人間に知覚できない情報伝達の実例
衝立を設置しても同期が失われない以上、問題は「ゾウムシが特異なのかどうか」ではなく、人間の感覚が前提としていない情報経路が存在するかどうかにある。
人間が知覚できない、あるいは日常的には意識しない情報を用いた伝達は、動植物の世界ではすでに数多く報告されている。
それらは決して仮説段階の話ではなく、観察と実験によって確認され、教科書的知識として整理されているものばかりである。
以下に、本研究の検討過程で参照した代表的な例をまとめる(Fig.4)。
Fig.4 人間に知覚できない、または直接知覚しにくい情報伝達の例
これらの例に共通するのは、情報そのものは確かに存在しているのに、人間にはそれを知覚できないという点である。
たとえば、磁気は常にそこにある。
電場も、植物の電位変化も、観測装置を用いれば測定可能だ。
それでも、人間はそれらを「感じて」行動することはできない。
人間には「見えない」「聞こえない」「匂わない」伝達様式は、理由がわからなければ超能力のように感じてしまう事だろう。
問題は、列挙したすべての情報媒体を想定してもなお、衝立越しの同期を、無理なく説明できるものが見当たらない点にあった。




