パパとおじいちゃんとの秘密の話? (6)
「繋ぐ者は一般人に紛れ込んで暮らしているんだ。畳屋として暮らしている時の知り合いが店を閉めると聞いて、この地に越してきた。この辺りには覚醒者を保護している施設が多くあるから都合が良かったんだ。でも突然の引っ越しで一真が完全に家出してしまって……まさか施設にスカウトされるなんて思いもしなかったよ」
おじいちゃんがその頃を思い出しながら話している。
「そこでママに会ったんだね」
「一真が見守る者になったのは知っていたが……まさか葵様を連れて逃げてくるとは……」
「叔父さんはおじいちゃんを頼ってここに来たの?」
「真葵ちゃんは行った事があるから知っているよね。葵様がいる施設はここから歩いて十分くらいの場所にある」
「……うん」
「嬉しかった。頼ってもらえるなんて……一緒に住もうと言ったんだが断られてね。巻き込みたくなかったんだろう。当時、一真はおじいちゃんが繋ぐ者だとは知らなかったんだ。まぁ、い草で作った人形を動かしたりしていたから『不思議な力がある』くらいには思っていただろうけどね」
「……そうだったんだね」
「それで真葵ちゃんが最近まで暮らしていたアパートを紹介したんだ。目の前に一軒家があっただろう?」
「うん。住んでいる人を見た事がないけど……」
「あのアパートは見守りやすい立地でね。何かあれば一軒家にいる見守る者がすぐに助けに行けたんだよ」
「じゃあ、おじさんとお兄ちゃんは私を見守っていた時、あの家に住んでいたの?」
「そうだよ。日替わりでね」
「全然知らなかった」
「真葵ちゃんは誰の心も聞かなかったの?」
「パパと約束したから」
「そうか。真葵ちゃんは偉いね」
私が……偉い?
普通の人間を上手く演じられているから『偉い』の?
「おじいちゃん……?」
「何かな?」
「私……」
「……うん?」
「普通の人間になれる?」
「……もちろんだよ。でも、真葵ちゃんは今だって普通の人間だよ?」
「……作られた『普通の人間』なのに?」
「真葵ちゃんは優しくてかわいい孫だよ。これからは苦しみを独りで背負わなくていいんだ。おじいちゃんにも一緒に背負わせて欲しい……」
「……おじいちゃん」
おじいちゃんが抱きしめてくれた。
温かくて……硬い。
鍛えているんだね。
でも……
おじいちゃんの着ているセーターは柔らかい。
これが『気持ちいい』?
じゃあ『痛い』とか『苦しい』も分かるようになったのかな?
少しずつ普通の人間になりつつある?
でも……
四歳で覚醒した時に殺意以外の感情を失ったんだよね?
その感情が戻り始めたんだとしたら……
駿河の感情を抑える事が難しくなっている?
そうだとしたら……
駿河が暴走する日が近づいているっていう事なんじゃ……
それとも駿河の殺意を完全に抑え込めた……とか?
違うね……
駿河の『殺す殺す』の声は頭の中にずっと聞こえ続けている……




