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魔力0の訳あり王女、最狂につき取り扱い注意  作者: やきいもほくほく
三章 悪女のお気に入り

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25/50

②⑤


シャルレーヌの元にリリーがやってきたことでルイの負担が減っていた。

それは彼女が魔法を使うことができるため、手に入るものが多い。


リリーはとにかく弱い。すぐに怯え、震え、泣き言ばかり。

なのに最後まできちんとやりきるところがおもしろい。

サンドラクト王国には一切いないタイプなので見ていて飽きない。

いても生き残れはしないだろうが。


人形のようにまったく動かなくなるルイとロミに驚いて、悲鳴を上げ続けていた。

弱くてかわいらしいリリーは終始暗い部屋に戸惑うところから始まり、泣きべそをかく始末。

何より暗い部屋に慣れずにいろいろな場所にぶつかるため、魔導具の灯りを持ちながら恐る恐る移動していく。

ルイとロミによく睨まれているが、鈍いため気づいていない。

彼女の純粋で一生懸命なところがシャルレーヌは気に入っていた。



「シャルレーヌ様のお部屋はどうしてこんなに暗くするのですか!?」


「暗いところが好きなの」


「うぅ~、いつも夜みたいです」


「それがいいの。サンドラクト王国では地下牢で暮らしてきたのよ?」


「……ちっ、地下牢!? も、もっ、もしかして悪いことをっ」


「ふふっ、さすがリリーだわ」 



シャルレーヌが罪を犯して牢に入れられたと勘違いして、ガタガタと震えるリリー。

その反応が新鮮でよく話している。

リリーは純粋で心優しいため、シャルレーヌのことを常に心配していた。


(こんなに素直でいい子なんだもの。頭を使わなければ生き残れない貴族社会にはまったく向いていませんわね)


これではアナベルの侍女たちに都合よく使われると思っていると……。



「もっと食べないと元気がでませんから!」


「あらまぁ」


「お散歩もいきませんか? お医者さんにも動かなければと言ってましたし……」


「そうねぇ……日が沈んだら行きましょう」


「わかりました! 夕方が楽しみですねっ」



にこにこと笑いながら準備を手伝うリリーは恐ろしいくらいに手際がいい。

基本的に指示がなければ動かないルイとロミとは違い、リリーは自分からシャルレーヌのためにとよく動く。


(完全にわたくしのモノではないところがそそるのよねぇ……)


ルイとロミと真逆だからおもしろいのだ。

それに今までずっとパシリにされていたか、体力もあり根性もある。

夜型なシャルレーヌのために生活サイクルを合わせて動いてくれた。

シャルレーヌがそこまでしなくて言うと、どうやら彼女はアナベルの侍女だった頃に早朝から真夜中まで働きっぱなしだったそうだ。

どうやらアナベルの侍女たちの仕事をほとんど肩代わりしていたらしい。


(それでこの手際のよさ。納得だわ)


彼女の侍女は貴族の令嬢たちばかりだ。

アナベルは好んで高位貴族の令嬢たちばかり受け入れていた。

そこには教会絡みでいろいろと思惑はありそうだが、アナベルは優越のために彼女たちを侍らしているのだろう。

彼女たちのプライドのために、リリーは働きっぱなしだったというわけだ。


(この子、どれだけお人好しなのかしら……)


あまりのいい人っぷりにシャルレーヌも驚きだ。

弱くて臆病ではあるが、変なところで空気が読めず大胆になる。

女性でも弱い者はすぐに潰されてしまうサンドラクト王国でもまったく見ないタイプだ。

それでも魔法が使えるのならいいのだろう。


リリーに構ってばかりいるからか、ルイとロミはどんどん不機嫌になっていく。

彼女が侍女として仕事を終えると、彼らはシャルレーヌにぴったりとくっついて離れなくなった。

ルイとロミがこんなふうになるのも初めてなので、シャルレーヌも二人を甘やかしていた。

リリーがいいスパイスになったようだ。



彼女が侍女となって一週間。

リリーがいることで随分と快適に暮らせるようになったが問題があった。


アナベルやエマニュエルの侍女たちに嫌がらせを受けることだ。


発端はリリーが泣きながら、びしょ濡れになって帰ってきたこと。

ルイとロミであれば、どうとでも対処もできるし、まったく反応をしないため、やっている方もつまらないだろうがリリーは別だ。

彼女は大きな反応をして、反撃もしないため標的になってしまう。


今日も彼女は生ゴミまみれになっていた。

なんともいえない悪臭を放つリリーを部屋に招き入れると、彼女は迷惑をかけられないと部屋の外に出ようとする。


ルイにリリーの世話を頼み、綺麗にするために水場へと向かった。

綺麗になったリリーは冷水で体を洗ったためか、プルプルと震えながら申し訳なさそうに頭を下げた。

そんな弱々しい人間らしい姿がなんとも愛らしく庇護欲を誘う。



「リリー、大丈夫?」


「申し訳ございません……シャルレーヌ様の食事、ダメになってしまいました」


「食事なんていいのよ」


「そんなことありません。わたしは侍女失格です……」



自分のことではなく、シャルレーヌの食事の心配をしているではないか。

潤んでいる瞳を見つつ、リリーの髪を撫でた。


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