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縁側。

 妖怪、妖精、霊獣と、人ならぬ生き物が当たり前に入り交じる様になった今、神社とは大地を流れる霊気の管理のためにある。

 神社には其々、管理者として人の神職と、霊獣が所属するのが常だ。霊獣の姿形に特性は様々で、うちの霊獣は純白、若しくは空色の雄獅子である。

 勇猛果敢な彼らは邪物の討伐を得意とし、関東西部を守る要として重要な位置にいるが、その性質上、若干変温動物の毛が有る。寒いからと言って動けなくなるようなことはないものの、温泉やコタツ、高体温の幼児、日向など、温かい場所や物が好きだ。


 今日も元気いっぱい庭を駆け回り、木に登り、ボールを追いかけ回した子獅子達はそろそろ昼寝の時間だ。

 糧とする霊気は自然と身体が周囲から取り入れるため、昼食を取る必要はないが休息は大切だ。沢山動けば疲れもするし、子供はまだ、体力に乏しい。

 幼い子は自分の寝床のダンボールに戻り、ある程度成長したものもお気に入りの場所で昼寝を始める。

 まだ、寒いこの時期は日のあたる縁側が人気で、毎回場所の取り合いになる。良い場所を取るには早く場所取りをしなければならないが、早く休憩に入れば遊ぶ時間が短くなる。

 子獅子にとって悩ましいせめぎ合いの後、休むと決まったら集団で移動するので、足の早い子が有利になっている。



 今日は瑞宮(みずみや)が真ん中の良い場所をせしめた。

 少しでも長く遊ぼうとするので何時も最後になってしまい、端にいることが多いのだが、珍しく一番日当たりの良い場所を押さえ、嬉しそうに尻尾を揺らしている。

 次に逸信(いつしん)がその隣をとった。足は速いのだが大人しく、皆の後に周りがちのため、やはり隅になってしまうことが多い中、二番目に良い場所に座れ、安心したように早速丸くなった。

 その後に八幡(はちまん)璃宮(りきゅう)陸晶(りくしょう)と続き、ガオニャオ言いながら押し合いへし合いして団子になる。


 彼等より幼い子獅子はその隣をゆうゆうと通り過ぎ、社務所の中の子供部屋にある、自分のダンボールに満足げに潜り込んだ。子供部屋は暖房が効いているので、無理に日当たりに行かずとも、十分温かい。

 最後にやってきた天祥(てんしょう)は子供部屋に戻る前に、団子になっている兄獅子たちを眺め、首を傾げた。


 まず左側を見る。左側には陸晶と八幡が仲良く、くっついて寝ている。

 次に右側を見る。右側には逸信と璃宮がお互い邪魔にならないように丸くなっている。

 そして真ん中を見る。真ん中には瑞宮が悠々と陣取って、ゆらゆらと尻尾を揺らしている。

 今日は天気が良く、縁側はとても温かい。幸せそうな兄獅子たちを見て、子獅子は満足げに頷き、縁側に飛び乗った。



 そして「よっこらしょ。」と言わんばかりに、瑞宮と逸信の空いてもいない隙間に座り込んだ。



『ちょっと! 止めてよ、テンちゃん!』

『いててて。』

『ボクの上に、乗らないでよー』


 伸し掛かられた瑞宮が怒り、逸信が悲鳴をあげ、更に押しのけられた璃宮が文句を言う。


『なんで態々、上に乗るのさ!』

『だって、ここが一番温かそうだったよ。』


 弟の無体に瑞宮がガウと吠えるが、天祥はどこ吹く風。何の疑問も感じていない弟を兄獅子は前足で追いやる。


『だからって、ここはボクが獲ったんだよ!

 テンちゃんはあっちに行って!』

『ミミ兄は、けっちいねえ。』

『ケチとか、そういう問題じゃないよ!』



 怒られて天祥は隣の逸信を見た。目が合った逸信は耳を横に伏せたが、それでもフシャッと警戒音を上げる。


『嫌だよ。ここは、ボクの場所だよ。』

『いいじゃん。』

『良くないよ。テンちゃん、我が儘言ったら駄目だよ。』


 温和な逸信も今日は譲るつもりがないらしい。その後ろで璃宮もガアと鳴いた。


『そうだよテンちゃん。良い場所は順番だよ。』

『仕方ないねえ。』



 兄獅子二人に断られ、天祥は瑞宮の向こうを覗いた。途端に陸晶と八幡が揃って吠える。


『嫌だよ。』

『ここはオレらが先に獲ったんだからな!』


 眠そうにも、不機嫌にも見える顔で陸晶はきっぱりと断り、八幡も一歩も譲らないと宣言した。

 取り付く島もない様子に、天祥は呆れたようにミャッと短く鳴いた。



『いいもんね。テンちゃんは、暖かいお部屋で寝るよ。』


 ちっとも悔しくないと尻尾をピンと立て、これ見よがしにその場を去る。

 途中で机に座った自分を見上げて、さも困った様にみゃあと鳴いた。


『じいちゃん、兄ちゃんたちは全く持って心が狭いよ。

 譲り合いの精神がないよ。ひどいよね。』

「お前が悪い。」


 譲り合い以前に、他者の場所を当たり前にとろうとするな。



「皆と一緒が良いのはわかるが、ちゃんと自分のダンボールで寝なさい。」

『そうするよ。結局、お布団が一番だしね。』


 何故にお前はそうも自分の欲望に忠実か。

 小生意気な子獅子をシッシッと追いやれば、鼻を突き上げ、堂々と自分のダンボールに戻っていった。


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