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真葵と小犬丸(4)

「本当の化け物ならあの桐の箱の化け物みてぇに見境なく殺しまくるさ」


 小犬丸さんが真剣な表情で話しているけど……


「……一人殺したらどうなるか分からないよ」


 絶対に歯止めが効かなくなる……


「じゃあ殺さなけりゃいい。もしそれをしなきゃならねぇ状況になったら俺がやればいいんだからなぁ。だから真葵ちゃんは何も心配しなくていい」


「そんな事はさせられないよ! 今回の事だって私が決めて、無理を言って小犬丸さん達を巻き込んだのに!」


「ほら……そういうところだ」


「……え?」


「優しいなぁ……その優しさが心配になる」


「小犬丸さん……?」


「俺は暗殺部隊を率いる繋ぐ者として何人もの命を奪ってきた……駿河様の為なら罪の意識なんて持ちやしねぇ集団の中で生きてきたからなぁ……一人や二人殺した奴が増えたところで今さら苦しまねぇ」


「……ウメちゃんは傷つき続けながら生きてきたよ」


 優しい小犬丸さんが傷つかないはずがない……

 今の小犬丸さんは暗殺部隊を率いる繋ぐ者じゃないんだから。


「里の長と暗殺部隊を率いる繋ぐ者の違いだ」


『暗殺部隊を率いる繋ぐ者は日常的に人殺しをしている』そう聞こえるのは考え過ぎかな?


「……もし麦多が暗殺部隊を率いる繋ぐ者になりたいって言ったら……どうするの?」


「……やらせたくはねぇなぁ。ありゃただの人殺しの集団だ」


 ただの人殺しの集団……


「……それは……感じていたよ」


「罪の意識なんてもんは、だんだん薄れていった。罪の重さに苦しんだんは初めだけ……しばらくするとなんとも思わなくなって……麻痺してくるんだ。それが当たり前になり過ぎて……あの頃の俺は人じゃなかった」


「人じゃなかった……?」


「麦多には……させたくねぇなぁ。汚ねぇ世界を見せたくねぇ。いつまでも子供のままでいて欲しい……」


「小犬丸さんは今でも麦多をかわいそうな子だと思っているの?」


「……そうだなぁ。父親は生きてたが……母親と弟は化け物に殺された」


「麦多は……かわいそうな子なんかじゃないよ」


「……真葵ちゃん?」


「麦多はいつも笑顔で……周りの大人を振り回して……でもすごく優しい子……辛い環境でも真っ直ぐ生きてこられたのは小犬丸さんと奥さんが大切に大切に育ててきたからだよ。父親と母親の代わりになったり、孫に甘いおじいさんだったり……ちょっとだけ怖がられるおばあさんだったり……」


「そうだなぁ……そんな風に俺らは生きてきた」


「腫れ物に触れられるみたいにされるの……麦多は嫌なんじゃないかな?」


「……え?」


「甘やかすなとかいう意味じゃないよ。ただ……気を遣われるのが辛い時もあるんじゃないかなって……ほら、私も最近まで両親がいないと思われながら暮らしてきたでしょ? だから……麦多の気持ちが分かるの」


「……俺は……麦多にどう接したらいいんか、いまだに分からねぇんだ」


「今まで通りでいいんだよ……でも……麦多がかわいそうな子じゃないって……家族から愛される『幸せな子』だって……分かって欲しい」


「……幸せにできたんか? 俺の孫に生まれてきたから……里に生まれたから……麦多は苦しみの中に生きる事になったんだ……」


「麦多はそんな風に思っていないよ。小犬丸さんに感情を聞く力があるからとかじゃなくて、麦多を大切に育ててきたおじいさんだから……それは違うって分かるはずだよ……麦多は里の皆から愛されている幸せな子……」


 私にはそう見えた……


 

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