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魔力0の訳あり王女、最狂につき取り扱い注意  作者: やきいもほくほく
三章 悪女のお気に入り

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「あらあら、わたくしのリリーはかわいいことを言うのね」


「はっ、あの……っ」



どうやらリリーはかわいがられたことや褒められたことがほとんどないらしい。

こうして言葉をかけると彼女は顔を真っ赤にして照れていた。


ルイとロミには嫌がらせは効果がないとわかっているし、ヴィクトールに牽制されたことも大きいだろう。

だけどリリーは別。アナベルを裏切ったと後宮の侍女たちから敵視されていた。

彼女はアナベルに捨てられた自分を救ってくれた。

今でも守ってくれていると思っているのか、シャルレーヌに感謝して尽くしてくれている。

その行動で尚更裏切り者に見えてしまうのかもしれない。


(わたくしのリリーをいじめるなんて気に入らないわ……なんて不愉快なのかしら)


直接手を下せないことが煩わしい。

己の力で決着がつくサンドラクト王国のやり方が好ましいと思ってしまう。



「ルイ、リリーについていてくれる?」


「…………」


「ルイ」


「……。かしこまりました」



不満を露わにしていたルイだが、最終的には了承してくれたようだ。



「ルイさん、ありがとうございます……!」


「……シャルレーヌ様の指示ですので」



リリーはルイがついてきてくれることが嬉しいのだろう。一気に表情が明るくなった。

同じシャルレーヌの侍女として、リリーはルイと仲良くしたいようだ。

一緒にいれるだけでも嬉しいリリーとは違い、ルイは彼女をまったく相手にしていない。


アナベルの侍女たちはルイがリリーに付き添っているおかげで、多少は大人しくなったようだ。

後にリリーに嫌がらせした侍女はカラスたちを通じて、しっかりと報告してもらっていた。

どうやらリリーがいなくなったことで仕事が山積みになっていたことで鬱憤が溜まっているらしい。

それをリリーのせいにして八つ当たりをしているのだ。


(随分と性格が捻じ曲がっているのね。自分たちが悪いのに……)


ルイがともについたことでマシになったように思えたが、いない隙を見て嫌がらせは続く。

だが、リリーはそれをシャルレーヌに隠しているらしい。

ルイやカラスたちの報告で明らかになっていた。


(報いは受けてもらいますわ……必ず)


リリーは今日も健気にシャルレーヌの世話をしていた。



「シャルレーヌ様、行きましょう!」


「えぇ、今日も楽しみだわ」



リリーの案内で夕方に散歩をしつつ、部屋から出る回数も増えてきた。

何度かエマニュエルとすれ違ったが、いつも豪華に着飾っていて、パーティーやお茶会と忙しそうにしている。

どうやらヴィクトールのパートナーとして社交の場に出ているらしく、それを誇っているようだ。

だがまったく興味がないため無視でいいだろう。


アナベルは自発的に謹慎中らしい。今は自室で大人しくしていた。


ナタリーはというと気配を消してシャルレーヌたちの後をついてくる。

恐らくヴィクトールの闇魔法について聞きたいことがあるのだろう。

彼女がいた壁には爪が食い込んだ跡がついていた。


ベアトリスはシャルレーヌの体調を気遣うように声をかけてくれた。

侍女も最低限で彼女は真面目に仕事をこなしているらしい。

四人の性格が垣間見えたところで、シャルレーヌが予想もしなかったことが起こった。



「あら、またお客様ですわね」



それが深夜になるとヴィクトールの闇魔法がシャルレーヌの部屋に遊びにくるということだった。

最初は暗闇に紛れて少しだけ。

シャルレーヌが受け入れると嬉しそうにそばによってくる。

だんだんと警戒は溶けていくと犬のように戯れることができた。

それから真夜中は、というよりは恐らくヴィクトールが寝ている間にシャルレーヌの部屋に入り浸るようになった。



「ふふっ、あなたは自由に動けるのね。ここは居心地いいでしょう?」



顔などはないが動きで何を考えているのかがわかる。

まさかナリニーユ帝国に嫁いで、魔法と仲良くなれるとは思ってもいなかった。

ただ困るのは闇魔法が部屋にくると、カラスや蝙蝠たちが近づけないという点だ。


(情報収集ができないのは困りますわね。陛下が起きている間にまとめて報告を受けましょう)


朝方、闇魔法が帰ってから報告を受けて眠りにつく。

ヴィクトールが眠っている間に闇魔法を愛でて楽しむという日々を繰り返していた。



「名前がないと不便ね。いつも陛下からはなんて呼ばれているの?」



問いかけると闇魔法は液体のようになり溶けてしまう。

これは悲しんでいるというアピールのようだ。

つまり名前がないということを言いたいらしい。


(名前を呼びながらかわいがりたいですわ)


シャルレーヌはしばらく考えたあと、ある名前を提案する。



「テネブル、なんてどうかしら?」



シャルレーヌのつけた名前が気に入ったのか、テネブルは嬉しそうに体を揺らしていた。


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