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魔力0の訳あり王女、最狂につき取り扱い注意  作者: やきいもほくほく
四章 悪女の罠

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39/50

39 アナベルside3


「さっそく皇帝陛下にお知らせしなくちゃ……このわたくしの善行を知れば、もっとわたくしのことを好きになってくれるはずだわ」



アナベルがシャルレーヌの病を治すとヴィクトールに言えばいい。

病弱な彼女のなんらかの症状、主に咳などがよくなれば挽回できるはずだ。


アナベルの魔法は万能ではない。

重い病や死ぬほどの怪我などは緩和する効果しかないが、軽いものであれば完治することもある。


(あのクソ女を逆に利用して、わたくしは再び成り上がるの! お詫びとでも言えばいいわよね。それにパーティーに出るなら体調を整えた方がいいもの)


その後にリラックスするお茶だと毒を仕込めば、彼女は体調不良でパーティーに出席できなくなってしまう。

そこで仕方なくアナベルが出席すればいい。

アナベルは一応、教皇に相談するとそれはいい考えだといった。



「いいか、アナベル。絶対にバレるようなヘマはするんじゃないぞ」


「お義父様、わかってますわ。今度こそ絶対に大丈夫ですから」


「お前を押し上げるために、どれだけの金を使ったと思っている。ワシを失望させるなよ!」



怖い顔でこちらを睨みつける教皇を見ながら、何をそんなに深刻な表情をしているのかアナベルにはわからなかった。


(絶対にうまくいくのに何をそんなに心配しているのかしら)


アナベルはさっそくヴィクトールにそのことを伝えに執務室に向かう。

彼は怪訝な顔をしていたが、シャルレーヌ自身が承諾すれば許可すると言った。


(あんな女に許可を求めるなんて腹立つけど、これで陛下はわたくしの慈愛に触れて感心しているはずだわ)


その昼間、そのことを伝えにシャルレーヌの元へ向かった。

嫌がらせのために物置き部屋に案内したものの、こんなところに本当に住めるのか疑問だった。


朝食の時に五人で顔を合わせた時、シャルレーヌはサンドラクト王国では牢屋で暮らしていたと言った。

きっと妃としての勤めも果たせずに、国王に道具として利用されてきたのだろう。


(……惨めよね。三度目の結婚だなんて)


結果的にはヴィクトールの前で物置部屋に案内されたことを暴露されてしまい、すぐにリカバリーするために新しい部屋を用意したのだ。

しかしシャルレーヌはここがいいと拒否したと侍女たちが言っていたことを思い出す。

それもアナベルへの当てつけかもしれないと、そのまま放置していたが、まだこんなところに住んでいるようだ。


(はぁ……わたくしがわざわざここまで足を運ぶことになるなんて)


顔合わせに参加した以来、シャルレーヌとともに食事をしていない。

ヴィクトールの気を引くための仮病かと思ったが、アナベルが想像しているよりも咳はひどく顔色も悪かった。

あれが仮病とは思えない。だからこそアナベルの出番ではないだろうか。


(病が治って嬉しくない人なんていないもの! きっとわたくしに感謝するはずだわ)


アナベルに従順な侍女たちを連れて、シャルレーヌの物置き部屋の前へ。

そこにはいつも甲冑のように微動だにしないという侍従の姿はなかった。

仕方なく、アナベルは物置き部屋の扉をノックする。

すると、誰が開けたのか自然と扉が開いた。

中は暗闇で何も見えない。



「シ、シャルレーヌ様……今よろしいかしら。わたくし、どうしてもあなたに話さないといけないことがあるのです」


「…………ふふっ、どうぞ」



不気味な笑い声と共にもう少しだけ扉が開く。

侍女たちとともに中に入った。



「申し訳ありません。扉を閉めていただけますか?」


「えっ、あ……わかりましたわ」



アナベルは侍女に目配せをして扉を閉めさせた。

シン……と、静まり返った部屋は不気味だ。


(よ、よくこんなところにいれるわねっ!)


狭苦しい部屋を見ると、アナベルの心の奥底がザワザワと揺れてくる。

外はあんなに明るいのにもかかわらず、ここはひんやりとしていて肌寒い。

ストロベリーピンクのガラス玉のようなものが二つ。

暗闇に浮かんでいたのを見た瞬間、昔の記憶が蘇る。


臭くて狭く真っ暗な部屋。

カサカサと嫌な音が耳元を這うように蠢いている。

まるで実際にその場にいるようだった。



「…………え?」



ボロボロの布切れを纏い、骨と皮だけの腕が伸びていた。

絡まり合っているゴミが絡まっている髪の毛。

空腹に腹を押さえているのは魔法を発現する前の〝自分〟だった。

今すぐに目を背けたいのに、まるで縫い付けられているように動けなかった。

消えていたはずの過去が目の前にある。


(忘れていたのに……どうしてっ)


吐き戻しそうになるのを口元を両手で無理やり添えて抑えた。

膝から崩れ落ちそうになるのをなんとか堪える。

一歩も動くことができないのはどうしてだろうか。



「ぁっ……あ……っ」



侍女たちは暗闇で何も見えないことに戸惑っているようだが、アナベルが立ち止まっていることのほうが気になるようだ。

彼女たちの声が耳に届くけれど返事ができない。



「あら、アナベル様」



シャルレーヌの明るい声が響く。



「……突然、どうなさったのですか?」


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