そういう仲ってどういう仲?
「……一真さん!?」
テーブルに突っ伏して寝ていた叔父さんがいきなり怒り始めたから、お兄ちゃんが慌てて私から離れた。
「真葵に近づく男は八つ裂きだ!」
叔父さんは、さっきからそればかり言っているね。
「誤解です! 一真さんっ! あ、今日は真葵を見守る日じゃなかったんだ! お先に失礼しますっ!」
お兄ちゃんが走って個室から出て行った……
上着を忘れているけど帰り道は寒くないかな?
「……真葵に近づく男は……八つ裂き……」
……叔父さんは、またテーブルに突っ伏して寝ちゃった。
この感じなら起きても何も覚えていないだろうね。
「……お兄ちゃんに上着を届けてくるよ」
個室の扉を開けるとお兄ちゃんも外から扉を開けようとしている。
「あ……真葵。俺、上着を忘れて……」
「うん。叔父さんはまた寝たからもっと食べても大丈夫だよ? あの感じなら起きたら全部忘れているだろうし」
個室から出ると扉を閉める。
「……狩野さんも怖いから帰る」
「……え?」
パパが怖い?
「あ……いや……何でもない。また明日な。……俺が八つ裂きにされてなければだけど」
「……え?」
「……何でもない。じゃあな」
「……? うん……」
お兄ちゃんが帰ると個室の扉を開ける。
あれ?
皆がニヤニヤしながら私を見つめている?
パパは涙目になりながらソワソワしているけど、どうしたのかな?
「なんだ。お嬢ちゃんとあいつはそういう仲か! ははは!」
……?
暗殺部隊を率いる繋ぐ者が面白そうに笑っている?
「……? そういう仲?」
「ははは! なんだ! あいつの片想いか! ははは!」
……?
片想い?
「うぅ……真葵ぃ……パパはまだ早いと思うよ……」
パパが涙を流しながら抱きついてきた。
どうしたんだろうね……
何が早いの?
「ふふ。駿河ちゃんなら安心して真葵を任せられるわね」
ママも笑っている?
……?
お兄ちゃんになら安心して私を任せられる?
もしかしてさっき私に味を教えてくれるって言った事かな?
「……味? ぷっ! あはは! こりゃ、あの兄ちゃんも大変だな!」
「若いっていいなぁ……」
「あの小さかったぴよたんが……おじさんも年をとるわけだ……」
「あぁ……おじいちゃんがひ孫を抱ける日は近そうだ」
「小田! 祝いだ祝いだ! 一番高い酒を頼むぞ!」
「……お前は自分で飲み食いした分を自分で払え」
「財布を持ってこなかったんだ。小田が払え」
「二度と来るな……」
皆が騒いでいるけど叔父さんはぐっすり寝ているね。
『お父さん』……か。
私には何の感情もないのに……
『お父さん』って呼びたいのはどうしてなんだろう?
皆が言う通り私には感情があるっていう事なのかな?




