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はじまり

初の執筆、駄文が多いと思いますが温かく見守ってください。

鉄の焼ける臭いが、肺にこびりついていた。

 深夜二時。

 機械音だけが鳴り続ける工場で、男は黙々とラインを見ていた。

 誰も褒めない。

 ミスすれば怒鳴られる。

 休めば迷惑をかける。

 そんな場所だった。

 名前は、黒川 恒一。三十五歳。

 離婚。養育費。借金。

 財布の中には千円札が二枚。

 スマホには、支払い催促の通知。

 それでも仕事へ行く。

 倒れたら終わるからだ。

「……はは」

 乾いた笑いが漏れる。

 若い頃は、自分も何かになれると思っていた。

 社長。金持ち。成功者。

 だが現実は、油にまみれた作業着を着て、夜勤で機械を眺める毎日。

 夢なんて、とうの昔に擦り切れていた。

「黒川さん、大丈夫っすか?」

 後輩が声をかける。

「ああ。問題ない」

 いつもの返事だった。

 本当は問題だらけだ。

 眠れない。

 疲れが抜けない。

 食欲もない。

 でも男は知っていた。

 社会は、壊れた人間を待ってはくれない。

 だから立つ。

 ただ、それだけだった。

 休憩時間。

 缶コーヒーを飲みながら、スマホを見る。

 SNSでは、誰かが成功を語っていた。

 『好きなことで生きる!』  『月収100万達成!』

「……遠い世界だな」

 その時だった。

 ――ガコンッ!!

 工場内に異音が響く。

「っ!?」

 大型プレス機の警告ランプが赤く点滅する。

 誰かが止め損ねたのか、部品が詰まっていた。

「危ねぇ!」

 後輩が叫ぶ。

 だが新人が近くにいる。

 黒川は反射的に走った。

 考えるより先に、身体が動いていた。

「下がれ!!」

 次の瞬間。

 轟音。

 視界が白く弾けた。

 身体が宙を舞う。

 熱い。

 痛い。

 そして――妙に静かだった。

(……ああ、終わったか)

 不思議と恐怖はなかった。

 ただ、一つだけ。

(結局……何者にも、なれなかったな)

 その瞬間。

 世界が、暗転した。

 ――気が付くと。

 男は、薄汚れた石畳の上に転がっていた。

 鼻を突く腐臭。

 遠くから聞こえる怒号。

 そして、自分の身体が小さい。

「……は?」

 声まで違う。

 震える手を見る。

 子供の手だった。

 ボロ布のような服。

 痩せ細った身体。

 周囲には、崩れかけたレンガ建築。

 まるでスラム街。

 その時。

「おい、“ドブネズミ”!!」

 大柄な男が怒鳴った。

「今日の上納金はどうした!?」

 少年の身体が、勝手に震える。

 脳裏に流れ込む記憶。

 親なし。

 金なし。

 名前すらゴミみたいに扱われる最下層。

 男は理解した。

 ――転生したのだと。

 しかも。

 最悪の人生に。

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