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魔力0の訳あり王女、最狂につき取り扱い注意  作者: やきいもほくほく
四章 悪女の罠

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40/50

40 アナベルside4


彼女の唇が綺麗に弧を描いていた。冷や汗が滲むのは気のせいだろうか。

ぼんやりと浮かぶ蝋燭の火。彼女がニコリと笑った瞬間に動けなかった体が解放されたような気がした。

アナベルは反射的に笑みを作る。それは長年染みついた癖のようなものだろう。

己のプライドだけで動いていたと思う。


彼女を囲むようにして侍女と侍従、それからアナベルを裏切ったリリーの姿があった。

リリーは怯えていて、動揺しているのか目が左右に動いているような気がした。

侍女たちはそんなリリーを睨みつけているが、それを制する余裕すらなかった。

荒い呼吸を繰り返しながら、アナベルは自分を奮い立たせていた。


(わたくしは大丈夫。今は正妃候補まで登り詰めたんだもの……あんな過去、どうってことないわ)


侍女たちを制してから改めて侍女たちのことを謝罪する。



「シャルレーヌ様、わたくしの元侍女がご迷惑をかけてしまい、本当に申し訳ありません!」



深々と頭を下げると、クスリと嘲笑うような声が聞こえた。

気のせいかもしれないと思ったが、明らかにシャルレーヌはアナベルを鼻で笑ったのだ。

それがさらにアナベルのプライドを刺激する。


悔しさからギリギリと歯を噛み締めていた。

本当は謝りたくなどないが、自分の立場のためならばなんだってできると言い聞かせていた。



「驚きましたわ。彼女たちに罵倒された後に、いきなり水を掛けられたんですもの」


「……っ、そうですわよね。申し訳、ありません」



そんなやりとりを続けていくと、次第に顔が引き攣っていく。

シャルレーヌもわざとらしく問いかけて、何度もアナベルに謝罪をさせているような気がしてならなかった。


(わかってやっているのかしら……腹立たしいわ。絶対に潰してやるんだからっ)


表では申し訳なさそうに、心の中では暴言を吐き散らしていた。

普段は穏やかな侍女たちも、アナベルを責めるような発言の数々にさすがに苛立ちを隠せないようだ。

彼女たちに促されたため、そろそろ頃合いだろうと本題を口にする。



「本日はそのお詫びに参りました」


「まぁ、わざわざお詫びに?」


「はい、そうですわ。わたくしがシャルレーヌ様の病を……」


「お詫びならもう十分ですわ」


「…………え?」



まさか途中で言葉を遮られると思わずに驚いていた。

それに治療を断られたことが信じられずにアナベルは目を見開いた。

今まで『十分』や『いらない』と、言われたことがないからだ。


(今のは気のせいよ……! わたくしの治療を断ることなんてありえないわ)


彼女はアナベルがわざわざ部屋にやってきて、治療してあげると言っていることに最初は謙虚に遠慮しようと演技しているだけだろう。

そう信じきっていた。病が治らなくていいと思っている人間など一人もいないのだから。


(今回は陛下にも報告しているのよ。挽回のチャンスを逃してたまるもんですか!)


アナベルは子どもに説明するように優しく声を掛けた。



「ですけどお困りでしょう? わたくしの力を使えばシャルレーヌ様のご病気も軽くなりますわ」


「いいえ、大丈夫ですわ」


「は……?」



反射的に出てしまった疑問の声。

アナベルと同じように侍女たちも眉を寄せて声も出せないようだ。

大丈夫というのは、お願いという意味だろうか。

しかし『いいえ』という言葉が突っかかってしまう。

わからなかっただけかもしれないと丁寧に説明していく。



「えっと、わたくしの魔法は病を治すことが……」


「ですから、結構ですわ」


「なっ……!?」



アナベルは言葉を失っていた。


(あんなにつらそうに咳をしていたじゃない。どうして……?)


シャルレーヌは微笑みながらきっぱりと断っているが、その理由がわからない。

普通ならば苦しみを取り除きたいと望むはずなのに。


(わたくしに病を治して欲しいと、貴族たちは大金を注ぎ込むのに……!)


重い症状になるほど、教皇は大金を受け取っていた。

魔法を使えない平民たちは小さな怪我だけを治している。

これは教皇の指示によるものだ。彼らの懐はアナベルによって潤っていた。

なんだかモヤモヤしていたが、何か意見すればこの地位は簡単に崩れ落ちてしまう。

この世界で生まれは大きな枷となることはわかっていた。



「……どうして、でしょうか?」


「わたくしはこのままでよいのです。お気遣いありがとうございます」


「でも、だって……そんなことっ」



もう動揺を隠しきることはできなかった。

死や苦しみはもっとも怖いものではなかったのだろうか。

だからこそアナベルを女神のように縋り、聖女だと崇めているのだ。


(この女……何も怖いものはないというの? いいえ、ただの強がりに決まっているわ!)


すぐに余裕の表情を作り直す。アナベルは慈愛に満ちているのだ。

彼女もすぐに感謝して跪くことになる。



「え、遠慮する必要はありませんわ。ここはわたくしに甘えてください」


「必要ありません」


「ど、どうしてっ!?」


「どうしてと言われましても……」


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