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魔力0の訳あり王女、最狂につき取り扱い注意  作者: やきいもほくほく
三章 悪女のお気に入り

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「よかったわ。今度からテネブルと呼ぶわね。わたくしはシャルレーヌ、こちらはルイとロミよ」



改めて自己紹介をすると、知っているといわんばかりに体を揺らす。

これは気に入った時や頷く代わりにしているようだ。

ひんやりとした冷たい触手に体を寄せると心地いい。


月明かりが照らす中、テネブルとの密会は数日の間続いていた。

次第に真夜中ではなく、ヴィクトールが起きている間でも関係なくやってきては知らない間に消えてしまう。


(テネブルったら、またいなくなってしまったわ。もしかして陛下に呼ばれたのかしら)


その日の夜、いつもの時間にテネブルがやってきた。



「ふふっ、今日も遊びましょうね」



テネブルもご機嫌でいつものように抱きしめながら夜を過ごそうと思った時だった。



──コンコンッ


深夜に響く乱暴なノックの音。


(こんな時間に何の用なのかしら……)


護衛として立っているロミが止めないあたり、問題ない人物なのだろう。

そのままロミが扉が開くと、部屋に入ってきたのは不機嫌そうなヴィクトールだった。

いつもの正装ではなくラフな格好を見るに、つい先ほどまで寝ていたようだ。



「あら陛下、ごきげんよう」


「どういうことだ」


「どういう意味でしょうか。どうしてここに?」


「…………はぁ」



黒色の艶やかな髪をかきあげて、ため息吐くヴィクトール。

暗闇の中でもしっかりと視線が合うため彼は夜目がきく、もしくは暗闇でも平気なようだ。



「声が聞こえていた。毎晩、君の声が……」


「……!」


「最近は昼間にもな。そこでここではないかと……」



ヴィクトールは手のひらで額を抑えて俯いてしまった。

どうやらシャルレーヌが話しかけていた声は、テネブルを通じて届いていたようだ。

最近は昼間もデネブルがここに来ていたため、シャルレーヌの声がそのまま彼に届いていたらしい。


(まさかそんなことがあるなんて……困りましたわ)


テネブルは申し訳なさそうに小さく震えた後、シャルレーヌの背後に隠れてしまった。

どうやらテネブルはそんなつもりはなかったようだ。

自然に伝わってしまったらしい。


(とりあえずは余計なことを言わずに正解でしたわね。言ってないわよね? わたくし、デネブルをかわいがっていただけですし……)


テネブルと共に寄り添いつつ、彼への愛を伝えてかわいいと囁いてばかりしていたような気がする。

その声が毎日、彼にも届いていた。

それを裏付けるかのようにヴィクトールの耳はほんのりと赤くなっている。



「……あらあら」



想定外の事態にシャルレーヌが驚いていると、ヴィクトールはテネブルに怖がられるとわかったようだ。

無意識なのか一歩後ろに下がった。

シャルレーヌはテネブルを撫でながら慰めていた。



「大丈夫よ、テネブル。陛下は怒っているわけじゃないわ」


「…………!」


「あなたがいなくて寂しかっただけよ。だから迎えに来てくれたのよ?」



いつものようにテネブルに話しかけると、ヴィクトールは目を見開いた。



「……話せるのか?」


「いいえ、この子をずっと見ていたらなんとなくわかるだけですわ。陛下こそ、テネブルの気持ちがはっきりとわかるのですね」


「テネブルとは……」


「呼びやすいようにわたくしが名前をつけましたの」



眉を寄せているヴィクトールが何を言いたいかはわからない。

シャルレーヌはテネブルを撫でつつ励ましていた。



「君は何者だ……?」



シャルレーヌはデネブルを見てから首を傾げた。



「わたくしでしょうか? サンドラクト王国から参りましたシャルレーヌですが……」


「名前を聞いているんじゃない。闇魔法に触れて正気でいられる時点で、おかしいと気づくべきだった」



シャルレーヌはゆっくりと顔を上げた。

彼の紫色の瞳が鋭くこちらを睨みつけていた。



「一つお伺いしたいのですが、よろしいでしょうか?」


「……なんだ?」


「わたくし以外のサンドラクト王国の者が、この子に触れたことはないのでしょう?」


「…………」



沈黙は肯定ととるべきだろうか。

帝国の人間は闇魔法に触れないことは常識なのだろうが、魔法を使わない者が触れたことはないのだろう。



「でしたら、わたくしがおかしいと決めつけるのは早計ではありませんこと?」



ヴィクトールは尚も不機嫌そうにこちらに視線を送り続けている。



「それにテネブルは陛下に遊んでもらえず、寂しくてここにいるだけですわ。昔はよく遊んで差し上げていたのでしょう? 暗闇の中で……」


「────ッ!」



シャルレーヌの口角がゆっくりと上がっていく。

するとヴィクトールがどこから取り出したのか短剣を抜いた。

彼の表情は怒りに満ちている。しかしシャルレーヌは笑みを崩さなかった。


その瞬間、微かに金属が擦れる音が聞こえて首筋に短剣の剣先が向けられた。

ロミとルイが動き出そうとするのをシャルレーヌは片手で止めた。



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