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魔力0の訳あり王女、最狂につき取り扱い注意  作者: やきいもほくほく
四章 悪女の罠

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ヴィクトールは新たに外で待機させていた侍女たちを呼んで、動かなくなってしまったアナベルたちを運ばせていた。

それにオノレが付き添っていく。


(あらあら、準備万端のようですわね)


ヴィクトールは彼女たちを容赦なく罰していくつもりのようだ。


(……あぁ、陛下の目的はこういうことなのね)


シャルレーヌはヴィクトールの目的がなんとなく理解することができた。

それはシャルレーヌを利用することで、彼女たちの嫉妬心を煽り、本性を炙り出すためにしていることではないだろうか。


(こうなるということはモルガン様の能力で彼女たちの裏の顔は知っていたのかしら……)


あの賢いカラスたちを通じて、もっとも正妃に近いと言われているアナベルとエマニュエルの性格を知っていてもおかしくないはずだ。

そして彼は彼女たちを正妃候補から下ろす決定的な出来事を作るためにシャルレーヌを使っているのだとしたら……。


(サンドラクト王国だったら力で示せばいいから楽ですけれど……ふふっ、ナリニーユ帝国はおもしろいですわね。)


サンドラクト王国とは違う複雑な慣習やルールがあるのだろう。

なかなかに面倒ではあるが、シャルレーヌにとってはそれがおもしろい。


(テネブルを男性かと勘違いしていたけれど、やっぱりどこかでエマニュエル様に盗聴されていたのかしら)


アナベルはテネブルをシャルレーヌの密会相手だと勘違いしていた。


(ルイとロミしか連れてきていないし、まだロミと噂が立つのならわかるけれど……)


考えているとテネブルのひんやりとした感触が手に触れた。

まだ部屋にヴィクトールがいることを忘れていたシャルレーヌは彼に視線を送る。

アメジストのような瞳がシャルレーヌを映し出していた。

真っ黒な艶のある髪と端正な顔立ちは彫刻のようだ。長いまつ毛を眺めながら、シャルレーヌも彼を見つめ返す。そのまま黙っていると、しばらく沈黙が流れる。



「…………美しいな」


「……!」



ヴィクトールの薄い唇から漏れた言葉に驚く暇もなく、横から光が漏れている影響なのか、咳き込んだことで視線が逸れてしまう。



「ゴホッ……」


「無理をさせた。すまなかった」


「…………」



二人きりだからなのか、彼から素直な言葉が漏れる。

テネブルが心配そうにシャルレーヌを覗き込んでからカーテンを閉めるために動いてくれた。

再び部屋は暗闇に包まれたことで呼吸が落ち着いてくる。

ヴィクトールはテネブルといるおかげで夜目が利くのだろう。

彼はサイドテーブルに置かれたウォーターポットを手にとると、置かれたグラスに注いだ。

そしてシャルレーヌに渡す。



「まぁ……随分とお優しいのですね」


「今は機嫌がいいからな」


「あら、がっかりですわ。わたくしのことを想ってはくれないのですね」


「…………」



しおらしく落ち込むふりをしていたものの、ヴィクトールはまったく反応することはない。

むしろ冷ややかな視線を送られているような気がしていた。

テネブルを通じてシャルレーヌの愛の告白を聞き続けていたヴィクトールはもっといい反応をしてくれたはずなのだが、今日は無反応だ。


(今までとは違って、まったく興味が持たれないのも楽しいものですわね)


そんな反応も目新しくてシャルレーヌにとってはおもしろいのだ。



「それにしてもサンドラクト国王の言う通りだな。清廉な見た目とは裏腹に随分と悪女のようだ」


「あら、陛下こそ。無関心なふりして随分な野心家ですのね」


「愚か者では帝国をまとめられないだろう?」


「……それはどうでしょうか」



シャルレーヌはサンドラクト国王の自由すぎる姿を思い出していた。

あれだけ好き勝手している暴君でも周りの側近たちのおかげで、うまく国をまとめられているのかもしれない。

最近では歳のせいか、保身に走っているような気もするが、圧倒的な強さで皆に慕われている。


(わたくしがいなくなって、胃痛はよくなったかしら)


調子に乗って酒を飲みすぎて、胃を悪くしているのではないかと想像しつつ微笑んでいると……。



「お前にはまだまだ役に立ってもらう」


「あら、それはこちらの台詞ですわ。もしもわたくしを失望させるようなことがあれば……」


「あれば……?」


「テネブルと一緒に帝国外に逃げましょうかしら」



にっこりと微笑むシャルレーヌ。

この帝国で彼と出会えたのは大きな収穫といえるだろう。

ヴィクトールは驚いたように目を見張った。

しかしすぐに視線を逸らした。

小さく肩を揺らしているヴィクトールを見つつ首を傾げる。

どうやら笑うのを堪えているようだ。



「そこは殺すではないのか?」


「陛下を殺すのは簡単ですけれど、テネブルが悲しみますもの」


「ふっ……そうか。君には簡単なことか」



ヴィクトールは口角を上げて、こちらを見ている。


(陛下の笑顔、初めて見ましたわ。とてもかわいらしいのね)


しかしすぐに元の表情に戻ってしまった。



「そうならないよう惚れ込んでもらわなければな」


「あら、陛下こそわたくしに惚れないでくださいね?」


「はっ……ありえない」



吐き捨てるように言ったヴィクトールにシャルレーヌも笑みを深めた。



「ふふっ、まずはパーティーでわたくしの有用さを見せつけなければなりませんわね」


「ああ、楽しみにしている」


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