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泥人形と呼ばれた令嬢、隣国の冷徹皇帝に「世界の至宝」として攫われる ~「無能」と捨てられた私が、実は世界を守る唯一の浄化術師だった件。~  作者: 西園寺ミオ


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第50話:神婚の果てに、あるいは新世界の胎動

肌を掠める空気のすべてが、甘い愛の記憶で満たされていた。


 エルセがゆっくりと瞼を持ち上げると、視界に飛び込んできたのは、窓の外に広がる極彩色の夜明けと、自分を壊れ物を扱うように抱きしめたまま眠るレオンハルトの美しい顔だった。

 彼の漆黒の髪が、エルセの真珠色の胸元に零れている。胸元に輝く宝石『零の脈動』は、二人の体温を吸って、穏やかな虹色の光を放っていた。


「……ん、起きたか。私の愛しい神妃」


 レオンハルトが、低く掠れた声で囁きながら目を覚ました。

 紫水晶の奥に銀河を宿した瞳が、エルセを捉える。彼はエルセの額、眉間、そして唇へと、貪るように幾度も接吻を落とした。昨夜、魂の根元まで溶け合い、一つになったというのに、彼の独占欲は一日たりとも渇きを癒やすことはないようだった。


「陛下……朝から、そんなに激しく求められては、身体が保ちませんわ」


「保たせるさ。お前が人間を辞め、私と同じ神の肉体となったのは、私に永遠に愛でられるためだろう?」


 レオンハルトが不敵に笑い、彼女の銀髪を指先で愛おしそうに弄ぶ。その指先に、足元から飛び上がった精霊ルミエルが嬉しそうに小さな羽を擦り付けていた。


 コト、とテラスの扉が控えめに叩かれる。


「朝早くから本当に失礼するわね。でも、今日ばかりは皇帝夫妻として、民の前に出てもらわないと困るのよ」


 呆れ顔で入ってきたのは、シルヴィアだった。しかし、その手にある書類の束は、これまでの「被害報告」ではなく、すべてが「奇跡の報告書」だった。


「お姉様……帝都の様子は、いかがですか?」


「素晴らしいの一言よ、エルセ。貴方たちが名実ともに世界の核となったおかげで、大地はかつてない肥沃さを取り戻したわ。病人は消え、争いも消えた。かつて貴方を泥人形と蔑んだ国々の跡地は、美しい結晶の壁に閉ざされて、今や帝国の不可侵の庭園よ。民衆はね、貴方たちを『双星の絶対神』と呼んで、広場で狂喜乱舞しているわ」


 シルヴィアの言葉に、エルセは隣のレオンハルトを見上げた。

 

 泥人形として捨てられ、冷たい雨の中でこの人に拾われたあの日。

 ただ、この人の隣にいたいと願った。その小さな、けれど重すぎる愛の足跡が、気づけば世界そのものを救い、新しく作り替えていたのだ。


「……行こう、エルセ。私たちの庭に、あるじの帰還を教えてやる」


 レオンハルトが立ち上がり、エルセの手を取った。

 

 新帝国の謁見の間。そこには、かつてのような冷たい大理石の玉座はなかった。

 レオンハルトがエルセのためだけに創り出したのは、漆黒の夜と虹色のオーロラが絡み合う、二人で並んで座るための巨大な『双子座の玉座』。

 

 二人がその玉座に腰掛け、バルコニーの向こうに広がる広大な帝都を見下ろした瞬間。

 地平線を埋め尽くすほどの民衆と、数万の精霊たちが、地鳴りのような歓声を上げた。


「「「皇帝陛下万歳! 神妃エルセ様万歳! 双星の神に、永遠の栄えあれ!」」」


 降り注ぐのは、虹色の薔薇アピリティアの花吹雪。

 エルセの胸元で『零の脈動』が最高の輝きを放ち、彼女の瞳からは、嬉しさのあまり真珠の涙がこぼれ落ちた。

 レオンハルトはその涙を黒い鱗の指先で拭い、そのまま民衆の前で、彼女の唇を深く、深く塞いだ。

 

 世界で一番不条理な格差から始まった物語は、今、世界で一番甘く、誰も届かない絶対的なハッピーエンドの頂点へと登り詰めたのだ。


 第4章『終焉の神婚編』、ここに完結。


   ◆


 だが、二人の愛の魔力は、神のシステムさえも超えて肥大化し続けていた。

 その日の深夜。

 

 新世界の境界線――かつて「世界の果て」と呼ばれていた虚空の壁に、異変が起きていた。

 二人の愛の熱量があまりにも強大すぎたため、この世界の次元の壁が物理的に溶け始め、見たこともない「黄金の門」が、静かに口を開け始めていたのだ。

 

 それは、滅びた旧世界の残骸ではない。

 この帝国の外側に広がる、まだ見ぬ『別の宇宙(別次元)』への扉。

 

 門の向こうからは、邪悪な気配ではなく、どこか懐かしく、そして広大な「世界の広がり」を予感させる、未知の精霊たちの歌声が響いてきていた。

 

 神となった二人の溺愛は、ついにこの世界だけでは収まりきらず、次なる宇宙へとその舞台を広げようとしていた。

第4章『終焉の神婚編』、これ以上ない最高のグランドフィナーレを迎えましたわ!

泥人形と呼ばれたエルセ様が、陛下の膝の上で世界の主(神妃)となり、全生命から祝福を受ける戴冠式……。

「これが見たかったのよ!」と、執筆しながら私の扇子も歓喜で舞ってしまいましたわ。

お二人の愛は、ついに世界そのものを完璧な楽園へと変えてしまいました。


これまでお二人を、そして私の拙い物語を応援してくださった皆様に、心からの愛と感謝を捧げます。


ですが、物語はここでは終わりませんわ!

お二人の愛の熱量が強すぎて、世界の壁を溶かし、新しい次元の門を開いてしまいました。

好評であれば、次回からは待望の『第5章:神域の新婚旅行(別宇宙開拓)編』が開幕いたします!

神となったお二人が、別の世界へ「ノロケ」を撒き散らし、新たな格差逆転を巻き起こす、さらなる無双溺愛ストーリーですわ。


「最高のハッピーエンドをありがとう!」「新章の新婚旅行編も絶対読みます!」

そんな風に胸を熱くしていただけましたら、ぜひ最後の仕上げに【ブックマーク】と【ポイント評価(★★★★★)】をお願いいたします!

皆様の評価が、次なる宇宙を創り出す二人の魔力となりますわ。


次回、第51話より新章開幕。

『神妃のパスポート、あるいは次元の彼方へ』。

人外夫婦の、世界を跨いだイチャイチャ新生活を、どうぞお楽しみに!

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