パパとおじいちゃんとの秘密の話? (2)
「……あ」
私の手を触っているのは日本人形……?
腰まである真っ黒い髪に、赤い振り袖を着ている百センチくらいの人形。
この子は……
「覚えているかな? あのアンティークのお店にいた日本人形だよ?」
おじいちゃんが私の髪を撫でながら話しているけど……
「……うん。覚えているよ……どうしても欲しかった人形……」
「これは、おじいちゃんが作った人形なんだよ」
「……え?」
「あの店主を見張らせる為に商品に紛れ込ませていたんだ」
「……じゃあマッチを擦っていたっていうのは?」
「店主が真葵ちゃんを拐おうとしたんだよ」
「この人形を使って?」
「あぁ……それは違うよ。この人形が真葵ちゃんと遊ぼうとしたのは、おじいちゃんの感情かな。店主はこの人形が動くとは思っていなかったんだ」
「……そうなの?」
「あの店主は女の子が喜びそうな人形とか小物を飾って真葵ちゃんを店に誘き寄せようとしていたんだ」
「この人形はおじいちゃんの意思で動いているの?」
「そうだよ。あの頃もおじいちゃんは暗殺部隊を率いていた。でも今と同じで正規の施設を制圧するのが役割でね」
「それって大丈夫なの? 違う管轄なんじゃ……」
「かわいい孫の真葵ちゃんを守るのに罰なんか怖くないさ」
「……おじいちゃん」
「他の二つの暗殺部隊を率いる繋ぐ者には真葵ちゃんが孫だと話してあるんだ。許可は得ていたんだよ。真葵ちゃんに関わる事だけは例外にしてもらったんだ」
「『孫だから』……だけじゃないよね?」
「……真葵ちゃんの瞳を見た事がある繋ぐ者なら……完全体の駿河様だとすぐに分かるからね」
「……え?」
「暗殺部隊を率いる繋ぐ者は知っていたんだよ。真葵ちゃんが特別な存在だとね。でもあの時、狩野ちゃんは繋ぐ者ではなかったから……それを知らなかったか……」
「……それでも私を閉じ込めなかったのはどうして?」
「必要がなかったからだよ」
「……? 閉じ込められる人とそうじゃない人の違いは何?」
「真葵ちゃんはパパとの約束を守って普通の女の子として暮らしていたんだね。偉い偉い」
「え?」
……ごまかした?
その違いは教えたらダメな事なのかな?
「誰の心も聞かなかったんだね」
「……普通の人間として暮らしていたから」
「約束を守るのは大変なのに、本当に偉いよ」
「……偉い?」
「ねぇ、真葵ちゃん」
「……?」
「大丈夫だよ。ほら、もう落ち着いた」
「……あ」
確かに……
「おじいちゃんが小さくてかわいい人形を作るからね。その人形をご褒美にしよう」
「ご褒美?」
「ずっと頑張ってきた真葵ちゃんへのご褒美だよ」
「……私をその人形に見張らせるの?」
「え? あはは! そんな必用はないよ。おじいちゃんはずっと真葵ちゃんと一緒にいるんだから」
「……じゃあ……どうして」
「おじいちゃんは真葵ちゃんを孫だと知っていたのにずっと名乗れなかった……やっと一緒に暮らせるようになったから、今までできなかった事をしてあげたいんだよ」
今までできなかった事を?




