から黒い妖気が噴き出した。
「ならば覚えておけ」
男は鬼王核を握りしめる。
「鬼王は、お前たちが想像しているような存在ではない」
雷華が問い返す。
「どういう意味?」
「奴はただの怪物ではない」
男は言った。
「鬼の王だ」
「それくらい知っている」
「違う」
男の声が低くなる。
「鬼王とは――」
「鬼が持つ『力への欲望』そのものだ」
雷華の表情が変わる。
焔羅も黙った。
風華は男を見つめる。
轟羅だけが――。
笑った。
「それなら、ますます戦う価値がある」
「……狂っているな」
男が呟く。
「褒め言葉として受け取っておこう」
轟羅が一歩踏み出した。
しかし――。
男は黒い霧を発生させる。
「今日はここまでだ」
「待て!」
雷華が雷を放つ。
しかし霧に阻まれる。
「逃げる気か!」
焔羅が炎を放つ。
風華が風を叩き込む。
だが――。
男の姿は消えていた。
残ったのは、黒い妖気だけ。
轟羅が地面を殴る。
「逃がしたか」
雷華は落ちていた黒い石を見る。
「……いや」
石の中に文字が浮かび上がっている。
「何これ……?」
風華が覗き込む。
そこには一つの文字。
**「参」**
焔羅が眉をひそめる。
「三?」
玄真が遅れて洞窟へ入ってきた。
その文字を見た瞬間――。
顔色が変わった。
「……まさか」
雷華が振り返る。
「知っているの?」
玄真は答えない。
轟羅が聞く。
「何だ?」
「鬼王核に刻まれた数字だ」
「数字?」
「ああ」
玄真は石を見つめる。
「始原五大戦鬼の時代にも、同じものがあった」
雷華が息を呑む。
「つまり?」
玄真が静かに言った。
「これは単なる眷属ではない」
「なら何?」
「鬼王の復活を準備している者たちがいる」
風華が尋ねる。
「何人?」
玄真は首を横に振る。
「分からない」
焔羅が言う。
「でも、さっきの男は『参』と言った」
「そうだ」
轟羅が考える。
「一、二、三……」
雷華が続ける。
「まだ二つある可能性がある」
玄真は頷いた。
「あるいは――」
一瞬、玄真の目が鋭くなる。
「もっと多い」
四人が黙る。
そして――。
地下の遥か奥。
別の場所。
白い仮面の男が歩いていた。
手には鬼王核。
その前に、二人の影が立っている。
「どうだった?」
男が言う。
「現在の大戦鬼は強い」
「四人とも?」
「少なくとも、始原の鬼たちに匹敵する可能性がある」
「面白い」
暗闇の中で別の声が笑う。
「ならば――」
「予定を早めるか?」
白い仮面の男は鬼王核を掲げた。
「まだだ」
「なぜ?」
「第五が動いていない」
その言葉に――。
全員が黙った。
「第五?」
「そうだ」
男は笑う。
「封印の中にいる、最後の鬼」
そして――。
その言葉を聞いた瞬間。
遠く離れた封印の奥で、白峰神楽が目を開いた。
「……」
神楽は静かに立ち上がる。
鬼王が笑う。
『聞いたか?』
「……ええ」
『奴らは、お前を狙っている』
神楽は答えない。
『お前が封印の核だからだ』
神楽は目を閉じた。
「……分かっている」
『ならば、なぜ戦わない?』
神楽は静かに答える。
「戦う理由がないから」
『では、彼らがここへ来たら?』
神楽は少しだけ考えた。
そして――。
「その時に決める」
鬼王が笑う。
『そうか』
『ならば、楽しみにしていよう』
神楽は再び封印の中へ戻った。
しかし――。
彼女の瞳には、わずかな迷いが生まれていた。
---
後書き
第八話では、鬼王核を利用している**謎の勢力**が登場しました。
今回の敵は、単純な「鬼王の眷属」ではありません。
鬼王の復活を意図的に進めている存在です。
そして、鬼王核に刻まれていた数字――。
**「参」**
これが今後の重要な伏線になります。
また、謎の白い仮面の男は、
**「第五が動いていない」**
という言葉を口にしました。
ここでいう第五とは、現在の轟羅たちの五人目という意味ではありません。
始原五大戦鬼の最後の一人――。
**白峰神楽。**
彼女が封印の核となっていることを、この謎の勢力は知っています。
一方、轟羅たちはまだその事実を知りません。
そして神楽自身も、
「彼らが敵なのか味方なのか」
まだ決めていません。
これによって、今後は単純な「鬼王復活阻止」だけではなく、
**鬼王を復活させようとする勢力**
**鬼王を封じ続ける白峰神楽**
**鬼王の真実を知らない現在の大戦鬼**
という三つの勢力が交差する物語へ進んでいきます。
次章では、鬼王核の「壱」「弐」「参」に隠された意味と、謎の勢力の正体へさらに近づいていきます。




